記者会見に関する右・左の情報操作と、「つくる会」はちゃんとプレスリリースを作る気があるのかということについて

RSSリーダーの普及にともない、見出しがやたら長くなっていることはご了承を。「尻の穴は一つしかないが、それに関する意見はいくらでもある」というわけで。

で、まず新聞の発表・右寄りの例。

つくる会 英訳で教科書説明 中韓記者ら100人に産経新聞

新しい歴史教科書をつくる会八木秀次会長と藤岡信勝副会長が十日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見し、今春検定に合格した扶桑社の歴史・公民教科書について外国人記者の“追及”に答えた。欧米や中国、韓国の記者ら約百人が出席。同社歴史教科書の近現代史部分の英訳が配布された。
韓国人記者が「性奴隷(慰安婦)や誘拐(強制連行)について隠しているのはなぜか」と強い口調で質問したのに対し、藤岡副会長は(1)以前は韓国の教科書も慰安婦について書いていなかった(2)今回検定に合格した全社の教科書から「慰安婦」の文言がなくなった(3)それは「慰安婦の強制連行」に証拠がないことが明らかになったからだ−と説明した。
英国人記者が「教育関係者はつくる会に感謝しているはずなのに、なぜ前回の採択でほとんど使われなかったのか」と尋ねると、八木会長は「皆さんには信じられないかもしれないが、日本の教育界ではマルクス・レーニン主義がいまだに力を持っていて、国民の感覚との間に大きなギャップがある」と述べた。
扶桑社教科書南京事件を書いていない」など誤解に基づく質問も多く、八木会長は「海外に正確な広報を行うのは本来は文部科学省の仕事だ」と話した。つくる会は同日、扶桑社歴史教科書の中国関係部分の中国語訳をホームページに掲載。英語、韓国語についても順次掲載する。

【2005/05/11 東京朝刊から】

(05/11 08:40)

次に、(日本人感覚としては)左寄り。
教科書立派なはずなのに採択率なぜ低調か中央日報

日本の「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」が日本駐在の外信記者たちに叩かれた。
この日、つくる会がこれまでしてこなかった外信記者会見を要望した理由は「われわれが攻撃されるのは誤った韓国や中国の世論による」として反論するためだった。 この日つくる会は、自らの教科書で近・現代史部分64ページを英文翻訳し、配布するなど気を配ってみせた。
しかし彼らの期待はあっけなく崩れた。 あるアメリカ人記者が、藤岡信勝つくる会副会長が書いたコラムを取り上げ「日本が専制国家体制だったことがあった。 これは明らかな事実なのに、なぜそれを認めようとしないのか。 私はあなたがたを全く理解することができない」と辛らつに批判した。
続いて英国人記者が 「あなたがたの言葉通り、それほど立派な教科書ならば教育委員や保護者らがこの教科書を、先を争って採択するだろうが、なぜ採択率が0パーセントに近かったのか」と詰問した。 すると八木秀次会長は「日本の教育界がマルクス信奉者ら構成されたいたため」として答え、記者たちの失笑を買った。
この日、記者会見はつくる会の「歴史歪曲」の試みが、当事者である韓国や中国はもちろん、国際社会から仲間はずれにされたことを立証する場となった。

ブログやネットでの意見は、こんな感じ。まず右寄り。
酔夢ing Voice - 西村幸祐 -: 「つくる会」海外特派員クラブ記者会見の、歴史的意義

昨日、午後4時から東京の海外特派員クラブで「新しい歴史教科書をつくる会」が記者会見を行った。韓国と支那反日暴動の後なので関心は高く、会場は満員だった。両国からの教科書への攻撃があったので、逆に日本側から情報を発信できるいいチャンスだった。もっとも、会場で欧米メディアより韓国、支那のメディアの姿が目立ったのは事実だった。真っ先に質問したのは民団新聞の記者で、攻撃的な口調で延々と「従軍慰安婦」の記述のこと、藤岡氏のつくる会シンポジウムでの発言について詰問した。民団はこれまで一貫して日本国内の反日勢力である「教科書21ネット」などと共に反つくる会攻撃の急先鋒に立ち、無意味な内政干渉を繰り返してきた。それでも、藤岡氏が落ち着いて慰安婦の記述が無くなったのは全ての教科書であって、歴史的事実がないことも説明した。記者の興奮した口調に、一部の欧米メディアから苦笑も漏れたのだが、それがこの会見を象徴していた。
詳細は引用した記事を読んでいただけば分かるのだが、新華社など支那メディアの質問も、そのまま歴史討論会になるようなものだった。面白かったのは日経の記者が埼玉県教育委員に就任した高橋史朗氏がつくる会の教科書の監修者であり、不適切ではないかという質問をしたときだ。藤岡氏がその質問を会見の趣旨にそぐわないものとして時間の無駄になるので、後で個別に質疑に応じると答えたとき、韓国系メディアが陣取った席のあたりから、「逃げないで答えてくれ」というニュアンスの野次が飛んだ。空気を読めないとは、まさにこのことをいう。だが、そういう質問にも教育委員で教科書の執筆者は他にもいるし、問題になるのがおかしいと藤岡氏が答え、集まった内外のメディアにはかえって良かったのかもしれない。フィナンシャルタイムズの記者が極めて「空気の読める」質問をしてくれた。
「私の質問は非常に単純なものですが、客観的な歴史というものが存在するのでしょか?」
この質問に答えた藤岡氏はこう言った。
「歴史哲学的な質問ですが、客観的な事実と言うものはあると思う。だからそれが重要であって、それを歪めて書くのは許されないことだ。だが、歴史とはHISTORYにSTORYという言葉が含まれているように、書く側が主体的に構成する傾向がある。語る主体が歴史には出てくる。客観的な歴史はあるのか? という質問に対しては、事実については客観的な事実があると思う」
この質疑で、この会見は大成功だったといってもいい。また、ガーディアンの記者が日本の教育会にマルクス主義が勢力を持っているのは本当かという質問に対し、八木会長が「信じられないかもしれませんが、日本の現実です」と答えたとき、ざわめきも広がった。私は、つくる会は今後、政府、文科省などにパブリック・ディプロマシー、広報的なものを要求しないのかと質問した。そもそもこんな会見をつくる会が自腹を切って、近現代史部分の英訳版を配布して行うことがおかしい。反日暴動直後ということもあり、本来なら政府、外務省が行うべきことだ。拉致問題にも見られるように、日本は、まともな日本人が政府に裏切られる国であり、自力で行動しなければ何も獲得できない国になってしまった。外務省への要望を心ある人は行って欲しい。

