『近代アジア精神史の試み』ほか

今日の読みたい本・おすすめ版。
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近代アジア精神史の試み (岩波現代文庫)

近代アジア精神史の試み (岩波現代文庫)

★『近代アジア精神史の試み』(松本健一/岩波書店/1050円)【→amazon
アヘン戦争の衝撃により、アジアでは西洋への抵抗がほぼ共時的に起こった。本書は十九世紀中葉のアジア各国の「抵抗」の諸相を幕末維新期の日本との比較において描き、それ以降今日に到る歩みを日本との関係で跡づけてそれぞれの特性を見極め、アジアがかつての「停滞」から「成長」へと変貌をとげた意味について考える。
 
幻景の明治 (岩波現代文庫)

幻景の明治 (岩波現代文庫)

★『幻景の明治』(前田愛/岩波書店/1050円)【→amazon
幕末維新から日露戦争に至る時期の社会事象を例に、明治の特質を発掘、再構成してその原風景たる「幻景の明治」を見定める。「御一新」のエネルギーの行方、高橋お伝が毒婦とされた理由、日露戦争時期の猟奇的殺人事件の容疑者や日比谷焼打ち事件の仕掛人などについて考察し、文学研究と歴史研究の関わりを論ずる。
 ★『スルタンガリエフの夢−イスラム世界とロシア革命−』(山内昌之/岩波書店/1575円)【→amazon
ロシア革命がはらむ西欧中心主義の限界をいち早く見抜いていたタタール人革命家スルタンガリエフ(一八九二‐一九四〇)。彼は旧ロシア帝国ムスリム地域の脱植民地化を図ったが非業の死に斃れた。本書はイスラム世界の風土と歴史を背景にその「ムスリム民族共産主義」を詳説し、激動の現代中央アジアを理解するための礎石を提示する。
 ★『一九六〇年代の肖像』(後藤正治/岩波書店/1050円)【→amazon
情熱だけはあった戦後日本の若き時代。人々は何を夢み、何に希望を重ねたのか。大学紛争当時に青春を送ったノンフィクション作家が、懐古でも追憶でもなく、その後の四十年の歳月を踏まえ、一九六〇年代のヒロイン・ヒーローの姿に迫る。藤圭子吉本隆明ファイティング原田ビートルズ、競走馬シンザンをめぐる人々など。
 ★『田沼意次−「商業革命」と江戸城政治家−』(深谷克己/山川出版社/840円)【→amazon
意次が、最晩年にみずからの感懐を書き残し、また言い残したわずかな史料に光をあてて、人物像をとらえなおすとともに、重商主義的と評価されている田沼時代の多様な経済政策を、「商業革命の時代」という枠組みで解説する。