子供にこんなサッカーボールを与えていいものか

天声人語2003年12月11日づけ
http://www.asahi.com/paper/column20031211.html


 「一度でいいから本物のサッカーボールをけってみたい」。ゴム製ボールしか知らなかったイラクの少年の夢が、日本の高校生の活躍で実現した。

 今春、イラク戦争中のバグダッドの変電所に「人間の盾」としてとどまっていた福岡県の牧師木村公一さんに、少年らが英語で話しかけてきたのがきっかけだった。「ナカタを知ってる?」。イタリアで活躍する中田英寿選手の話から始まった。

 変電所の職員住宅に住む14歳のフセン君らは、父親の月給でも買えないほど高価なボールへのあこがれを語った。木村さんは「届くように努力する」と約束した。

 その話を4月の帰国報告会で聞いた明治学院高校の小暮修也先生が高校生たちと話し合った。「私たちもイラクに生まれていたかもしれない」「ひとごととは思えない」。小暮先生が顧問をするボランティアサークルの高校生たちは動き始めた。

 先に購入しておいたボールに寄せ書きをしてもらいながら、寄付を募った。東京・品川駅頭での2回の呼びかけで、約500人が募金をしてくれた。16万円ほど集まった。子ども連れのお母さんたちの反応が大きかったそうだ。10月にバグダッドを再訪した木村さんにボール30個を託した。フセン君は「信じられない」と言って木村さんに抱きついたという。

 フセン君らはボールを抱えた写真とともに感謝の寄せ書きを木村さんに託した。少年なりに自国の現状を憂える言葉も交じっていた。「ボールを贈ってくれてありがとう。でも軍隊はいりません」。高校では今週、壁新聞で経過を報告した。

これの元になった、木村公一さんのテキストは、こんな感じ。
↓4月26日 「人間の盾」木村公一牧師の話
http://www3.coara.or.jp/~bungaku/rojiura-030426.html

最後に、イラクの変電所の子供達の話をします。
その変電所の職員住宅には30人の子供達がいて、
自分たちでサッカーチームを作っているんです。
私達のところにも、よく遊びに来ていたのですが
ある一人の子供が言うんです。
「おじちゃんは、お金持ちか?」と。
何でだと尋ねると
「僕には夢がある。一度でいいから、フィファのサッカーボールを
 この足で蹴ってみたいんだ!」 と目を輝かせるのです。
また彼は、日本のサッカーは昔は弱かったのに今は強いねと
言ってました。 こういう会話は英語で話したんです。
中学1年の子供が、アラブ語以外に英語も話せる。
日本の英語教育はどうなってるんだと思いましたね。
その子は、こう言いました。
「もし、おじちゃんがお金持ちなら、買ってきて
 もらおうと思ったけど、金持ちじゃなさそうだからいいよ」
そこで私は
「おじちゃんは働いていて、サッカーボール1個くらいは
 買える給料を稼いでいるんだ。
 だから、今度買って持ってくるよ」と約束しました。



またある時、もう一人の子供が大きな目を見開いた
真剣な顔で、私につめよってきました。
「プレステーションのサッカーチームの中に
 なんでイラクのチームがないの?」と。
そう言われても私はソニーの人間じゃないしなあ…と
弱りましたが、その子にこう言いました。
「おじちゃんは、それを作ってる会社の人間じゃないから
 どうなるか分からないけど、日本に帰ったら
 君のその言葉をソニーの人に届けるよ!約束する」

要するに、この子が蹴ってみたいのは、天声人語が言う「本物のサッカーボール」ではなくて、FIFAの公式サッカーボール
↓ネット販売価格だと、以下の通り。
http://www.rakuten.co.jp/satosp/477009/516808/518479/

2002 FIFA World Cup KOREA/JAPAN 公式試合球
 アディダス フィーバーノヴァ 5号

商品番号 AS5500
ネット店価格 13,160円 のところ
X'masセール価格 10,500円 (消費税別・送料別)
店頭にあと 3 球あります
定価で買うと13,160円
日本の金持ち父さんでも買えません。というか、そんなものを買ってやっても、子供を甘やかすだけだと思うので、普通は買いません。まぁ、レプリカ(http://www.rakuten.co.jp/satosp/477009/516808/518480/)なら5000円なので、ゲームソフトと同じぐらいの値段だから買えなくはないとは思いますが。
ていうか、このガキ、プレステ持ってんじゃん! こんなお子様は貧乏でも何でもないので、別にボランティア高校生が何かしてやる必要もないのでは。
高校生のボランティア記事はこちら。
↓平和への願いボールにこめ イラクへ…(毎日小学生新聞
http://www.mainichi.co.jp/edu/maisho/news/2003/06/19/p-03.html

