「天声人語」と「地雷」に関する真実

lovelovedog2004-07-22

今日はとても長いです。
朝日新聞天声人語2004年7月22日づけ
http://www.asahi.com/paper/column20040722.html


 地雷が埋められている国を、まだら模様で表した世界地図を開く。インドシナから中東、バルカン、アフリカに至る範囲で、まだらが目立つ。世界の埋蔵地雷は1億個以上で、20分に1人が死傷しているとの推計もあった(『地雷問題ハンドブック』自由国民社)。

 次に地雷を製造する国を塗り分けた地図を見る。地雷は埋まっていないが製造している国が分かる。目につくのは米、英、仏、そして日本だ。しかし、日本製の地雷は自衛隊保有している。これまで海を渡っておらず、どの国の人も殺傷していない。

 日本の武器輸出を事実上、全面的に禁止してきた「武器輸出3原則」の見直しを求める提言を、日本経団連がまとめた。提言は国際的に装備・技術の高度化が進む中での立ち遅れなどを懸念する。しかし一般の産業と同じように立ち遅れを問題にしていいのだろうか。

 仮に、輸出が可能になったとする。新技術の開発に努め販路拡張を図るだろう。外国への売り込みも激しくなされる。それは何を意味するのか。兵器産業の場合、取引拡大を望むことは、兵器が使われる状態を望むことにならないか。

 国際ジャーナリスト、A・サンプソンは『兵器市場』(TBSブリタニカ)で「死の商人」の世界ネットワークを描き出した。「政府は、彼ら(兵器商人や製造者)に対し……高度な兵器の目的は本当は人殺しではないと繕えばいいと勧めてきた。しかし、兵器商人も政府も、秘密と欺瞞(ぎまん)で自己防衛しなければならない事を悟っている」

 こんな日本に、してはなるまい。

担当者が小池民男氏から高橋郁夫氏という人に代わって以来、文章が割とまともになっていたんでネタとして取り上げたことはなかったと思うんですが、今回のこれは取り上げてもいいかな、と。
まず、資料として挙げられている自由国民社の『地雷問題ハンドブック』なんですが、これは1997年に出た本で、実はそれ以降に「オタワ条約(対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約)」という、非常に重要な条約ができ(1997年12月3日)、これを日本政府も批准しています(日本政府の署名1997年12月3日、批准1998年9月30日、発効1999年3月1日)。
↓対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約(日本語訳)
http://www.jca.apc.org/banmines/framework/mbt/mbt.html
その条約締結にもとづき、小渕総理のもとで日本国内での対人地雷廃絶が3年間にわたっておこなわれ、最後の対人地雷が小泉総理によって破壊されたのは2003年2月のことでした。
本日の日記の画像で「最終爆破 始め!」って言っているのが、その時の画像です。オリジナルは以下のサイトにあります→http://plus1.ctv.co.jp/webdoc/2003/0220/01.html
小泉内閣メールマガジン 第82号(2003/02/13)
http://tasukeai.cool.ne.jp/link/koizumi/lion_82.htm

 先日、滋賀県航空自衛隊饗庭野分屯基地(あいばのぶんとんきち)で、平和への祈りをこめて、日本が持っていた最後の対人地雷を破棄しました。

 三年前に、同じ場所で、小渕元総理がスタートボタンを押して以来はじまった日本が持つ対人地雷約100万個の破棄事業がこれで終わりました。

 現地には、アフガニスタンから、地雷の犠牲になった二人のお子さんをお迎えしました。16歳のナディル・シャー君は両腕と片目を、10歳のムルサルちゃんは左足をそれぞれ地雷でなくしました。それにも負けず、前向きにがんばっている二人の姿を見て、対人地雷を廃絶しなくてはいけないとの思いを強くしました。

 日本の対人地雷がなくなっても、地球上には、今なお、5千万個とも1億個ともいわれる数の地雷が残っています。年間約1万5千人が足を切断するなどの被害にあっている現状を考えると、平和への道はまだまだ遠いものがあります。

 先日、「ノーモア地雷」を叫んで5年生の時から活動をしている愛知県の女子中学生のお母さまから「15歳の少女の思いを受け取ってください。」というメールをいただきました。このお嬢さんは、カンボジアの地雷原を訪れ、悲惨な現状を肌で感じ、それを4コママンガにしたり、週末を使って自作の絵画展や募金活動、講演会などをして、地雷廃絶にむけて「自分にできること」をひたむきに努力してきた方です。

 同じ日に新旭町で開かれた「地雷をなくそう!全国こどもサミット」には、この方をはじめ、地雷廃絶問題を勉強してきたたくさんの小中学生が参加しました。未来を担う子ども達がこの問題に関心を持ち、地雷破棄のために活動しているのを見て、とても心強く思いました。NGOなど民間団体とも協力しながら、地雷廃絶にむけた動きを世界に広げていきたいと思います。

↓対人地雷最終廃棄完了セレモニー等出席(首相官邸ホームページ)
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2003/02/08jirai.html
↓動画が見たい人はこちらから
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumivideo/2003/02/08jirai.html
↓「地雷をなくそう!全国こどもサミット」の具体的な内容
http://www.town.shin-asahi.shiga.jp/summit/campaign/japan/
こういうイベントに革新系の政党や団体の人が出ていないのが気になります。民主党羽田孜さんは出席していたみたいですが…。
この天声人語で言っている「地雷」というのが「対人地雷」なのかどうかは不明ですが、2003年の2月以降、日本に「対人地雷」はありません(「対戦車地雷」はありますが、それは防衛用の兵器で、非人道的な要素は乏しいです)(補足:「約一万五千個」は訓練用に残っているそうです。下のコメント欄参照)。そもそも、1997年の本をもとに今の地雷の状況について語るのは、第二次世界大戦前の世界地図を見て、「植民地で目立つのはイギリス・フランス・オランダ、それに日本だ」というようなものですね。
↓対人地雷の生産国は、こんな感じです
http://www.geocities.co.jp/NeverLand-Homeroom/4791/sub2.html
http://www.peace2001.org/inpaku/who.html

ミャンマー
中国
キューバ
エジプト
インド
イラン
イラク
朝鮮民主主義人民共和国
大韓民国
パキスタン
ロシア連邦
シンガポール
トルコ
アメリカ合衆国
ベトナム
ユーゴスラビア


計16ヶ国

↓輸出している国は、こんな感じ
http://www.peaceboat.org/project/jirai/mine/

オタワ条約非調印・輸出を停止せず、今なお地雷を生産】
ミャンマー北朝鮮イラク
イラクが今でも輸出をしているかどうかは不明ですが、ミャンマー北朝鮮程度の技術力でもできてしまうぐらい簡単な武器みたいです。
この「天声人語」が姑息なのは、テキスト中では「地雷」とのみ表記して、「対人地雷の現状はこうなんだが」と言われた際に「こちらが話したのは対人地雷のことではない」というような弁明も可能にしているところでしょうか。しかしずいぶん前の『地雷問題ハンドブック』を使っていることだけは確かです。もう少し新しい資料も、探せばいくらでもありそうな気がするんですが。