『写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ』『古本探究』『ヤバい社会学―一日だけのギャング・リーダー』

本日の読みたい本・おすすめ版(2009年1月あたり)。

写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ

写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ

★『写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ』(安友志乃/雷鳥社/1,800円)【→amazon
写真技術が発明され、アメリカに伝わり産業化して行く初期の話を、古い写真とみずみずしいイラストとともにめぐる写真文化史的一冊。
古本探究

古本探究

★『古本探究』(小田光雄/論創社/2,500円)【→amazon
古本をめぐる冒険。これまで知られざる数々の物語を“古本"に焦点をあてることで白日のもとに照らしだす異色の近代=出版史・文学史・文化誌。
ヤバい社会学

ヤバい社会学

★『ヤバい社会学―一日だけのギャング・リーダー』(ヴェンカテッシュ,スディール/東洋経済新報社/2,200円)【→amazon
シカゴの麻薬売人ギャングの懐に飛び込んだ社会学者ヴェンカテッシュの話は、ベストセラー『ヤバい経済学』で取り上げられて世界中の注目を集めた。本書は、彼がギャングとつるんだ冒険と災難の日々の全貌を明らかにした地下経済ノンフィクションだ。アメリカ最悪のゲットーの一つ、シカゴのロバート・テイラー・ホームズで、ヴェンカテッシュはギャング・リーダー、ヤクの売人、ヤク中、ホームレス、売春婦、ポン引き、活動家、警官、自治会長、役人たちと知り合う。そこには、ギャングと住民のあやしく複雑な関係と貧しいなかで必死に生きる人々の姿があった。ゲットーに生まれ、大学を出て就職しながらギャング・リーダーとしてゲットーに戻って来たJTと、中流家庭出身で、怖いもの知らずの社会学者ヴェンカテッシュの間の不思議な友情を描いた話題の書。