◆高校生(こうこうせい)が募金(ぼきん)呼(よ)びかけ−−東京(とうきょう)品川駅前(しながわえきまえ)

 明治学院高校(めいじがくいんこうこう)(東京(とうきょう))の生徒(せいと)二十四人(にん)が東京(とうきょう)の品川駅前(しながわえきまえ)で募金活動(ぼきんかつどう)を行(おこな)いました。子(こ)どもたちが主体(しゅたい)のNGO(エヌジーオウ)「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」(FTCJ(エフティーシージェイ))の明治学院高校支部(めいじがくいんこうこうしぶ)のメンバーで、児童労働(じどうろうどう)など世界(せかい)の子(こ)どもに起(お)こっている問題(もんだい)を考(かんが)える活動(かつどう)の一(ひと)つとして取(と)り組(く)みました。

 街頭募金(がいとうぼきん)は、イラク戦争(せんそう)の反対(はんたい)を現地(げんち)で訴(うった)えた木村公一牧師(きむらこういちぼくし)の話(はなし)がきっかけでした。

 「イラクの子(こ)はゴムボールや紙(かみ)を丸(まる)めたものをボールにしてサッカーをしていた。私(わたし)に『一度(いちど)でいいから本物(ほんもの)のサッカーボールをけってみたい』と言(い)った。だから今度来(こんどく)るとき持(も)っていくと約束(やくそく)した」と木村牧師(きむらぼくし)は言(い)います。

 生徒(せいと)たちはお金(かね)を立(た)て替(か)えてサッカーボール二十個(こ)を買(か)い、募金(ぼきん)をしてくれた人(ひと)にはメッセージをボールに書(か)きこんでもらおうと決(き)めました。「経済(けいざい)とか政治(せいじ)とか、大(おお)きなことを変(か)える活動(かつどう)ではないけれど、サッカーボールは直接(ちょくせつ)子(こ)どもたちの手(て)に届(とど)く、身近(みぢか)な支援(しえん)。私(わたし)たちの心(こころ)を届(とど)けるのにピッタリだった」と、吉岡加奈(よしおかかな)さん(三年(ねん))は「ボールを贈(おく)る」ことへの思(おも)いを話(はな)します。

 品川駅前(しながわえきまえ)に立(た)った生徒(せいと)たちは大(おお)きな声(こえ)で募金(ぼきん)を呼(よ)びかけました。「安心(あんしん)してサッカーができる社会(しゃかい)になってほしい」と井上恵佑(いのうえけいすけ)さん(一年(ねん))は願(ねが)い、牧川友美(まきかわともみ)さん(同(どう))は「私(わたし)たちの声(こえ)を聞(き)き、現地(げんち)のことを知(し)ってくれるだけでも十分(じゅうぶん)です」と話(はな)します。

 生徒(せいと)たちの思(おも)いに、休日(きゅうじつ)を楽(たの)しむ多(おお)くの人(ひと)がこたえてくれました。子(こ)どもたちも募金(ぼきん)をし、「がんばってね」などとボールにメッセージを書(か)きました。

 集(あつ)まった募金(ぼきん)とサッカーボールは、九月(がつ)に再(ふたた)びイラクを訪(おと)ずれる木村牧師(きむらぼくし)が現地(げんち)の少年(しょうねん)サッカークラブ五チームへ届(とど)ける予定(よてい)です。

正直言って、こんな子供たちにFIFAの公式ボール30個(毎日小学生新聞だと20個)送るよりも、もう少し安い奴を300個ぐらい、イラクのもっと貧しい小中学生を対象にプレゼントしたほうがよかったと思います。子供の素朴な「夢」を、そのような形でかなえてあげることへの疑問も感じますし。
木村公一さんはサッカーボールのお値段をあまり知らなかったのかな。
「16万円の募金で30個」という数字を考えると、まぁ最初からレプリカにしておいた、という可能性もありますが、それだと子供への約束は、厳密には果たされていないですね。
↓ちなみに、イラクの人の1人当たり所得(GNI/人)は、2000年のデータで3144米ドル
http://homepage1.nifty.com/ptolemy/nations/asia/iraq.htm
日本基準では「豊かな国」とは言えないし、戦争による混乱から今年はもっと低くなるとは思いますが、タイやインドネシアよりもはるかに裕福です。貧富の差に問題があるとするなら、その問題は中国の場合と同じく国内問題でしょう。
↓以下のサイトからいろいろな国のデータを見てみるといいと思います
http://homepage1.nifty.com/ptolemy/nations/nations.htm
↓特にアジア
http://homepage1.nifty.com/ptolemy/nations/asia/asia.htm
イメージ的に「フセイン政権下では、アメリカによる経済封鎖で大変なことになっていた国」みたいな感じはありますが、そんなことは全然ないみたいです。