朝日新聞の楽しい社説

↓「石原知事へ――ダボハゼからのお返事」2003年9月28日づけ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html


 拝啓 石原慎太郎

 外務省の田中均外務審議官の自宅で発火物が見つかった事件について、あなたが「爆弾を仕掛けられて当たり前」と述べられてからしばらくたちました。いまだ取り消しや謝罪をされていないところをみると、あのお考えに変わりはないのでしょうか。

 「テロを容認するわけがない」とおっしゃったのには少し安心しました。しかし、最初の発言が生きている限り、犯人や暴力を好む人たちを勇気づけていることに変わりはありません。

 先日は都議会で「片言隻句に飛びつくばかなメディアがダボハゼのごとく食いつく」と、あなたを批判するメディアにも矛先を向けられました。そこまでいわれて引き下がるわけにはいきません。

 田中氏ら外務省の対北朝鮮外交がよほどお気にめさないのか、あなたの批判の言葉は「万死に値する」「売国だ」と穏やかではありません。しかし、日朝首脳会談を目前に控えた昨年9月6日の記者会見で、首脳会談を「とてもいいことだと思う。失うものは何もないね」と評された。それと最近の批判はどう整合するのでしょう。

 もちろん外務省の対応にも問題はあります。しかし、首脳会談によって、北朝鮮が拉致を認め5人の被害者の帰国が実現したのです。あの首脳会談がなければ、いまだに事実はベールに包まれていたでしょう。そのことは正当に評価した方がよいと思います。それも否定するのですか。

 「外務省は拉致問題について25年間、何もしなかった」というご指摘にも首をかしげたくなります。拉致問題に対する政府の対応が不十分だったことはその通りでしょうが、25年間何もしなかったというのは明らかに言い過ぎです。

 1991年に始まった日朝国交正常化交渉で、日本側は大韓航空機爆破事件の犯人に日本語を教えたとされる日本人女性「李恩恵」について、事実関係を明らかにするよう繰り返し求めています。2000年には拉致問題を「国交正常化のために避けて通れない」と正面から取り上げました。

 ところであなたはどうでしょう。25年間にわたって国会議員を務められましたが、本会議や委員会の議事録を検索する限り、拉致問題に関する発言は見あたりません。99年に政治活動を回想した「国家なる幻影」を出版されましたね。そこにも拉致問題への言及はありません。

 田中氏が首相らの意向を無視して好き勝手に外交を展開しているという批判も不思議です。田中氏を重用している政府の最高責任者は首相です。納得できないなら、堂々と小泉批判をされてはどうですか。

 ともかく、いたずらに社会不安をあおるような言動はおやめになり、住民が安心して住むことのできる社会を作ることに専念していただきたいと思います。それが知事の最大の仕事ですから。

「拝啓」ではじまった文章は「敬具」で締めなければいけないのでは。それはともかく、何らかの形で全文記録しておくに値するテキストだとは思います。
気になるのは石原都知事の「ダボハゼ」発言関連ですが、この人のテキストは引用しようと思うと無駄に長いんで…おまけにまだ議事録としてテキスト化されてないみたいだし…まぁ、テキスト化されたら正式にやってみるとして、とりあえず新聞の報道から。
↓「田中審議官、万死に値する」 石原都知事が議会答弁(朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0925/012.html

 「田中均なる者の売国行為は万死に値するからああいう表現をした」「片言隻句にバカなメディアがダボハゼのごとく食いついた」――。東京都の石原慎太郎知事は25日の都議会で、外務省の田中均外務審議官宅の不審物事件に絡み、「爆弾を仕掛けられて当然だ」などと発言したことについて質問され、こう述べた。

 共産党の吉田信夫議員らが発言をただしたのに対し、知事は「いかなるテロも容認できないことは法治国家にあっては論をまたない」と答えつつ、従来の外務省批判を展開した。田中審議官については「売国だと思う。だから万死に値するということで、ああいう表現をした」。

