ハンセン病

(※この件につきましては訂正事項がありますので、テキストを読まれたあと、翌日の日記もお読みください。http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20031127#p1
ハンセン病:元患者らホテル宿泊拒否される 熊本(毎日新聞
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200311/18/20031118k0000e040060003c.html


 国立ハンセン病療養所「菊池恵楓(けいふう)園」(熊本県合志町)の入所者を対象にした「ふるさと訪問事業」で、熊本県が同県南小国町の黒川温泉のホテルに宿泊を申し込んだところ、「他の客に迷惑になる」と拒否されていたことが18日、分かった。県は「人権侵害にあたり、旅館業法違反の疑いがある」と調査に乗り出し、熊本地方法務局も「早急に調査し、勧告など何らかの対処をしたい」と話している。

 県によると、同事業は18日から1泊2日の日程で、同園の元患者18人と職員ら4人の計22人が参加予定だった。9月17日に県が黒川温泉の「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」に宿泊を申し込み、11月にファクスで宿泊希望者の名簿をホテルに送付。ホテル側は宿泊者が同園の入所者であることを知ったという。

 県に対しホテルは「当日は乳幼児が宿泊予定なので心配」と話したという。県は感染の可能性がないことを再三説明。同温泉の旅館やホテルでつくる黒川温泉観光旅館協同組合も説得したが、今月13日に支配人から「他の客の迷惑になるので宿泊を遠慮してほしい」との返事があった。

 県は14日、潮谷義子知事名でホテルを経営する「アイスター」(東京)に「偏見と差別に基づくもので、人権侵害として遺憾」と申し入れたが、最終的に「社の判断で拒否する」との回答があった。

 潮谷知事は18日の会見で「この時代にどうしてこういうことになるのか、戸惑いを覚えている」と語った。県は「正当な理由なく宿泊を拒否された可能性がある」と旅館業法違反の疑いもあるとして調査している。同事業は、県内の別の宿泊施設で実施している。

 ハンセン病訴訟菊池恵楓園原告団長の志村康さん(70)は「怒り心頭だ。ハンセン病国家賠償訴訟の判決(01年)で、らい予防法は違憲と認定されたが、世間の差別・偏見はいつまでも解消されていない。これは一温泉施設の問題ではない。放置すれば新たな差別の始まりになる」と話している。【石川淳一、阿部周一】

その他いろいろ続報もありますが、毎日新聞が比較的過去記事を残しておいているようなので、リンクだけ。
↓宿泊拒否で刑事告発も検討 法務省
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200311/20/20031120k0000m040119000c.html
↓宿泊拒否ホテルの謝罪文 入所者ら受け取らず
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200311/21/20031121k0000m040055000c.html
これに関する興味深いご意見は二つ。
↓相田寓話 (11/19)  熊本のホテルと差別
http://www004.upp.so-net.ne.jp/kuhiwo/

 半年ほど前、新宿のヨドバシカメラ本店にあるプロラボ(写真屋)に行ったとき、エレファントマンの男に遭遇した。正確な病名は分からないが、顔の半分が赤く腫れ上がり、2倍もの大きさになっていた。
 私は彼を見て、正直言ってたじろいだ。しかし、あからさまに驚くのは失礼になるので平然を装いとなりに並び、写真を注文した。そして、彼が何の病気なのかはかりかねているうちに、臭気を感じた。腫れてめくれ上がった唇は閉じることが出来ずに涎を流し、肉の腐ったような臭気を放っていた。

 ヨドバシカメラの店員はさすがプロである(この手の量販店の中では社員の質はすこぶるよい)。ニコニコと愛想良く客に対応を・・・っていつもの店員さんだけど笑顔が過剰であった。病気の彼も、恐らくは写真が好きなのであろう。通常の35mmフィルムならば通り沿いのDPEコーナーで用は済むけど、プロラボは大判ブローニー版やリバーサルフィルムのダイレクトプリントといった、デジカメ全盛の今となってはコダワリの写真好きが来る場所なのだ。

 そして、店を後にした時にふと気付いた。ヨドバシのプロラボは・・・昔は本店にあったが、今は南の外れ路地裏の奥にひっそりとたたずんでいる。銀塩写真など一部の好事家の趣味となった今、プロラボに昔の活気などない。あの病気の彼は、もしかして表通りのDPEを避けて、路地裏のプロラボに通っていたのではないだろうか・・・。

 熊本のホテルが元ハンセン病患者の宿泊を拒み、熊本県知事は重大な人権侵害、差別だとホテル名を公表し熊本地方法務局に通報した。大変分かりやすい差別である。分かりやすい故に、このホテルと温泉組合には抗議が殺到、翌日ホテル側は間違っていたと自らの非を認め謝罪することとなった。

