コリン・パウエル氏は今回のイラク邦人拉致拘束事件について、本当は何と言っていたか

これに関しては、元テキスト(英文)も試訳もあちこちにあるので、あまり語らないことにしますんで、メモだけ。
元発言。(英文)
↓Interview on Tokyo Broadcasting System International with Shigenori Kanehira
http://www.state.gov/secretary/rm/31489.htm


SECRETARY POWELL: Well, everybody should understand the risk they are taking by going into dangerous areas. But if nobody was willing to take a risk, then we would never move forward. We would never move our world forward.

And so I'm pleased that these Japanese citizens were willing to put themselves at risk for a greater good, for a better purpose. And the Japanese people should be very proud that they have citizens like this willing to do that, and very proud of the soldiers that you are sending to Iraq that they are willing to take that risk.

But even when, because of that risk, they get captured, it doesn't mean we can say, "Well, you took the risk. It's your fault." No, we still have an obligation to do everything we can to recover them safely and we have an obligation to be deeply concerned about them. They are our friends. They are our neighbors. They are our fellow citizens.

↓ある人の試訳
http://d.hatena.ne.jp/hira137/20040417

ええと,誰だろうと,危険な地域に行くんなら行くで,自分が冒そうとしているリスクのことを理解しなくちゃいけないと思う。でも,もし誰もすすんでなんかしらのリスクを引き受けないとしたら,僕らは決して先に進まないし,僕らのこの世界を前進させることはないんだ。だから,この日本の三市民が,より大きな役に立つために,より良い目的のために,自ら進んで自分自身をリスクにさらしたってことを,僕はすごくうれしいと思ってる。日本の人たちは,すすんでこういうことをする彼らみたいな市民がいるということをすごく誇りに思わなきゃいけないよ。それに,日本の市民がイラクに送りこんでる兵隊たちについても,彼らがそういうリスクを自分から引き受けてるんだってことをとっても誇りに思うべきだよ。しかしだ,たとえ自ら引き受けたそのリスクゆえ彼らが捕まっちゃった時でも,僕らは「ええと,おまえらは自分から危険を冒したんだ,オマエが悪いよ」と言っていいわけじゃないぞ。それどころか,僕らはそれでもなお彼らを安全に助け出すためにとりうるあらゆる手だてを講じる義務があるし,かれらのことを一生懸命心配しなきゃならないだけの義理があるんだよ。彼らは僕らの友達なんだ。僕らのお隣さんだし,僕らの仲間なんだ。
ここで注意したいのは「And the Japanese people should be very proud that they have citizens like this willing to do that, and very proud of the soldiers that you are sending to Iraq that they are willing to take that risk.」というところみたいです。あの3人と自衛隊を、リスク面において等価だと考え擁護する、というのは、どうも日本の今の「気分」に合っていないせいか、コリン・パウエル長官の発言のこの部分を、ちゃんと評価・判断しているマスコミはあまり多くないかもです。
ということで、現在監視モードの某サイトは、どのようにコメントしているかというと、
↓自己責任論をうけて
http://www.myprofile.ne.jp/blog/archive/thirteen/160

お上に迷惑をかけてなんということだ!という感じですよね。
つうか小泉さんそれ自分で言っちゃったしね。
んでアメリカ人のパウエルさんに軽く批判される始末。フランスのメディアでも人質弁護の声があるし。
どうしたもんなんだこの事態は・・・。
恐らく、自己責任論を言っている人は、感情的に素朴なんだなあと思うんです。
多分小泉首相が彼らについてどのようなコメントをしたか、パウエル長官は知らないと思うんですが。
小泉首相が3人を批判したと報道されるテキストは、たとえばこんな感じ。
イラク人質解放:小泉首相「各方面へ働きかけ奏功」

 小泉純一郎首相は16日午前、首相官邸で記者団に、イラクで拘束されていた日本人3人の解放について「本当によかった。ほっとしています」と感想を述べた。その上で「犯人グループの要求には応じず3人は無事救出しなければならないという難しい仕事だった。各方面へのいろいろな働きかけが功を奏したと思う。何かこれだという決め手はなかなか難しい」と述べ、複数のチャンネルを通じた交渉が奏功したとの認識を示した。

 またイラクから自衛隊を撤退させる考えはないことを改めて示し「24時間態勢でいかに多くの人が取り組んだのか、退避勧告を無視して出かけた方々にもよく考えていただきたい」と指摘。被害者から現地活動の継続を望む声がある点を問われ「いかに善意でもこれだけの目に遭って、これだけ多くの政府の人が救出に努力してくれたのに、なおそういうことを言うのか。自覚を持っていただきたい」と批判した。

 首相はまた、これに先立つ閣議後の閣僚懇談会で、拘束されたとみられる日本人2人について「確認・救出に努力しなければならない。いまだ他国を含め人質事件は解決していない。十分な配慮をしなければならない」と強調した。

毎日新聞 2004年4月16日 11時51分

この発言は4月16日の午前で、パウエル長官の発言は4月15日(現地時間)。
↓一応こちらのサイト参照(インタビューした金平茂紀さん自身のサイトです)
http://www.smn.co.jp/kanehira/
↓2004年4月15日のテキストから
http://www.smn.co.jp/kanehira/mokuji/040415.html

面白かったのは、パウエル氏が人質になった市民(Japanese citizens who were willing to put themselves at risk for a greater good,for a better purpose)を日本人は誇りにこそ思うべきであり、決してとがめてはならない、と言い切ったことだ。日本に蔓延している「軽率」「自己責任をわきまえろ」論との何たる隔たりか。インタビューまでの待ち時間に、一緒に国務省の控え室で待っていたカナダのテレビ局のボスやイタリアのテレビ局の人と話したが、もし政府の人間が、公の席で人質になって困難な状況にある自国民を非難するような発言をしたならば、その人物は職位を解かれるだろう、と言っていた。国情の違いか。今も、CNNのラリーキング・ライブに米民間人人質の家族が生出演して、視聴者に心情を切々と訴えている。
知っていた可能性はありますが、微妙。
日本の報道、あるいは日本の家族がアメリカ基準では少し変なんだろうな、という感じです。アメリカ基準が世界基準として普通なのかは不明ですが。
外国の人が日本のことについて何かを言う場合は、いったいその人が日本についてどれだけのことを知っているかを知る必要があるし、発言内容は多分に国内(自国)を向いている、ということを念頭に置いていたほうがいいでしょう。米民間人の人質について何か言え、と米国のメディアに言われたら、あなたには何が言えますか。