ソーシャルブックマークが「コミュニティのコンテンツ化」を加速する

ユリイカのブログ特集打ち上げトーク」から出てきた話題みたいですが、
誰かが屋上から投げる風 - オープンソースのコンテンツ化

コンテンツというのは中身のことであり、利用者がそれを求めてやってくるものです。つまり、「オープンソースのコンテンツ化」という言葉は、オープンソースという仕組みによってもたらされるコミュニケーションの様式や状況そのものが利用者の求めるコンテンツとなるということだと思います。

何かを語る(オープンにする)ことより、語られたオープンなものについて語る人の数の上昇が、ブログを支えてるんじゃないか、みたいな話など。
大学のクラブのサークルみたいな中で、創作活動というモチベーションを維持するのはけっこう大変だし、たいていの人間は人間関係の流れから「批評家」みたいになっちゃうわけで、大学の漫研とか軽音楽のサークルからそれなりのクリエイターが出た例は珍しい(そういうクリエイターは、サークルの中ではどちらかというと傍流の人っぽい)というイメージがあります。コミュニケーションを密にしすぎる弊害は、関係性がある程度距離の置けるブログよりも、2ちゃんねるとかmixiのほうが濃いかも。
TRiCK FiSH blog:コミュニケーションというコンテンツ

実際さー、“情報発信”ができる人って、やっぱり能力的にかぎられてくると思う。これは現実問題として仕方がないし、ネットじゃなくて日本全体の能力値とか教育とか民度の話だから、ネットの「コンテンツ」を増やしたいのであれば、成員数を増やすのがもっとも近道だし、効率もいいはず。たとえば、「ブログサイコー」とか「ブログで情報発信だ!」って啓蒙は、安直だけどもこれから定年退職を迎える団塊世代にはかなり効くと思う。なんだかんだ言って、団塊世代のオッサンとかいまの若い連中と違って本とか映画を若いうちにけっこう読んでる人が多いから(他に大した娯楽がなかったからね)、面白い人材がいっぱい眠っていると思う。

俺が懸念しているのは、「情報発信をする人間の(量的・質的な)限界」よりも、その元となる「情報」を根本部分で作っている側の、量的増大と、それにともなわない質的低下(劣化コピーの増大)のほうだったりします。あと、いいものがうまく世の中に広まっていかない、情報発信者の質的低下とか。
まぁ、「質的低下」って、要するに「いいものより悪いものの数が多くなる」というだけのことで、本にしろ映画にしろブログにしろ、悪いものが増えている一方で、いいものもどんどん増えてます。ただそれが「コミュニケーションというコンテンツ」によって阻害されている部分もあるかな、と。
↓こちらは、もっと分かりやすい覚え書き。
おれはおまえのパパじゃない - まとまらない覚え書き

あとはてなダイアリーは大好きだけども、はてな中華思想の片棒を担ぐのだけは絶対御免だな、と思った。

はてなダイアリーの根本思想が、ランキングによる下克上や有名ブログの「虚構の人気度」というシステムによってユーザーを増やすということではなくて、リファ(トラックバック)やキーワードで有名・非有名ブログとつながっていく、という、コミュニケーション重視の、あまり殺伐としないシステムになっているのは、どこまではてなの人が考えたかは不明ですが、なかなか面白いです。ランキングに意味が出てくるのは、それが動的に変化する(週単位・日単位で移動がある)という、いわば「積極的に古いものと新しいものを入れ替えたい」と考えて、それにメリットを見出す情報操作側にメリットがあるシステムですが、ブログ・ランキングはそこまで動的ではないので、もしやるのなら、時事とか日々のキーワードにランキングをつけて、それに言及しているブログを動的に紹介する、というやりかたがいいのでは、と思います。
と、だいぶ遠回りしてから「はてなブックマーク」の話になるわけですが、
デジモノに埋もれる日々: はてなブックマークが示す、ネット社会の時事ネタ意識

そしてここからが重要ですが、こうした「注目のエントリー」のリストが、自らが面白いネタを読みたいため、ではなく、
「他者との共通話題」を取り込むために
利用される傾向が出て来ているのではないかと感じるのです。ネット社会に於いて既に「高橋メソッド」は皆が知っているだろう話題であり、そうした時事ネタの共有意識がベースとなってコミュニケーションが取れる、
つまり「ネット社会の時事ネタ自動収集機」として、
はてなブックマークが機能しつつあるということです。

「時事ネタ」といっても、政治や社会のことだけではなくて、ネット全体を流れている「うつろいやすい情報」だったりするわけですが。
実は俺は、前にも言ったとは思いますが、俺は人のブックマークで語られたネタをデータベース・ソフトに入れて、面白そうな情報を探してます。で、その対象となったブックマークは現在153。2005年3月中ごろから溜まってきたネタ(情報)は、現在1万2千というものすごいことに。毎日100ぐらい読むんですが、毎日400ぐらいずつ溜まってます。この「読む」という作業の中で、ブックマーク登録ユーザーの数が多い奴だけセレクトして読んでいけばもっと楽なんですが、そうすると俺にはまったく面白くないという状況になるわけで、なんか「ReadMe!新作レビュー」とか、はてなダイアリーの登録ダイアリーを全部読もうとか思ったときと同じような感じです。要するに、情報量が処理能力をうわまわっている、という。
ネタを選ぶときに、俺の場合はなるべく人の語っていないこととか、語るアプローチを変えたりしてるわけですが、そういう意味では、俺ははてなブックマークを「ネット社会の時事ネタ自動排除機」的に使っているのかも。俺のはてなブックマークは、登録ユーザーが3人以上の赤くなっている奴は、積極的にどんどん、一定期間で登録を外すようにしています。残っているブックマークからネタを拾ってくれるような「情報発信者」がいたりするとありがたいのですが。