アニメ『輪るピングドラム』の幾原邦彦監督が読めなかった本(SF)を特定してみる

lovelovedog2011-08-09

 今日の画像は、以下のところから転載しました。
読めない(ikuniweb)
 
 以下、全然アニメと関係ありません。
 あと、結論は多分『ソングマスター』(オースン・スコット・カード)です
 以上のことを頭に入れたうえで、以下のテキストをお読みください。
 
 以下のところから(追記されてます)
ピングドラム小ネタ 幾原監督の過去ブログより - さめたパスタとぬるいコーラ

以前ピングドラムが発表される前に幾原監督のブログを一気読みした事があって、その際いくつか気になる記事をメモしておいたんですが、先ほどそれらを読み返してみたらピングドラムを観る上で手がかりになりそうな部分がありそうなものがあったのでご紹介。文字強調は全部引用者によるものなのでその点ご注意下さいませ〜。

ピングドラムの手がかりになりそうな部分」とはややズレますが、ひとつめの日記にある監督の読んでいるSF小説というのはリンク先の画像から頑張って調べてみたところ、エドモンド・ハミルトンという作家の『スターキング』という小説らしい事がわかりました。画像が潰れてしまっていて良く見えないですが、頑張って読み取れた「ハミルトン」、「スペースオペラ」、「アーン」という単語でググってみたら見事ヒットしました。なんかうれしい・・・w 実は次の日の日記(http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=485)にも別のSF小説の写真が載ってますが、流石にこちらは字が潰れすぎてて調べるのを断念。
 
あ〜、でも作品作りの真っ最中に監督が触れた作品だと考えるとあながち無関係な事でもないのかな?

 エドモンド・ハミルトンの小説は『スター・キング』ですけどね(「・」あり)。まぁどうでもいい。
 
 以下のところへ。
読めない(ikuniweb)2009年5月12日

暑い。5月だというのに夏のようだ。
 
やっぱり昔読んだ本を、また再確認中。そして例によって「読めない」…。
本の内容や言わんとしていることは、親切丁寧に解説してくれているWebページは既にある。
なんて便利な時代。
でも。
解説をしてほしいわけじゃないんだ。
「感じたいんだ」よ…。
 
あー。
自分の鈍くなった感性が憎い。

 ということで、晒してある文庫本から、それがどの本であるかを特定する。
多分ハヤカワ文庫ロゴマークから。SFもミステリーもFTも同じロゴ使っているのでどれか分からない)
・裏表紙に解説がある(初期のハヤカワ文庫SF、というか、ハヤカワSF文庫では、解説は本の総トビラ)
ISBNが表記されてない(ここ重要!)
・かろうじて読める文字は…「キャンベル新人賞」(?)
・表紙イラストのごく一部が、折り返し部分で見れる
 
 こんだけ手がかりがあれば十分だぜ!
 ここでいきなりすごい人(風野春樹氏)登場。
http://twitter.com/#!/hkazano/status/96578403033038850

@kuratan おそらく『ソングマスター』。http://kicchan.s19.xrea.com/img/501-600.htm#0550

http://kicchan.s19.xrea.com/img/501-600.htm#0550

00550/ オースン・スコット・カード ソングマスター
【初版】 84/03/31

【タイトル】ソングマスター / Songmaster
【著者】オースン・スコット・カード / Orson Scott Card
【訳者】冬川亘 / Wataru Fuyukawa
【初出】1980年
    ・本作品は以下の中篇がもととなっている
     Mikal's Songbirdアナログ誌1978年5月号
     Songhouseアナログ誌1979年9月号
【内容】人々の琴線に触れ、凍りついた涙すら溶か
    し、心を奥底から揺さぶる“魂の歌い手”
    ソングバードを求めて、年若い恐怖皇帝ミ
    カルはソングハウスを訪れた。だが、それ
    から幾星霜が過ぎ去ったことか! 皇帝の
    ためのソングバードが見つかったというし
    らせが届いた時には、ミカルは老境に達し
    てしまっていた……これほど待たされたソ
    ングバード、全銀河をその歌声で魅了する
    と言われるアンセットとは何者なのか?
    いかなる運命が、ミカルとアンセットを待
    ちかまえているのか? キャンベル新人賞
    作家が、流麗な歌の調べにのせて、愛と友
    情と夢を高らかに謳いあげる感動の名作!
    〔初刷カバー裏解説より〕
【ISBN】4-15-010550-2

 確かに、よく見ると幾原邦彦監督の「本」には「アンセット」という文字が読めなくもない。
 
 すごい人が使った、すごいサイト(超力作)。
ハヤカワ文庫SF総覧
 最後に、ISBN入ってない本と確認できるのは、これかな? ちょっと自信ない。
http://kicchan.s19.xrea.com/img/501-600.htm#0570

00570/ テリー・カー 聖堂都市サーク
【初版】 84/08/31

【タイトル】聖堂都市サーク / Cirque
【著者】テリー・カー / Terry Carr
【訳者】宮脇孝雄 / Takao Miyawaki
【初出】1977年
【内容】その朝、アルデバランからひとりの異星人
    がサークを訪れた。華やかな銀河文明から
    とりのこされた地球では、幾多の壮麗な寺
    院が立ち並ぶ平和な都市サークだけが、に
    ぎわいを見せている。異星人は、街の中心
    にある直径10キロの底なしの〈淵〉から現
    われるすばらしいものを見にきた、と謎め
    いた言葉を口にした。だが、住民たちがテ
    レパシー放送で見たものは、底知れぬ暗黒
    から躍り出た、伝説の〈獣〉の巨大で醜悪
    な姿だった! 狂暴な〈獣〉の脅威に、住
    民は怯え、逃げまどうばかりだったが……
    編集者、アンソロジストとしても令名を馳
    せる才人が、満を持してはなつ傑作長篇!
    〔初刷カバー裏解説より〕

