毒ガス訴訟とか

↓【主張】毒ガス訴訟 有意義な事実認定の争い(産経新聞・社説)
http://www.sankei.co.jp/news/040428/morning/editoria.htm


 旧日本軍が中国に遺棄したとされる毒ガス兵器で死傷者が出たとして、中国人被害者らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審が東京高裁で始まった。国はこの種の戦時賠償訴訟で初めて、事実関係についても争う姿勢を示した。誤った歴史認識を後世に残さないために有意義な取り組みである。

 この訴訟は一九七四年から九五年にかけ中国で起きた三件の化学兵器による死傷事故をめぐって争われている。一審の東京地裁は昨年九月、原告側の主張をほぼ認め、国に約一億九千万円の賠償の支払いを命じた。

 しかし、その後の国側弁護団の調査で、うち一件は化学兵器の入ったドラム缶の大きさや表記などから旧ソ連製である可能性が濃厚になった。また、当時の中国国民党軍も化学兵器を製造していたことが分かり、残る二件についても旧日本軍の遺棄化学兵器が原因とは断定できないとしている。控訴審の行方が注目される。

 通常、こうした旧日本軍の戦争責任を問う裁判では、被告国側の弁護を法務省の検事が担当する。今回も同省民事訟務課の検事らが担当したが、旧日本軍の資料や中国の文献などを丹念にあたり、綿密な反証調査を行った。その努力を評価したい。

 これまでの戦時賠償裁判で、国はこのような反証にあまり熱心ではなかった。事実認定で争わなくても、旧憲法下では個人が国家に請求できないとする「国家無答責」の法理、民法の規定で不法行為から二十年を過ぎると訴えの利益を失うとする「除斥期間」、戦時賠償問題は日中共同声明などで解決済みとする政府見解などにより、最後は勝訴できる公算があったからだ。

 その結果、賠償請求は棄却されても事実認定で原告側主張が認められ、史実の誤りが独り歩きするケースが少なくない。旧陸軍731部隊の細菌戦賠償責任を否定しながら、それによる中国人犠牲者を「一万人以上」と認定した一昨年八月の東京地裁判決などがそうだ。しかし旧日本軍の戦争責任に厳しい見方をする学者でさえ、犠牲者は「多くて千人」としている。

 間違った歴史認識は教科書の記述を歪(ゆが)める。法務省はこれからも、法律論だけでなく、歴史事実の認定についても積極的な反論を試みてほしい。

(太字は引用者=俺によるもの)
今まで「事実認定」にもとづく反証にあまり熱心ではなかった、ということに、俺のほうとしては驚きでした。
ニュースとしては、以下のサイトなど。
↓「毒ガス、旧日本軍遺棄の証拠ない」国が控訴理由書(Yahoo!・読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040426-00000316-yom-soci

 旧日本軍が太平洋戦争終結時、中国に遺棄した毒ガス兵器や砲弾で被害を受けたとして、中国人被害者と遺族計13人が、日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が26日、東京高裁(根本真裁判長)で開かれた。

 1審・東京地裁で約1億9000万円の支払いを命じられた国側は「問題の毒ガス兵器や砲弾を旧日本軍が遺棄した証拠はない」との控訴理由書を提出した。被害者側は控訴棄却を求めた。

 問題となったのは、いずれも黒竜江省で起きた1974、82年の毒ガス事故2件と、95年の砲弾爆発事故1件で、計3人が死亡した。

 国側は、旧日本軍の極秘文書を根拠に、旧ソ連軍や中国・国民党軍も毒ガス兵器を配備していたと主張。そのうえで、「82年の事故現場で見つかった毒ガス入りのドラム缶は、旧日本軍の使用していた容器と寸法が異なる」などと、旧日本軍との関連を否定した。

 一方、74年の毒ガス事故で夫を亡くした原告の孫景霞さん(67)が意見陳述。「夫は両足の指が腐って、目も見えなくなり、痛みに耐えかねてベッドから転げ落ちることもあった。毒ガスで家族はめちゃくちゃになった。裁判所が正義の道を示すことを期待している」と訴えた。(読売新聞)
[4月26日23時38分更新]

前回の裁判結果(東京地裁)については、以下のサイトがくわしいでしょうか。
↓『稲田女性弁護士の活躍』・”媚中”外交の毒が回った毒ガス訴訟判決の不正義
http://www.eireinikotaerukai.net/E07Board/contents/E0700_08.html

 平成十五年九月二十九日、東京地裁民事三十五部(片山良広裁判長)は、旧日本軍が中国国内に遺棄した毒ガス兵器により死傷したと日本国政府に損害賠償を請求していた中国人原告らの請求を全面的に認容し、総額約一億九千万円の支払いを命じる判決を下した。
 一方同じ東京地裁民事四十九部(齋藤隆裁判長)は、同様の事件について五月十五日、反対に国側勝訴判決を出している。
 本稿では、原告側全面勝訴となった九月の判決を中心として、毒ガス訴訟の問題点を列挙し、控訴審において何を期待し、何が課題であるか、そして毒ガス問題を考えるうえでの視点を明らかにしたい。

 現在中国大陸にある化学兵器の九〇パーセントは、吉林省敦化市ハルバ嶺地区に埋設されているが、敦化市は戦争中旧日本軍の弾薬の集積地だったところで、現在埋設されている化学兵器は、戦後中国側の手で埋められたものであり、その大半は武装解除によりソ連軍、中華民国軍(一部共産党軍)に引き渡された化学兵器であると推測されるのである。さらには、旧日本軍のみならず、他国の化学兵器も相当数埋められているはずである。
 そうだとすれば、これらの化学兵器は「同意を得ずに遺棄した化学兵器」には該当せず、化学兵器禁止条約により日本に廃棄義務のあるものではない。
 判決では、終戦前後、一部日本軍が毒ガス兵器を投棄したり、埋めたりしたと認定したが、日本が停戦時に武装解除し、現状のまま引き渡した化学兵器の行方についての視点がまったく欠落している。
 この点について、高裁において、旧日本軍が遺棄したものとそうでないものとの明確な事実関係の確定が必要であり、この点について国は主張し、立証していくべきである。
まぁ、ずいぶん昔のものなので、「事実認定」「事実関係の確定」がどこまで可能かは難しいとは思いますが(戦後の混乱もあったでしょうし)、やっていないことまでやったと言われる(言われている可能性がある)日本政府に関しましては、過去の俺も多少似たような経験がありますので同情する部分が多いです。