兵器を壊しても無罪な国があるというのは本当かどうか調べてみる
mixiの「戦争反対!」トピックから、こんなの。(mixiに興味のあるかたは、お気軽に俺にメールください)
→軍の犬が射殺される。
戦争についてですが、ある法の専門家の方から聞いたお話です。
ある戦争反対の人が、トイレに戦争反対と落書きしたら、逮捕され、そして起訴までされたことがある。
欧米だとありえないであろう。
逮捕するのであれば、落書きする人全てをするべきであり、選別した逮捕は問題ではないか。もう一つが、あるヨーロッパの国で武器を壊した人が逮捕されました。
その人は裁判にかけられました。しかし裁判長が下した結果は無罪でした。
理由は、彼の行為は間違ってはいるが、それを行った理由には正義があるというものだったということです。
この是非について議論するつもりはありません。
ただ、こういう裁判は日本ではありえないであろうということを聞いたことがあります。
↓この「トイレに戦争反対と落書き」した人は、法廷でも愉快な人でした。
→SBA(跡地)
木下被告は判決理由の朗読が始まると、証言台のマイクの一部を裁判官に向かって投げ付け、退廷を命じられた。職員に取り押さえられるとスプレーをまいた。
(前略)
パンクとはああいうムーブメントだったと論じる人がいる。セックスピストルズも クラッシュもラモーンズもまとめて同様に論じる。そんな人なんてたかが知れてる。パンクとは紛れもなくセックスピストルズだ。それは他のバンドとはスタイルも質も違うものだった。
(中略)
私は差別主義者だと言われる。自身自覚している。差異を認めるのは大事だ。直さなければいけないところもあれば直さなくていいところもあると思う。
私は社会になじめなく、卑怯で卑屈で、そして食えない奴だ。
「北斗の拳」を転用すると「私たちはすでに生き延びている」
↓その応援サイト
→graffiti is not a crime!
↓また「石田ビル4階」だし
→お問い合わせ
↓石田ビル4階
google:港区新橋 2-8-16 石田ビル4階
しかし今日のネタの眼目は、引用テキストの後半部分、
もう一つが、あるヨーロッパの国で武器を壊した人が逮捕されました。
その人は裁判にかけられました。しかし裁判長が下した結果は無罪でした。
理由は、彼の行為は間違ってはいるが、それを行った理由には正義があるというものだったということです。
という奴です。さっそくgoogle先生に聞いてみたりとか、いろいろな情報を集めたりいただりたりして、こんなサイトを発見。
→ゴイル湖活動家を支援
この中にある「トライデント・プラウシェアズ」というのが、そういうことやった人たちの団体みたいです。
→Trident Ploughshares - Celebrate Hope Disarm Trident(公式サイト・英文)
で、それに関する判決文は、以下のところにありました(日本文)。
→スコットランドの裁判官、トライデントを違法と判定
ここの中盤以降にテキストがあります。本当なら公式な奴を探さないといけないんでしょうが、確かに「無罪」です。ただ、
私は悪意に関するマクローリン氏のコメントを認める。ゴードンは「悪意をもって犯されたのでない限り、いかなる行為も処罰されない」と述べている。私は、被告人らが犯罪的意図をもってふるまったと思わせるような事実を何一つ耳にしていない。従って私は、陪審が訴因4の択一的部分を除き、訴因1ないし3に関して3人全員を無罪とすべきこと、また訴因4の最初の択一的部分についても無罪とされるべきことを、彼らに説得するものである。
というテキストからは、「彼の行為は間違ってはいるが、それを行った理由には正義がある」というようなものではなく、「悪意をもって犯されたのではないから」というような理由を感じました。
しかし、リベラルな人とそのサイトには、「これで、いいことのためには悪いことをやってもいいことになった(少なくともイギリスでは)」と思っている、あるいは思わせているテキストが、ここまでの話として載ってたりしますが、少し待ってください。
実は、このあとの続きがあります。
これは、あくまでも「スコットランドのグリーノック地方裁判所」の「マーガレット・ギムブレット判事」がくだした判決で、日本だと○○地裁レベルのもの。そのあと、控訴・上告と、最高裁判所まで戦って、ようやく「勝った」と言えるような裁判の、これは序盤戦です。
もっとも、イギリスの法制度は、「無罪」の判決がくだされた場合は、その上の裁判所で争うことはできないみたいです。
そこで、イギリス政府は、というよりイギリスの裁判所は「法務総裁の事件付託」というワザに出ました。
法務総裁の事件付託
スコットランド法務総裁はエジンバラの高裁に対して,グリーノック判決の法律点の明確化を求めた.高裁が行う決定は3人への無罪判決には何ら影響しないが,将来の裁判のための正式な指針を定めるものである.