読みたい本・次点。
『福沢諭吉と中江兆民―「近代化」と「民主化」の思想』(吉田傑俊/大月書店/2,800円)
  国家主体の近代化の推進か、民衆主体の民主国家の構築か。福沢と兆民の思想の綿密な対比を通じて、現代における「文明」「アジア」「社会」像を追求する。
『島津久光=幕末政治の焦点』(町田明広/講談社/1,600円)
  時は、幕末がいまだ「政治の季節」であった文久期。幕府の権威が根底から揺らぎ、過激志士らの暴発に朝廷がおびえる中、その動向をもっとも注目された男こそ、島津久光であった。久光の指揮の下、小松帯刀、大久保一蔵、中山中左衛門堀次郎ら、実力ある藩士たちが、京都の中央政局を舞台にして、幕末の行方を決定づける政争をくりひろげてゆく。史料を丹念に読みこみ、幕末政治史にあらたな光をあてる意欲作。
『観光人類学の挑戦―「新しい地球」の生き方』(山下晋司/講談社/1,500円)
  グローバル化が進行する中で、国境を越えて移動する人びとは世界全体で年間十億人に達しようとしている。東京の下町で、熱帯雨林の島で、中国の世界遺産で、それぞれに繰り広げられる文化景観はすべてリゾーム状につながり、地球はもはや境界のない大きな空間になっているのだ。本書では、ボーダレス時代の観光/移住のありようを描き出し、「一つの世界にともに生きる」とはどういうことか、人類学の新たな試みとして論じていく。
『駅弁掛け紙ものがたり―古今東西 日本を味わう旅』(上杉剛嗣/(立川)けやき出版/1,600円)
  ながめて、読んで、知る。何度でも美味しい、「中身」を見せない駅弁の本。明治から平成までの、日本全国はもとより、戦前の樺太満州・台湾・朝鮮半島の「駅弁掛け紙」177枚を一挙掲載。
『知られざる白川郷―床下の焔硝が村をつくった』(馬路泰藏編/(名古屋)風媒社/800円)
  火薬の原料である焔硝(硝石)生産を中心に白川郷の歴史をわかりやすくまとめた本。
『ルネサンス彫刻家建築家列伝(新装版)』(ヴァザーリ,ジョルジョ/白水社/7,800円)
  十六世紀イタリアにおいてきわめて大きな影響力をもち、自らも建築家・彫刻家であったヴァザーリが、ルネサンスを代表する芸術家たちの生涯を描いた「列伝」。関連図版多数収録。
『建築・権力・記憶―ナチズムとその周辺』(ネルディンガー,ヴィンフリート/鹿島出版会/3,800円)
  建築と国家(政治的建築―厄介な概念についての考察;この支配者の軸線を貫いて明瞭な線を引く―帝国と連邦共和国の間のシンメトリー、軸線、記念碑性をめぐる議論;芸術と階級闘争の間で―一九二〇年代の機能主義の位置づけ);建築と権力(「美装の暴政」―スターリン時代の建築に関する短い見解;リットリオ宮と総統官邸―ファシズムとナチズムの権力中枢の比較;ジュゼッペ・テラーニと建築家の責任);ナチズムの建築(一九三三‐三五年の建築設計競技に見られる前衛の試みと葛藤;ナチズム下の建設活動―その全体像へのまなざし;ナチズムの建築様式―「インターナショナルな新古典主義」と地域主義の間で);ナチズムの遺産と取り組む(ナチズムの過去の痕跡との取り組み―考えないようにしてきたことを示すもの;節約の炎に浮かぶ記憶―ミュンヘンにおけるナチズム時代の建築との取り組み;テロのトポグラフィー―ミュンヘンの場合)
『西洋博物学者列伝―アリストテレスからダーウィンまで』(ハクスリー,ロバート編/悠書館/9,500円)
  身体全体で自然を感じ、手づかみで“知"を蓄えていった偉大な博物学者たちの営みを、流麗な文章と、息を呑むほどに美しい博物画とともに紹介。
『図解 「世界の財宝」ミステリー―徳川埋蔵金からソロモン王の聖櫃まで』(世界博学倶楽部/PHP研究所/952円)
  財宝に関する写真を多用しながら、トレジャー・ハンターたちの驚くべき逸話をはじめ、まだ手にできていない財宝の行方について紹介。
『祈りの彫刻リーメンシュナイダーを歩く』(福田緑/丸善プラネット;丸善〔発売〕/4,600円)
  本邦初、リーメンシュナイダーの写真集。ティルマン・リーメンシュナイダーは中世最後の彫刻家。ドイツ、ヴュルツブルクに工房を構え、数多くの祈りの彫刻を残す。彼の作品は500年の時を超え、中世に息づいた光と祈りと静寂を現代に送り届ける。
『越と出雲の夜明け―日本海沿岸地域の創世史』(宝賀寿男/法令出版/2,000円)
  誰も論究しなかった越と出雲の隠された原像。コシとイズモとタンバの国造りは誰がしたのか?中央との交渉のなかで現地に根づいた英雄と子孫たち。日本海沿岸地域の創世史を合理的視点で探る力作。
『クラシック音楽 未来のための演奏論』(内藤彰/毎日新聞社/2,300円)
  フルトヴェングラーも、カラヤンも、間違っていた!?『第九』も、オペラ『蝶々夫人』も、原曲どおりに演奏されていない?音楽の考古学的研究の成果と、独自のオーケストラ演奏の実践によって、原曲を歪めてきたこれまでの演奏習慣をきびしく告発し、名曲本来の姿を明らかにする。異能の指揮者・内藤彰があえて音楽創造の場から問う、論争必至の画期的な演奏論。
『「北欧神話」がわかる―オーディン、フェンリルからカレワラまで』(森瀬繚;静川龍宗/ソフトバンククリエイティブ/648円)
  ノルウェースウェーデンなどスカンディナヴィア半島の国々とアイスランドデンマーク、そしてドイツに広がっていた古代ゲルマン人に伝わる、世界の創造から滅亡までを謳う神々と英雄の物語、北欧神話を紹介する。失われつつあるフィンランドの神話と伝承を蒐集したエリアス・リョンロット博士による民族叙事詩『カレワラ』についても併せて解説。実力派絵師による美麗イラスト60点を掲載。
『天皇陛下の全仕事』(山本雅人/講談社/900円)
  天皇陛下はどんな日常生活を送っているのか?国事行為、晩餐会から宮中祭祀、稲作まで。知っているようで知らない、天皇陛下の毎日の仕事を、元宮内記者がやさしく解説。
『森林の崩壊―国土をめぐる負の連鎖』(白井裕子/新潮社/680円)
  日本では森林という莫大な資源が増え続けている。多額の公共事業や補助事業が行われながら、建築材を採るために植林した人工林は切られず、木材自給率は二割である。林業は旧態依然とし、死傷事故も多発している。国産材と共にあった伝統木造は建築基準法で建築困難になった。我が国土で一体何が起こっているのか。リアルな実態を現場の「生の声」で伝える。森と木をめぐる社会の仕組みを根本から問い直す一冊。
『天誅と新選組―幕末バトル・ロワイヤル』(野口武彦/新潮社/720円)
  尊王派と佐幕派の対立は、ついに流血の惨を招くに至った―。殺される側は身分も立場も理由もいろいろだが、「文久」の三年間、政治都市京都を中心に「天誅」の名による殺戮が荒れ狂う。過激派浪士と新選組が死力を振って斬り合う剣戟ロマン。それは「鉄砲」の時代を迎える直前、道場剣術から実戦に復活した「刀」の最後の花道だった。幕府はテロの恐怖にじわじわと消耗してゆく。急転直下のバトル・ロワイヤル
『地下鉄のミュージシャン―ニューヨークにおける音楽と政治』(タネンバウム,スージー・J./朝日新聞出版/2,900円)
  ミュージシャンと聴衆、規制する行政が織りなすニューヨーク地下鉄の音楽シーン。
『もんじゃの社会史―東京・月島の近・現代の変容』(武田尚子/青弓社/2,000円)
  月島を代表する文化=もんじゃを題材にして、下町とウォーターフロントの両面をもつ月島の発展の歴史を描き、いまの商店街の経営者たちのネットワークや働く女性たちのたくましさ、伝統に固執せずにしなやかに「時代」と向き合い進化する下町のローカル文化を照らす。