数字の意味を考える

朝日新聞素粒子」2004年2月14日づけ。


 数字の意味を考える。
    ×   ×
 米国で。大統領の支持率50%と就任以来最低。イラク戦は戦う価値があった」は48%へと急落。
 イラクで。戦闘や空爆による市民犠牲は推定1万人規模、治安回復作戦のとばっちりは数不明。
 韓国で。米の要請で、イラクへ今の600人に加え3千人の派兵を決定。米英に次ぐ数になる。
 日本で。未成年の喫煙が年46億本、税額354億円との推計。健康より納税に燃える若者たちか。
そろそろ「今村歩」と「劣化ウラン弾」という見出しにも飽きたので、俺が本当に「数字の意味を考えてもいいんだな、素粒子の中の人(=河谷史夫氏)」と、一応念を押してから考えてみます。面倒なので最初の一行目の奴だけ。
これの元ネタは、朝日新聞だから多分こんな奴からでしょうか。
ブッシュ大統領支持率、就任後最低の50% 米紙調査(朝日新聞
http://www.asahi.com/special/usaelection/TKY200402130370.html

 米政府がイラクとの戦争を正当化するため、イラク大量破壊兵器(WMD)を持っていると誇張したり、ウソをついたりしたと米国民の2人に1人が考えていることがわかった。ワシントン・ポスト紙が13日、世論調査の結果として報じた。大統領の支持率も50%に急落し、01年に就任してから最低となった。
 世論調査は10、11日に実施された。ブッシュ大統領は8日放映のテレビ番組で「イラクはWMDを持つか隠している」との開戦前の発言は誤りだったと認めたうえで、「製造能力はあった」と戦争の正当化を試みたが、裏目に出ているようだ。
 イラクがWMDを持っているという証拠について、米政府が「ウソをついた」と思う人は21%、「故意に誇張した」と思う人は31%で、逆に「故意に誇張はしていない」と思う人は42%だった。ただ、誇張していたかどうかは別にしてブッシュ政権が「イラクはWMDを持っている」と率直に信じていたと思う人は68%に上った。
 経費と利益を勘案して「イラク戦争は戦う価値があった」と思う人は、1月中旬の前回調査と比べて8ポイント減の48%で、開戦以来初めて5割を切った。
 大統領の資質への評価も軒並み低下している。「正直で信用できる」は52%で就任以来最低。「強い指導者」は61%で01年の同時多発テロ以降では最低になっている。
 このため、支持率自体も前回より8ポイント減の50%に急落した。最高は、米同時多発テロの翌月の01年10月に記録した92%。
 民主党候補者指名のトップを走るケリー上院議員と一対一で選挙したと想定すると、ケリー氏52%対大統領43%と9ポイント差をつけられている。
(02/14 02:18)
まぁ、これだけ見てコメントつけるのも簡単というか普通ですが(ていうか、たいていの人はそうします)、俺の場合は「ワシントン・ポスト紙」のネット版に当たります。
ワシントンポスト・ネット版はこちら
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A37340-2004Feb12.html
↓で、今回の「世論調査」はこちら(登録しないと読めません。登録は簡単です)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A37340-2004Feb12.html

The survey found that, for the first time since the war ended, less than half of Americans -- 48 percent -- believe the war was worth fighting, down 8 points from last month.
(戦争終結以来はじめて、戦争は戦う価値があったという意見が半分以下の48%になり、先月より8%減少した)
とか、確かに言ってますね。ただ、

 このため、支持率自体も前回より8ポイント減の50%に急落した。最高は、米同時多発テロの翌月の01年10月に記録した92%。
というテキストがどうも見当たらないのでした。
で、実は全部の「poll data(調査結果)」というのが見られます(事情によりノーリンク)。
で、どういう風に調査したか、というのも分かります。

Source: A Washington Post-ABC News poll conducted by telephone February 10- 11, 2004, among 1,003 randomly selected adults nationwide. Margin of sampling error for overall results is plus or minus 3 percentage points. Fieldwork by TNS Intersearch of Horsham, PA.
(2004年の10-11日、全土からランダムに1003人に調査。誤差はプラスマイナス3%)
とか。人数その他、日本でも似たようなもんでしょう。
で、「大統領の支持率」に関しては、こんな感じ。

Do you approve or disapprove of the way George W. Bush is handling his job as president?


Approve STRONGLY 30%
Approve SOMEWHAT 21%
Disapprove SOMEWHAT 14%
Disapprove STRONGLY 34%
DK/No opinion 2%

51%対48%で、微妙に違いますが、これも問題ないでしょう。ただ、「急落」と言っても、実は大統領の支持率、12月のフセイン拘束直前と、1月におこなったのとはほとんど変わってないので、そりゃ「フセイン拘束後」と「デビッド・ケイ氏による『大量破壊兵器、ありえねぇ(正確には、あるとは思えない)』発言後」では、8%ぐらい落ちても仕方ないかな、とも思いました。
なんかまた長くなりそうなんで、思案中。
メモだけしとこう。
1・ブッシュのイラク戦争よりもっと支持されていないのが、実は「経済政策」と「雇用対策」。要するにイラクでの失敗は日本の新聞が報道するほどにはブッシュの支持率低下の原因とは、必ずしも言えない。
2・テロリスト対策は一貫して支持されている。
3・けっこう露骨に恣意的な質問が多い(日本以上)。
4・「ジョン・ケリー」の名前がはじめて挙げられて、「どちらを支持するか」という質問になっている。
5・これはどうも今年の大統領選と関連した世論調査的なニュアンスが強い。
で、大統領の支持率が大統領選の年になると低下する、ってのはどうもありがちみたいな気もします。現職大統領を支持する人たち(今だと共和党支持者)に対して、それを支持しない人たちの声が大きくなるみたいで。日本と違ってアメリカでは、とんでもないこと(暗殺とか病死とかウォーターゲートとか)がない限りは任期満了して大統領をやめるわけで、その間の支持率なんて普通に高いのが当たり前(大統領選の年だけ低くなる)かな、と。まぁ他の人も、世論調査の内容を読んでみて、あれこれ考えてみてください。
しかし、日本の景気がよくなりそうになるとアメリカの景気が悪くなるみたいで(逆もまた真)。このことはアメリカには内緒だ。