菅元総理「歴史が自分を正しく評価してくれるだろう」という主旨のことを言ったって、どこの並行世界ですか(藤田正美)

 え? と思ったんで。
Business Media 誠:藤田正美の時事日想:なぜ原子力災害対策本部の議事録がないのか(1/2)
Business Media 誠:藤田正美の時事日想:なぜ原子力災害対策本部の議事録がないのか(2/2)

(前略)
 菅首相は「歴史が自分を正しく評価してくれるだろう」という主旨のことを言ったが、議事録がないという事実で評価は大きく下がると思う。歴史家は客観的資料がないところで判断しなければならないからである。

 そのような「主旨」のことを言っているテキストはうまくみつからなかったので、ご存じのかたは教えてください。
 一番近そうなのをいくつか。
菅内閣総理大臣記者会見:平成23年8月26日

 国民の皆さんに私からご報告をすることがあります。本日公債特例法、そして再生可能エネルギー促進法が与野党の皆さんの努力によって成立をいたしました。これで第2次補正予算を加え、私が特に重要視していた3つの重要案件が全て成立したことになります。これにより、以前から申し上げておりましたように、本日をもって民主党の代表を辞任し、そして新代表が選出をされた後に総理大臣の職を辞することといたします。
(中略)
 私の在任期間中の活動を歴史がどう評価するかは後世の人々の判断に委ねたいと思います。私にあるのは目の前の課題を与えられた条件の下でどれだけ前に進められるか。そういう思いだけでした。伝え方が不十分で、私の考えが国民の皆さまに上手く伝えられず、また、ねじれ国会の制約の中で円滑に物事を進められなかった点は、大変申し訳なく思っています。しかしそれでもなお私は、国民の間で賛否両論ある困難な課題に敢えて取り組みました。それは団塊世代の一員として、将来世代に私たちが先送りした問題の後始末をやらせることにしてはならないという強い思いに突き動かされたからに他なりません。持続可能でない財政や、社会保障制度、若者が参入できる農業改革、大震災後のエネルギー需給の在り方などの問題については、若い世代にバトンタッチする前に適切な政策を進めなければ私たち世代の責任を果たしたことにはなりません。次に重責を担うであろう方々にもこうした思いだけはきちんと共有してもらいたいと、このことを切に願っているところであります。以上申し上げ私の退任の挨拶とさせていただきます。

「正しく評価してくれるだろう」ではなく「後世の人々の判断に委ねたい」ですね。前者だと「自分は正しかったと評価されるだろう」的ニュアンスを感じるんですが、後者だと微妙に違う。
asahi.com(朝日新聞社):菅首相、官邸去る 「震災、しっかり対応できた」 - 政治

 野田新内閣の発足を前に、菅直人首相が2日午前、約1年3カ月過ごした首相官邸を後にした。在職日数は452日。菅氏は「一番厳しい3月11日の大震災と原発事故に対し、本当にみなさん、しっかりした対応ができた」とあいさつし、職員をねぎらった。
 菅氏は午前8時40分に官邸入りし、同9時には執務室を後にした。玄関ホールで待ち構える職員や警護警察官(SP)と次々に握手。「なるべく官邸には足しげくこないようにする。本当にお世話になりました」と笑顔で語り、女性スタッフ2人から花束を受け取った。枝野幸男官房長官仙谷由人官房副長官らも見送った。約40分後、野田佳彦新首相がやや緊張した面持ちで官邸に入った。

時事ドットコム:菅氏「震災しっかり対応できた」=在任452日で終止符

 1年3カ月にわたり政権を担った菅直人首相が2日午前、枝野幸男官房長官首相官邸スタッフらに見送られて官邸を後にした。花束を受け取った菅氏は「東日本大震災発生後は、皆さんのおかげでしっかり対応できた。ありがとうございました」と笑顔であいさつした。
 国会で野田佳彦新首相が指名された後も組閣が延び、菅内閣が「職務執行内閣」として継続。在任日数は452日間だった。 (2011/09/02-10:53)

 …これも「自分は正しかった」という自己主張ではなく「皆さんのおかげでしっかり対応できた」と、他人に対する感謝の表明朝日新聞時事通信も「みなさん(皆さん)」が見出しから抜けているひどい見出し。それも、「大震災と原発事故」「東日本大震災発生後」と、伝聞情報が少し歪んでる
asahi.com(朝日新聞社):菅首相「評価は歴史の中で」 浜岡原発停止要請で - 政治

