列車事故報道での記者の質の悪さについて

尼崎の列車事故については、だいぶ「取材する側のモラル」が問題になって来ているようですが、個人的に興味を持ったのはこのやりとりでした。
マスコミの‘暴走’に倣って、ブロガーも暴発〜JR脱線事故〜

TBS系列、「朝ズバッ!」ではボウリング大会の後、一次会で使った居酒屋のシーンがあった。
鳴り物入りで始まった新番組だが、そこで、件のみのもんたは、独自に入手した重要な証拠があるとし、居酒屋の領収書が映し出された。
料理8品、飲み放題の3,500円、16:30まで飲んで10万8,486円。

はぁ?
これって報道する価値があるのか。
他局や新聞もこぞって、3500円の飲み放題だったことを報道していた。

ということで、→「なりぽん@厭離庵」←の人は、居酒屋に聞いたり、TBS関係者に電話突撃したりした様子。

M氏「あなたはいったい何がしたいのか。店と局の問題だが・・・」
オレ「私は一介の微力なブロガーです。まあ、あなた方マスコミが第4の権力なのにブロガーは第5の権力なんて言う人もいますがね。私が言いたかったのは、‘独自に入手’とするために店の迷惑も考慮しないのは、JR西の利益優先とちっとも変わらないってことです。」
M氏「だからあなたは何をしたいのか、そもそも店の実名は報道してないが」
オレ「ああやって、店内を映し出したら、分かる人には分かるでしょう。テレビチャンピオンって知ってますよね、居酒屋オタがいたら秒殺でしょ。誰かが分かればそんな情報あっという間ですよ、今の時代の伝播力は。
私がやっていることは、今回の事故で被害者の‘代弁’をする意気込みでJR西日本を‘糾弾’しているあなた方マスコミと構図的には同じですね。規模は全く違うけど・・・。
で、この一件はブログに書かせてもらいますから・・・あなたの実名だしていいですか」

という関係者のやりとりなど。
ここも参考になります。
被災地でマスコミが傍若無人な理由とは?

みんなが入っちゃいけないところから写真を撮るから「他にはないすごい写真」になるわけだろ? 、普通の人が聞かないようなことを聞くから「他にはない話」が聞けるよな? つまり人と一緒のことをしていたんじゃダメ。決まりを守ってみんなと一緒のことをしている「いい子ちゃん」じゃ、いい仕事はできないってことなんだ。だから、結果として「そういうヤツ」ばかりが生き残ることになっちゃうわけ。

最後に新聞記事などから。
【社会部発】「罵倒だけ…恥ずかしい」 「客観報道」へ自戒(05/07 05:00)産経新聞

荒れるJR西会見場/取材陣にも厳しい目
 
「遺族の前で泣いたようなふりをして、心の中でべろ出しとるんやろ」
「あんたらみんなクビや」
四日深夜、ボウリング大会が発覚した後のJR西日本幹部の会見。激しい言葉を次々と投げかけられ、この幹部はぐっと唇をかみ締め、目を伏せたまま微動だにしない状態が続いた。
発言したのは、犠牲者の遺族ら事故に巻き込まれた関係者ではない。会見に出席した一部の記者がぶつけたものだ。
こうした荒れた会見の様子をニュースやワイドショーで放送したテレビ局には、視聴者から「遺族の代表にでもなったつもりなのか」などとマスコミ批判も寄せられた。
発生以来、連日開かれている会見は毎回のように混乱している。その原因の一つに、JR西側の対応のまずさがあることは確かだ。
冒頭の会見にも伏線があった。四日夜、事故電車に乗り合わせた運転士二人が救助活動に参加せず出勤した不祥事についての会見が終わりかけたころ、ある記者がボウリング大会について質問した。JR西幹部は即座にボウリング大会の開催を認め、メモを手に説明を始めた。「なぜ、最初から言わない」。自ら公表しないJR西の隠蔽(いんぺい)体質に、マスコミ側の不信感と怒りが根強くある。
ただ、会見の場で質問する記者の多くは社名を名乗ることもなく、時に怒声をあげてJR西側の回答をさえぎることも。このため、マスコミ側に寄せられた苦情には「罵倒(ばとう)だけの会見は恥ずかしい限り」「記者の会社名と名前を出すべきだ」といった意見も多かった。
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは「感情的な言葉はあまりに聞き苦しい。自分もミスを犯すかもしれないということを忘れ、恫喝(どうかつ)的な姿勢になっている」。
音好宏・上智助教授(メディア論)も、説明責任を果たしていないJR西日本が社会的非難を受けるのは当然としたうえで、「歴史的事件の最前線にいる記者がつい冷静さを失うのは分かるが、記者の感情の高ぶりに任せた質問が逆に視聴者に違和感を覚えさせたのでは」と、記者側に自制を求める。
放送批評懇談会の志賀信夫理事長は「一番大切なのはなぜ事故が起きたのかという点だが、現状ではJR西日本のダメぶりをボウリング大会などの不祥事から誇張して騒ぎ立てている印象だ。事故原因や、職員と車掌は何をすべきだったのかなど、事の本質を客観的に報じることが求められている」と話す。
遺族や被害者の立場に立った報道は重要だ。しかし、客観性や冷静さを欠いた報道は、今回の事故の本質を見失わせる。そのことを肝に銘じながら、真実を追いかけていきたい。(JR脱線事故取材班)

フラッシュ誌の契約記者ら、住居侵入で逮捕(読売新聞)

神奈川県警鎌倉署は6日、東京都豊島区目白3、写真週刊誌「フラッシュ」契約記者清水一男(42)、練馬区羽沢3、カメラマン木村哲夫(30)の両容疑者を住居侵入の現行犯で逮捕したと発表した。
調べによると、両容疑者は同日午前8時半ごろ、同県鎌倉市内の住宅敷地内に侵入、同県藤沢市内の女性会社員(当時33歳)の遺体が埋められていた穴を、シートをめくって撮影していた。
この住宅は、4月26日に死体遺棄容疑で逮捕された男(34)の自宅。2人は非常線をくぐって侵入。気づいた隣家の男性(42)がカメラを渡すよう求めたが、2人が拒否したため取り押さえ、同署に引き渡した。
2人は取材中で、「写真を撮れと言われたので入った」と供述しているという。
フラッシュを発行する「光文社」のフラッシュ編集部は、「事実確認中でコメントできない」としている。
 
(2005/5/6/13:06 読売新聞 無断転載禁止)

ジャーナリストは何かを糾弾する人ではなく、事実をメディアを通して伝える(報道する)人でなければならないし、ワイドショーやニュース番組は法廷なわけでもありません。また、事実を伝える側のモラルや責任意識は、その「責任」の大きさ・重さから、一般の人間よりかなり高いものが求められます。
そこらへんを誤解している記者・ジャーナリストの人がどうも多い、ということはないとは思いますが、目立ってしまうのが残念なところです。
 
これは以下の日記に続きます(お詫びコミ)。
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20050514#p2