 さらに、自分の発言について「ゴルフでいえばパーオン。国民はこれをきっかけに外務省が何をやったか認識し直してくれた」と自賛した。

 また、知事は北朝鮮による拉致を語る中で、「年寄りだからって曽我(ひとみ)さんのお母さんなんて殺されたんでしょ、その場で」とも発言した。曽我さんの母ミヨシさんは曽我さんとともに拉致されたが、安否は確認されていない。閉会後、この点について記者団が「配慮が足りないのでは」とたずねたのに対し、知事は「そう言われれば、申し訳ないと思う」などと答えた。

 この日は、発言が問題になってから初めての議会だった。与党の自民や公明には知事擁護論が強く、質問した議員に「そんなことを聞く方がおかしい」などと激しいヤジが飛ぶ場面もあった。

(09/25 22:26)

他の三紙(産経・毎日・読売)には、記事は見当たりませんでした。この都議会における石原都知事の「釣り」に対して、ダボハゼ記者は朝日新聞だけ? 石原慎太郎氏をいろいろな意味でお好きなように見える日本共産党の新聞(機関紙)には載るかもしれませんが…。(読売新聞のは後日見つかったので追記しました)
しかし、「ダボハゼ」というのはどんなサカナなのか興味をもって調べてみる。
↓こんなサカナみたいです
http://www.maruha.co.jp/uranai/dabo.html

釣り針にえさがなくても食いついてくるダボハゼ
ずばり、判断が場当たり的。
但し、その潔さが人には気持ちよく映ることも・・・
しかし、だいたいの人はあなたを脳天気と呼ぶでしょう。
人におごってお金をなくさないように・・・
「えさがなくても食いついてくる」というダボハゼよりは、さすがにマシのようには思えました。
こんな社説に食いつく俺もダボハゼか。
原発言の、読売新聞の記事が見つかったので追記。「だぼハゼ」じゃないと検索できなかったのか。
↓「爆弾当たり前」発言は計算ずく…都議会で石原知事
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20030925i313.htm

 東京都の石原慎太郎知事が、外務省幹部の自宅前で不審物が見つかった事件について「爆弾を仕掛けられて当たり前」と発言した問題について、石原知事は25日の都議会で、「拉致問題も1年たって風化してきたため、自民党総裁選の対立軸に据え直そうと、ああいう表現をした」と述べた。

 また、石原知事は「投げたルアーにバカなメディアがだぼハゼのごとく食いつき、国民は(外務省が)何をやっているかということを認識し直してくれた」とも述べ、「ゴルフでいうとインテンショナル(意図的な)フック。うまくパーオンできた」との表現で、発言が計算ずくだったことを強調した。

 さらに、北朝鮮拉致問題について外務省の対応を批判する中で、曽我ひとみさん母娘の拉致事件について触れ、「拉致と言えば言葉が柔らかいが、袋詰めにされ十文字に縛られた。さらってみたら片方は年寄りだったから、曽我さんのお母さんなんてその場で殺されたんでしょう」などとも発言した。石原知事は、本会議後には、「大多数の専門家が(殺されたと)言っている」と釈明したが、曽我さんへの配慮を欠いたことを認め「言葉が足りなかった。申し訳ない」と話した。

 曽我さんと一緒に1978年8月に新潟・佐渡島で行方不明となった母のミヨシさん(当時46歳)について、北朝鮮側は「承知していない」と拉致を認めていない。しかし、国連人権委員会の強制的失踪(しっそう)に関する作業部会は、調査対象とすることを正式決定。曽我さんも、ミヨシさん救出のため自らが家族連絡会に参加した。

(2003/9/26/02:20 読売新聞 無断転載禁止)

「ルアー」とか「インテンショナル(意図的な)フック」とか、釣り・ゴルフの専門用語が入っていたり、その他微妙な表現が朝日新聞の記事と違っているのが分かります。正確に何て言ったのかに関する情報は都議会の議事録を待ちたいと思いますが、現時点での情報のくわしさ(=正確さ、という意味ではありません)においては読売新聞のほうが上かな、と思いました。