 菅直人首相は13日の参院予算委員会答弁で、浜岡原発の全原子炉停止を中部電力に要請したことについて「私の政治的な判断、(海江田万里経済産業大臣を含めた政治判断で、評価は歴史の中で判断してほしい。国民の安全と安心のための決断だ」と述べた。
 首相は、白紙からの見直しを表明している政府のエネルギー基本計画については「事故を教訓に最も自然エネルギー、省エネが進んだ国として、世界に方向性を示す必要がある」との認識を示した。

 国会会議録検索システムで検索

内閣総理大臣菅直人君) 先ほど運転停止をした法律的根拠がないというふうにおっしゃいました。そして、原子炉等の規制法等、それから電気事業法等のそれに沿って安全性が確認されているというふうに、たしかそういう趣旨のことをおっしゃいました。
 それは、福島の原発もそういう形で許可されてきたものがあれだけの事故を起こしたわけであります。そういう意味で、私は国民の皆さんの安全と安心を考えたときに、東海地震というものが今いろいろと議論されている中では最も可能性が高いということは、それはいろいろな機関がありますけれども、少なくとも政府の機関であります文科省を中心としてそういう指摘がある中で、私はそういう観点から要請すべきだ、つまり国民の安全と安心という観点から要請すべきだと。
 ですから、確かにこの二つの法律にのって違反という形ではなっておりませんので、結果として要請、言わば行政指導であることはそのとおりであります。しかし、それは私の政治的な判断、あるいは経産大臣を含めた政治判断でさせていただいたわけでありまして、それの評価は、まさに先生おっしゃるとおり、歴史の中で判断をいただきたいと、このように思っております。

 でもこれ、「浜岡原発停止」の話で、「福島原発事故(の処理対応及び議事録)」の件じゃないですよ?
 
 ということで、多分、
×菅首相は「歴史が自分を正しく評価してくれるだろう」という主旨のことを言ったが、議事録がないという事実で評価は大きく下がると思う。歴史家は客観的資料がないところで判断しなければならないからである。
菅首相は「私の在任期間中の活動を歴史がどう評価するかは後世の人々の判断に委ねたいと思います」と言ったが、議事録がないという事実で評価は難しくなると思う。歴史家は客観的資料がないところで判断しなければならないからである。
 なんじゃないかな?
 
 藤田正美さんのテキストは、菅元総理が言ってもいないことを言ったと言って(不当に貶めて?)、「評価は大きく下がると思う」と、批判したいだけのテキストに繋げているという、あんまりジャーナリストとしては正しくない手法なのでは。
「歴史が自分を正しく評価してくれるだろう」というのは、誰が言ったとしても、うぬぼれすぎ感があるんだけど、「後世の人々の判断に委ねたい」は謙虚感があるように、ぼくには思えました。
 ぼくの菅直人氏に関する感想は「なんで議事録残しておかなかったの?」という、基本的には藤田正美さんと同じ意見です。
 
 元ネタ。
なぜ原子力災害対策本部の議事録がないのか - 自動ニュース作成G
 コメント欄の、やたらしつこい人にどうもありがとうを言います。
 
(2012年2月8日追記)
 震災の議事録は、阪神大震災以来残っていないようです。
阪神大震災でも議事録つくらず 防災相トップの対策本部朝日新聞デジタル

 東日本大震災をめぐる政権の会議だけでなく、阪神大震災など過去の大災害時につくられた非常災害対策本部の会議でも議事録や議事概要が残されていなかった。内閣府防災担当の資料でわかった。公文書管理法の施行前とはいえ、自社さや自公政権の時代から記録が不備だったことが明らかになった。
 非常災害対策本部は、国土庁長官(当時)や防災相がトップを務める。内閣府によると、1995年の阪神大震災以降、三宅島噴火(2000年)や新潟県中越地震(04年)など7回設置。いずれも議事録や議事概要がなかった。阪神大震災では、別に首相がトップの緊急対策本部も設けられたが、この会議の議事録や議事概要もない。
 会議で決定した事項や各省庁からの報告資料は残っているが、詳細な発言メモはなく議事録の復元は困難だという。公文書管理法では、政策が決まる過程を確かめられるよう会議の文書作成を義務づけているが、施行は昨年4月だった。

 いろいろな政権の「議事録がないという事実で評価は大きく下がると思う。歴史家は客観的資料がないところで判断しなければならないからである」…?