 私は今回の熊本の事件について、ハンセン病団体側にも非があると感じている。まず、ハンセン病団体が予約の電話を入れたのは9月、そして元ハンセン病患者であることを告げたのは11月である。なぜ最初に言わなかったのか。当然拒むホテルもあろう。そこを説得して、病気への理解を求める努力をなぜ彼らはしないのか。ハンセン病に理解のある方々なら知っているだろうに、彼らが異形ゆえに差別され蔑まれ疎まれてきた過去を。ハンセン病に理解をというが、その異形ぶりはあまりに悲惨ゆえにNHKの特集くらいでしか放映されることはなく、一見した一般人はまず間違いなく恐れてしまうことを。それは差別といった文化的な構造的な社会的なレベルの代物ではなく、生理的嫌悪感であるという悲しい現実を・・・それを乗り越えるのが知識であることを知らなかったとはいわせない。
 差別を無くそうとする人々の高貴な思いは素晴らしいが、世の中に差別がなくなったかのような振る舞うのは傲慢である。ハンセン病団体になぜ最初に言わなかったのかと問えば「差別されるとは思わなかったから。」と答えるだろう。アホか。異形ゆえにメディアに出ることもなく、ひっそりと暮らしている彼らに一般市民がいきなり浴場で出会ったら間違いなくヒクだろう。理想ではなく現実を考えろといいたいね。

 ましてや、旅行直前になってホテル側に「実は・・・」と伝えるなんて、はっきりと言ってやるが、このハンセン病団体の職員は間違いなく正義に酔いしれた挙げ句昼間にランプを灯しながら「差別はないか、差別はないか。」と社会にうろつく妖怪である。本気で差別が無いと思うなら、直前に言う理由も無いではないか。差別はよくないのは分かる、でも体面を気にするホテルは一般宿泊客にどうやって説明すればいいのだ? それとも日本中の国民が見たこともない異形の存在に即ハンセン病と判断して理解を示すとでも夢想したのか? 馬鹿ぬかせ・・・。現実を通り越した意識で発せられる戸惑いまでも差別にするのかね。それは人間として当たり前の反応であり、それを乗り越えるのがまた人間の素晴らしいところではないか。知識も無しに乗り越えられるほど人間はパーフェクトな存在ではない。

 こんなの解決方法は簡単だよ。9月の時点で姑息な罠はらずにちゃんと元ハンセン病患者だと告げればいいのだ。さすればホテル側も商売ゆえに、宿泊客が戸惑うことのないように説明のパンフレットなり作成するだろう。私は商売人の息子だから同じケースが来たら、すわっ商機とばかりにこうするよ。一般客戸惑うのも想定出来るしね。差別を無くす絶好の機会ではないか。
 ところがだ、今日(11月19日)の報道をみると、ホテル側の謝罪に対してハンセン病団体側は、心境が変わった経緯などを文書で出すよう求め、内容によっては謝罪拒否もありうるなどといっている。あきれて何もいえんわ。なんで差別反対運動に携わっている奴らってのはきまって”寛容”さがないのかね。そのくせ世間には寛容(理解)を求める。何か自分たちが特別な存在とでも勘違いしてんじゃねーか?

 いいか、この事件の後、日本中のホテル旅館が彼らの宿泊を拒むことなど絶対にありえない。フリーパスだ。そりゃまことに喜ばしいことだ。しかしながら、元ハンセン病患者が湯船に入ってきたときに、逃げだそうとする一般市民の意識までは変わることはないだろう。それは・・・まごうことなき差別であろう。その現実に触れたときに、なおいっそうの差別の惨めさを元ハンセン病患者たちは感じるんじゃないかい? 一般市民の生温い笑顔の下に隠された差別を、虐げられつづけてきた彼らが見逃すことはないだろう。

 アメリカでは、陸上競技選手の多くが黒人であるが、水泳選手は殆どいない(脂肪が少ないからなんて俗説はあるが)。白人たちはカラードの入った水に入るのを嫌がる。その白人一人一人に聞けば黒人差別は無いというだろう。しかし、彼らはプールを出ていく。生理的嫌悪感などと口には出さないが、白人は出ていく。あからさまな差別である。

 でも黒人たちは今も続く人種差別反対運動の中で水泳の問題を取り上げない。あげている奴もいるかも知れないが、もっぱら就職や社会制度、暴力、といった問題が主である。黒人たちが水泳問題を殆ど気にしない理由を想像出来ない人は彼らに代わって是非運動をしてもらいたいものだ、あの大阪の親子3人でやっている黒人差別をなくす会のように。そして、あのヨドバシカメラのエレファントマンが写真を手に新宿の雑踏を歩いていくとき、幾万の好奇な視線に晒されようとも、手にした写真に喜びがあらんことを私は信じたい。差別はある、それでも世界は素晴らしいと。