要するに、それを「判例」とするかしないか、もう少し厳密な審査をしようじゃないの、ということですね。
無罪の判決が出たのは、1999年10月20日ですが、その「審理」と「裁定」は2000年の秋から2001年の春にかけておこなわれました。
市民による核廃絶
このまま放置出来ないと考えた政府は,「法務総裁の事件付託」と呼ばれる、スコットランドでこれまで7回しか行われていない非常にまれな司法手続きに踏み切った。これは、無罪判決に対して上告できないので,これに代わって判決を事実上無効化しようとしたものである。その手続きは、法律解釈を明確にするために、法務総裁(スコットランド検事総長)が高等裁判所にいくつか質問を提出し、それを高裁の裁判官が,元被告・弁護団と討議するというものである。
審理は10月9日に始まり,間に1ヶ月の休廷をはさんで11月17日に終了した[5].裁定は年明けて2001年3月30日に出されたが,核兵器に対する判断は避け,グリーノック判決を台無しにするようなものだった.判事は裁定を述べるとき元被告人らと視線を合わせようとしなかったという.
…とまぁ、何やら「無罪の判決」に対して、別の判断がくだされたことを匂わせています。
↓審理の模様は、ここを見る限りとても、ものすごく賑わっているんですが
→グリーノック判決の高裁審理 - 法務総裁の事件付託-
最終的な裁定が出たあとは、この事件に関しては「トライデント・プラウシェアズ」(イギリスの反核団体)の人たちは黙ってしまったみたいです。
だもんで、その元テキストを探すのにえらい時間がかかってしまいました。せっかくなので、どうやったかも書いておきます。基本的にはgoogle先生を使いまくるわけですが。
↓まず、裁判官や被告の名前から、以下の新聞記事を見つけます。
→Scottish High Court Ruling on 'Trident Three' Case
↓で、イギリスの法律関係のテキストは、どこにあるかというのを日本語で調べたら、こんなところがあります。
→manual-uk:イギリスの法律文献・政府文書などを調べる
↓ここから、以下のところを見てみることにします。
→Court Service
↓以下のところには、イギリスでおこなわれた裁判の判決文がほぼほとんど入ってるわけで
→British and Irish Legal Information Institute
↓そこを「Trident」で検索すると、読みたいテキストがようやく出てきます。
LORD ADVOCATE'S REFERENCE NO. 1 of 2000 BY HER MAJESTY'S ADVOCATE REFERRING FOR THE OPINION OF THE HIGH COURT ON POINTS OF LAW (TRIDENT) v. ANGELA ZELTER and BODIL ULLA RODER and ELLEN MOXLEY [2001] ScotHC 15 (30th March, 2001)
で、それはいいんですが、こんな長文の、法律の専門用語が多い、構文ぐしゃぐしゃのテキストは、俺の英語力では読むのはとても無理です。とりあえず「ここにあるよ」ということだけ示しておきます。
あと、最後の「Summary」だけ引用しておきます。
[113] In answering the questions, we have tried to deal with the broad issues which they raise, as well as the specific issues which have been seen by the respondents as "real". But in concluding, we would reiterate that we have grave misgivings as to the justiciability of the issues which we have been asked to deal with, in relation to defence policy and the deployment of Trident. And we feel obliged to add that even ignoring the issue of justiciability, we are not persuaded that the facts of what the respondents did, or anything in the nature or purposes of the deployment of Trident, indicate any foundation at all, in Scots or in international law, for a defence of justification.
まとめとしてはまぁ、都合のいいこと言っている人たちの裏には、何か別の本当のことがある場合もある、という感じでしょうか。
あと、→「ゴイル湖活動家を支援」←をご覧になるとお分かりの通り、いささかこの反核団体には不利な判決とかが最近は多いみたいです。だからやることもだんだん過激になったりという、左回りの悪循環(ダメ左翼スパイラル化)をしているような。
↓ちなみに、あちらの人は原潜に落書きしてます。
→活動家の原潜落書きで,ファスレーンのセキュリティー再び破られる
彼らが「悪意のいたずら」(Malicious Mischief)で告発され,そしてそれが海軍基地から直接受けた情報からであったということから,トライデント・プラウシェアズは二人が停泊していた潜水艦の側面にペイントしたということを確認出来た.