アシモフ『われはロボット』で「青写真」の件を再確認する
これは以下の日記の続きです。
→「青写真」が悲惨すぎる件について
いろいろ腑に落ちないところがあるので、元テキスト(ただし日本語)を探して前後の文脈含みで目を通してみる。
素材は、ハヤカワ文庫SF『われはロボット〔決定版〕』アイザック・アシモフ著/小尾芙佐訳、2004年9月15日2刷。
問題になっているテキストは、「野うさぎを追って」。
ちょっと長めに、その前後を含めて引用してみます。p149-150。
「けどあのロボットには仕様書はつけられないぞ、グレッグ。こういう報告つきじゃあ、USロボット社もDV型を市場に出すわけにはいくまいからね」
「いかにも。構造上のエラーを突きとめてそれを修正しなくちゃならない----それがあと十日しかないときている」パウエルは頭をかいた。「厄介なのは……まあ、きみの目で青写真を見てもらったほうがいいな」
青写真はカーペットのように床に広げられ、ドノヴァンはその上に腹ばいになって、パウエルのひょいひょいと動く鉛筆の先を追った。
登場人物の二人、実物の「青写真」見ているやん。引用を続けます。
パウエルは言った。「ここが、きみのなすべきところだよ、マイク。きみはボディが専門だから、ぼくのしたことをチェックしてもらいたい。ぼくはこれまでに彼の自律性とはつながっていないすべての回路を切りはなしてみた。たとえば、ここのところは機械的動作に関連する大動脈だ。すべての平常系回路と緊急用を切りはなし----」彼は顔を上げた。「きみはどう思う?」
ドノヴァンの口に苦いものがこみあげた。「この仕事はそれほど単純じゃないんだよ、グレッグ。自律性をつかさどる回路は、それだけ分離して調べられるような電気回路じゃないんだ。ロボットがひとりだちすると、身体機能の緊張度はほとんどあらゆる面において増大する。まったく影響をこうむらないという回路はないんだ。しなければならないのは、ロボットを狂わせるある特別の条件----きわめて特殊な条件----を突きとめ、そこで回路をひとつずつ取りのぞいていくことだ」
パウエルは立ちあがってほこりを払った。「ふん。わかったよ。青写真をもっていって焼いてくれ」
ドノヴァンは言った。「活動が活発化するとき、一ヵ所でも欠陥部分があれば、なにが起きても不思議はない。絶縁体がだめになる、コンデンサが洩れる、接続がショートする、コイルが過熱する。ロボットの全身をむやみやたらに調べてみたって、悪い箇所が見つかるはずはない。デイブを分解して、やつのボディのメカニズムのあらゆる箇所をひとつずつ点検し、そのたびに組み立てなおし、それから実地にテストして----」
「わかった、わかった。ぼくもビジプレートで見張ってりゃいいんだろう」
二人は絶望的に顔を見あわせ、やがてパウエルが用心深く言った。「ひとつサブロボットを面接してみたらどうかね」
これで引用を終わります。
登場人物の名前はややこしいんですが、グレゴリイ・パウエルとマイク・ドノヴァンの二人が人間で、デイブというのがロボット(DV型)です。
ビジプレートって何のことかよく分からない。
あと、こんな重大な指摘も。
→http://twitter.com/suiyoubi/status/2390492444631040
角川文庫の『アイ・ロボット(小田麻紀訳)』だと『ふむ。わかった。青写真は持っていって、うっちゃっておいてくれ(p123)』なので、(投げやりな感じに)設計書を焼き捨てろって意味かも。
→http://twitter.com/suiyoubi/status/2394871453188096
小田麻紀訳を読むと、パウエルは床いっぱいに青写真を広げてロボットの回路の切るように言うんだけど、ドノヴァンは「そういう問題じゃないんじゃない?」的に返して、『ふむ。わかった。青写真は持っていって、うっちゃっておいてくれ』って流れ。
「青焼き作る」とかいう意味じゃなくて、文字通り「焼いてくれ(燃やしてくれ)」という意味? 「青写真をもっていって焼いてくれ」=「青写真を作れ」だと少し日本語変かも。
しかしもう、英語テキスト調べる気力がない。別に日本アマゾンで600円ぐらいで買えるんだけど…。
(追記)
原文を調べてくれたかたがいました。(画像あり)
→「われはロボット」と「青写真」
"Take away the blueprints and burn them."だから、焼き捨てるの意味が正解かも。
ビジプレートに対応するのは、"porthole"かな。
素晴らしい。
「英辞郎」によると、「porthole」は「のぞき窓(船の舷に付けられた、金属の縁で囲まれた丸い小さな窓)」? アシモフ、初出からテキスト直している可能性あり?