相田くひを 平成15年11月19日 記

少し長い引用になっちゃいましたが、あちらのサイトにいつまで残っているのか不明なので、メモとして。
もう一つ。
ハンセン病(お豆のカレー)2003年11月23日
http://live.pobox.ne.jp/bean/200311c.htm#23_t4

 今週(18日)、印象深かったのは、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の元患者の方々が熊本県の黒川温泉のホテルに宿泊拒否された事件でしょうか。ホテルは「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」と名前まで公表されて、本社が東京の化粧品販売会社「アイスター」であることも判りました。

 こういう事件がハンセン病国賠訴訟で画期的な判決が出た熊本地裁のお膝元で起きたことはとっても残念。しかし、ホテルの総支配人が「国が隔離政策に対して謝罪した経緯は今回初めて知った」とか言っているとかで、カッコつけるわりには時事に疎い人だなぁという印象を受けました。

 国賠訴訟の1審判決が出た時、国が控訴するか否かで、厚生大臣が辞任まで言いだした挙げ句に小泉首相の判断で控訴断念・謝罪・和解となったのはテレビでも新聞でもトップニュースになっていたことは、記憶に新しいです。あおきの日記では、〔2001年5月27日〕に触れています。
 熊本日々新聞は1年半近く【ハンセン病特集】(2001年12月〜2003年6月)を組み、私もWebで読んでいます。

 大ホテルの総支配人が、「百パーセントは理解していない他のお客さまに不快感」「100%の国民が受け入れているかといえば疑問」とか国民の意見を代弁するくらい世間のことを知っていると自負するなら、地元の新聞に目を通すくらいのことはしていても良いのではないでしょうか。それこそ客商売だと思っていました。

 上司が熊本県出身でありまして、子どもの頃、「あそこ(療養所)に近づいたら病気になる(*2)」と大人から脅されていたそうです。地元だからこそ、偏見と差別が根深いのは判らなくもないのですが。

 宿泊拒否を公表する前に、感染の可能性はないと説明、県が本社まで訪問【記事】しているにも関わらず、本社アイスターの方針として「会社の判断としてお断りする。何と思われても構わない」と答えたということで、こういう事態になる予見可能性(*3)があったと思います。
 この問題を放置しておくことは、ハンセン病だけではなくエイズ等の慢性感染症の場合にも悪影響を与えかねませんし、法務省と県が告発したことについては当然と。

 90年の長きにわたるハンセン病患者隔離政策による被害というのは想像に絶するものがあります。愛楽園に行って痛切に感じたことですが、何十年も社会から隔絶されていた人たちは、もう社会についていくのは厳しい。おまけに平均年齢70歳を越え、重度の障害を持った(*4)方々です。断種・堕胎を強制され、子どももいない。

 愛楽園からの帰り、自治会の方はみんなに「また来てくださいね」何度も言ってくれました。療養所から行くところも少ない・出られない人たちは、来てくれるのを待つしかないんだなぁと思ったことですよ。

そう言えば、鮎川哲也の長編にもハンセン病を扱ったのがありました(ネタバレになりそうなので、細かな題名は略)。昭和30年代的に悲しい話でした。
俺は口だけで「差別はいけない」と言っているだけの人間はあまり信用できないです。やはり異形な人がいきなりホテルに集団で泊まっていたら驚くし、感染の危険は皆無とはいえ、大浴場に入らない人(客)のほうが多いんじゃないでしょうか。ホテル側は当日の宿泊客にアナウンスする必要はあるだろうし、宿泊する側も、(もしこの情報が正しければ)事前にどういう団体なのか、ちゃんと説明しておくべきかな、と思いました。SF者という、異形度ではハンセン病のかたとは違う次元で異形な団体が、SF大会を開催するために、何年も前からホテル側といかに緻密な交渉をしているか…「SFは不治の病であるとか、感染度が高いと一般人には思われておりますが、それは誤解です」「頭にプロペラのついたヘルメットをかぶったり、露出度の高い服でうろつく者、あるいはアニソンを大声で歌う者もおりましたが、それは過去のことで…」しかし、決定的な治療薬はない、ということが今イチ説得力に欠けたりして。
しかしここ30年ほど、「異形」なものへの接しかたにおいて、サービス業と一般人との間にある溝はどんどん深く広くなっているような気がします。
「ハンセン団体」というと、これまた別の団体と思われて宿泊拒否されたりするんでしょうか(←これより危ないネタは唐沢俊一氏あたりの線で)。
まぁ、ホテルの経営者側である「アイスター(アイレディース)」が少しいかがわしい組織であることは補足しておきます。くわしくは以下のサイトを参考のこと。
女性党・・・新興宗教マルチ商法
http://hp1.cyberstation.ne.jp/negi/DEMO/topic/t018.htm