読売新聞1955年4月12日の記事「ひろがる悪書追放運動」

 悪書追放運動当時の新聞テキストから。誤字とか読み間違いはお許しください。
 今度は漫画家・出版社の意見も出ています。関係者の意見が面白いです。

ひろがる悪書追放運動 マンガ家も起つ 少年雑誌十社代表と懇談
 
悪いマンガや雑誌から子供たちを守る運動は母の会連合会や日本子供を守る会などからつぎつぎ燃えひろがり、各方面に自粛と反省の声が高まっているが、こんどはマンガ作家の会の「東京児童マンガ会」が立上がった。その第一歩として同会は十一日午後講談社秋田書店など少年児童雑誌約十社の代表者たちの出席を求め「悪いマンガをなくす会」を開いた。作家側からは手塚治虫うしおそうじ氏らの売れっ子十数人が参加、マンガ界の実例やこんごの正しいあり方について真剣な論議がくり広げられたが、こんご定期的にこうした会合を開き、悪いマンガの追放からさらに前進して明るくて魅力にとんだ児童マンガ制作へ向かってふみ出す方針を定めた。
 
▽低俗マンガはなぜあふれる-よいマンガでも一流作家は原稿料がかさむ。そこで編集者には安値な三文マンガにとびつく傾向はないか。(マンガ会秋玲[秋玲二]副会長)締切、予算の関係もある。新人を掘出そうという事もあり、適任者を探すには苦労する。(光文社「少年」編集長金井武志氏)付録がふえた結果安易にかかれたマンガが目立ち、子供がすでに読んだものまである。これでは子供に飽きられる恐れがありゆゆしいことだ。(秋田書店森田編集長)
▽マンガのあり方について-マンガは悪いものという先入観念をとり除いてほしい。子供に喜ばれ楽しまれるような“よいマンガ”が存在するはずでこの方向に進みたい。(光文社)“面白さ”という事をすぐに不良文化に結びつけて考えることは危険だ。子供にとって“面白さ”は大切なことだ。大切なことはハナたれ小僧や山奥の子供たちに無批判にむさぼり読まれているマンガ、絵物語の質を高めることだ。(秋田書店
 社としては反省もしているが、現在終戦で姿を消したはずの古いモラルが誌上にクビを出している。子供に喜ばれるサスペンスは人殺しや時代活劇ものなどからしか引出せぬものか。(小学館一年生副編集長豊田亀市氏)
▽売らんかな姿勢が原因の圧力はないか-投書は月七-八万もあり、その意向にそって作るわけだ。アメリカでよいとされるディズニー物がすぐに日本でうけるかどうか疑問だ。(秋田書店
▽マンガ作者側からの注文-児童マンガは堕落しているという声があるが率直にいってマンガのスペースをへらしてほしい。よい、悪いを反省する暇もないほどわれわれは追い回されオーバーワークなのだ。(うしをそうじ氏)
▽マンガ作者の反省-児童雑誌の競争が激しくなるにつれマンガの別冊付録の数がふえ、業界の売らんかな主義の濁流にのまれ押流されているのがいまのマンガ家の実情。量的な仕事の中からこんご内容を備えたものを少しずつでも生み出していきたい。(松下井知夫
 われわれが注文をことわればもっと低俗作家のところへ注文がいく。せめて今の線でくいとめておきたい(うしをそうじ市)
 問題の多いチャンバラものでも単に切った、はったに終らせず幾分でも抒情味をおりこむ工夫をこらせば生きてくる。(花野原芳明)
▽具体的にどう改善するか-子供の喜ぶマンガで指導しよう。一般にマンガ特有の明るい笑いが欠乏しており、たとえばゴジラでも絵物語ではどうにもならぬがマンガなら口をきかせて明るいマンガも生める。(講談社「ぼくら」編集委員石坂勇氏)

 議事録とかあったら読みたいところです。
 
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