漫画『汚れた弾丸』批判勢力

↓【出版インサイド】マンガ『汚れた弾丸』をめぐって(産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/040419/boo020.htm


バランス感覚失ったジャーナリズム

子供への“影響”憂慮

 マンガ『汚れた弾丸』(三枝義浩著、講談社)が売れている。劣化ウラン弾によるイラク国民の被害を描いた作品だ。イラクで拘束された今井紀明君が、劣化ウラン弾の問題に取り組むNGOの代表だったため、「劣化ウラン弾とは?」という国民の関心を呼んだのだろう。

 帯には「少年マガジン誌上で大反響−イラクでの劣化ウラン弾の真実を暴く本格コミック登場!」。マンガ週刊誌「少年マガジン」に昨年十一月に掲載され、反響が大きかったため、すぐさま単行本化されたものだ。

 内容は、湾岸戦争イラク戦争において米軍が使用した劣化ウラン弾の影響によって、白血病やガンが湾岸戦争前に比べ十倍にも増え、障害児の出生率が26・9%になっており、さらには経済制裁のために必要な薬を入手できず、何の罪もない子供たちが死んでいるというもの。フォトジャーナリストの森住卓氏が現地取材した「事実」をもとにマンガに再構成したという。

 ◇しかし本書では、なぜ湾岸戦争が起きたのか、なぜ経済制裁が行われたのか、何の説明もされていない。また、劣化ウラン弾放射線量は天然ウランの百分の一で、かりに体内に摂取されても、吸収されるのは全体量の1−2%に過ぎず、放射能障害が起こることはない、とする文部科学省の調査結果のように、「人体への影響はほとんどない」という説のあることをいっさい無視している。客観を装って挙げられる数字にしても、出所が明示されていない。

 かつて中国政府の用意した証人の証言をうのみにして、日中戦争時の日本軍の行いを告発するルポを出版した大新聞社の記者がいたように、ヒューマニズムに燃える森住氏が、イラク側の巧みなプロパガンダに利用されている可能性がないわけではない。戦争にプロパガンダはつきものだから。

 また、森住氏は劣化ウラン保有国として、アメリカ、ロシア、フランス、日本の四カ国を名指ししているが、中東ではヨルダン、イスラエルサウジアラビアアラブ首長国連邦クウェートバーレーンが、アジアではパキスタン、タイ、韓国、台湾が保有しているのだ。ここにも意図的なものを感じてしまう。

                  ◇

 マンガがジャーナリズムに挑むのはけっこうなことだ。本書によって、初めて劣化ウラン弾の存在を知った読者も多いはずだ。

 この作品を担当した「少年マガジン」編集部の後藤治康さんは、「批判のあることは認めますが、マンガというメディアで、何から何まで説明することは難しい。しかし、テレビや新聞で報じられない少数意見を紹介することに大きな意味はあると思う。この作品をきっかけに、イラク劣化ウラン弾について、考えるきっかけになればいいと考えています」と話す。

 それでも、なお疑問は残る。この作品が掲載されたのが、小中学生も読む媒体であるからだ。「正論」や「世界」のように、編集傾向を知り批判力のある読者が読む論壇誌とは異なり、「白紙」の子供たちが読むものだ。ヒューマニズムの皮をかぶった反米・反日書である『汚れた弾丸』が、掲載するにふさわしい作品であったのか。

 素直な子供たちは、アメリカ憎し、そのアメリカに協力する小泉政権憎しの思いにかられることであろう。

 マンガの中で、「取材の原動力は?」と問われた森住氏は、「アメリカに対する怒り、ブッシュに対する怒り、虫けらみたいに人が殺されていくことへの怒りかな…」と答えているぐらいだから、それは森住氏自身が望むことなのだろうが…。

 バランス感覚を失ったジャーナリズムは、読者をミスリードする。本書を読み、純粋さゆえに「今井君のようになりたい」と思う子供が出現することを憂慮する。(桑原聡)

(04/19 05:00)

実に産経新聞らしい記事でした。この記事を書かれた「桑原聡」さんは、雑誌「正論」にも、それっぽい意見を述べておられる、反・左翼の人みたいです。
↓俺の、『汚れた弾丸』に関する感想は、以下の日記などで記述しました
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20031213#p2
俺視点では「真相を知る・伝える」ことに力を入れようと考えないで、「かわいそうな子供たちを助けたい」という方向に力を入れるかたは、ジャーナリストではなく宗教家です。森住卓さんは、肩書きをフォト・ジャーナリストではなくフォト宗教家にあらためたほうがいいんじゃないかと思います。