 少なくとも、1984年8月までは、ISBNのない本出してた(『ソングマスター』のISBNは多分重版時に追加したんじゃないかと思う)。
 あと、表紙カバー。
ソングマスター ハヤカワ - Google 検索(画像)
 なんとなく似ている(デザイン変更で新カバーに変わってなければ)。
 うーん…まぁ確かに『スター・キング』とか『ソングマスター』は「読めない」…かなぁ? そんなことないと思うが…。「読めない」というのは、文脈的には、その本を貶しているわけではなく、自分の感性の変化について語っているものなので全然問題ないと思う。
 『ソングマスター』刊行時(1984年3月)は、幾原邦彦監督(1964年12月21日 - )は19歳。『輪るピングドラム』の変身、というよりスタイリッシュ脱衣の曲「rock over japan」は1987年6月21日にリリース…1980年代引きずってる。
 ちなみに1984年3月は、映画『さよならジュピター』と『風の谷のナウシカ』が公開された年・月でもあります。若い人は「SFが負けた年」と思っておくべき?
 
 あと、「キャンベル新人賞」について。SF業界には「キャンベル新人賞」と「キャンベル記念賞」の2つがあるからややこしい。
 とりあえずこれで検索してみる? 関係作品いろいろ見つかる。
キャンベル site:kicchan.s19.xrea.com - Google 検索
 1984年以前・1980年代の「キャンベル新人賞」関係を拾う。
 たいていの翻訳SF・ミステリー作品は、ここを探せば何とかなる。
翻訳作品集成(Japanese Translation List)
ジョン・W・キャンベル記念賞(John W. Campbell Memorial Awards)

ハリー・ハリスンとレオン・ストーヴァーが創設。スポンサーはイリノイ核研究所。
SF作家と評論家による国際的会議で決定され、国籍を問わずに、前年度に初めて発表された長編に与えられる。
トロフィーは、ブロンズ製のメビウスの輪
もともとは、ネビュラ賞への批判が動機だったらしい。国籍を問わずとは言え、非英語圏ロベール・メルルだけというのも哀しい。受賞作品には個人的に好きなものが多い。派手さはないが、きらりと光る作品である。

ジョン・W・キャンベル新人賞(John W. Campbell Awards)

ヒューゴー賞といっしょに発表されるファンが選ぶ最優秀新人賞。

 どちらも1973年から。歴史長いよ
「翻訳作品集成(Japanese Translation List)」では更新止まってる(?)けど、21世紀はこんな感じ。
ジョン・W・キャンベル新人賞 - Wikipedia

2001年 - クリスティン・スミス
2002年 - ジョー・ウォルトン
2003年 - ウェン・スペンサー
2004年 - ジェイ・レイク
2005年 - エリザベス・ベア
2006年 - ジョン・スコルジー
2007年 - ナオミ・ノヴィク
2008年 - メアリー・ロビネット・コワル
2009年 - en:David Anthony Durham

ジョン・W・キャンベル記念賞 - Wikipedia

2001年 『Genesisポール・アンダースン
2002年 『Terraforming Earth』 ジャック・ウィリアムスン
    『The Chronoliths』 ロバート・チャールズ・ウィルスン
2003年 『プロバビリティ・スペース』 ナンシー・クレス
2004年 『Omega』 ジャック・マクデヴィット
2005年 『Market Forces』 リチャード・モーガン
2006年 『Mindscan』 ロバート・J・ソウヤー
2007年 『Titan』 ベン・ボーヴァ
2008年 『In War Times』 キャスリン・アン・グーナン
2009年 『Little Brotherコリイ・ドクトロウ
    『Song of Time』 イアン・R・マクラウド
2010年 『ねじまき少女』The Windup Girl パオロ・バチガルピ

 なかなか、このくらいの賞取ったくらいでは、最近は翻訳されないですな…。そんなにマニアほどSF好きじゃない人も知ってるのは『ねじまき少女』かな? ジョー・ウォルトンファージング三部作?
 
 1984年以前の「ジョン・W・キャンベル新人賞」受賞者で、1984年9月以前にハヤカワ文庫SFから本が出ている人は、オースン・ スコット・カー以外には以下の人の本しか確認できなかった。
 ジェリー・パーネル『デイヴィッド王の宇宙船』(1984年5月)
 C・J・チェリイ『ケスリス』(1982年7月)『ションジル』(1982年8月)『クタス』(1982年9月)
 
 ソムトウ・スチャリトクル『スターシップと俳句』(1984年10月)は、惜しいな。
 ということで、『ソングマスター』、機会があったら読んでみてください。他の作品はアマゾンではマーケットプレイス(中古品)でしか入手できないみたい。
 

 ぼくの、『輪るピングドラム』に関する感想は、5話まで見た限りでは、日曜朝に女子向けにやってるといい感じなアニメかな、と。ていうか、このくらい変なの、日曜朝に普通にやってるんじゃないのかな。