もうひとつ。
So-net blog:遠藤浩一覚書:外国人記者クラブでの会見

つくる会〉八木会長、藤岡副会長による外国人記者クラブでの会見に立ち会ふ。詳細は、西村幸祐氏のブログ『酔夢ing Voice――「つくる会」海外特派員クラブ記者会見の、歴史的意義』の報告に譲るとして、ここでは二点だけ、重要と思はれるポイントについて記しておく。
第一。西村氏の記事にもあるが、『フィナンシャル・タイムズ』の記者が発した「客観的な歴史といふものは存在するのか?」との(至極真ツ当な)質問に対して、藤岡副会長は「ジョージ・ワシントンに対する評価が、英雄といふ見方もあれば反逆者といふ見方もあるやうに、歴史的な事実についてはそれぞれの国や立場によつて評価は異なる(筆者注=この意味においては客観的な歴史なんぞ存在しない)。しかし、客観的な事実といふものはある」と断言したことである。
いはゆる“南京事件”をはじめとして、中国はいろいろ主張してゐるけれども、「客観的な事実」については日本としても譲れないと、国際社会に向かつて堂々と宣言したわけである。
ここは重要なところだ。誇張と歪曲に満ちた中韓反日教育について、立場が違ふのだからと、出鱈目を教へてもいいといふことには決してならないといふことである。藤岡氏はそこのところを弁へ、きちんと一線を引いて、「歴史的事実についての捏造は許さない」と、釘を刺したのである。従軍慰安婦の記述に関する民団記者によるステレオ・タイプの質問に対する反論も、その意味できはめて説得力があつた。
もう一点は、これに関連して、「南京大虐殺」といはれる“事件”の実像について、具体的な数字を交へて、世間に流布する俗説に対して反論したことである。
藤岡氏は「日本は、南京占領の直前に無血開城を求めたが国民党はこれを蹴つたため、いたしかたなく戦闘となり、この『通常の戦闘行為』による国民党兵士(共産党ではない!)の死者は一万五千程度出た。これは死体の埋葬記録から証明できる。では一般民間人はどうかといふと、南京外国人会が日本軍に対して出した安全地帯への食糧供給要請の人数が南京占領後しばらく二十万人を維持し、一ヶ月後には二十五万人に増えてゐることから、数万単位の殺戮があつたとは到底考へられない。好ましくない行為が全く無かつたとは言はないけれども、万単位の殺戮があつたといふのは虚構である」と、外国人記者に向かつて、正面から主張した(「つくる会」としての公式見解ではなく、藤岡氏個人の意見と断つての発言)。
これに対する反論(の名を借りた質問)は出なかつた。最後の方で「新華社記者」が堪らず質問を繰り出したが、それは「自分の祖父母は残虐な行為を見たと言つてゐる」と、例によつて伝聞を元にした“糾弾”で、言へば言ふほど説得力が摩滅する典型的な物言ひであつた。
藤岡氏による冷静・客観的な主張が、欧米の報道陣相手に展開されたことの意義は決して小さくない。問題は、これが正しく伝はつたかどうか、どう報道されるか――である。それによつて、次なる手を考へなければならない。
プロパガンダ戦(敢へてさう言ふ)の火蓋は切つて落とされたばかりである。

それに対して、左寄り。
身辺雑記/最新版(2005年5月10日ほか)

そんなわけで今朝は朝帰りだったので、2時間ほど仮眠。眠くて仕方ない。午後から東京・有楽町の外国人記者クラブ(日本外国特派員協会)へ。「新しい歴史教科書をつくる会」会長の八木秀次氏(高崎経済大助教授)と同副会長の藤岡信勝氏(拓殖大教授)の記者会見を取材する。会場には内外の記者が約100人。テレビカメラは9台。3分の2以上はアジア系の記者だろうと思われた。
記者会見の意図について八木氏は、「海外メディアからの取材要請が多かった。自分たちの教科書の近現代史の部分について英訳したので披露したい」と説明。続いて「つくる会」教科書について、「日本の教育界はマルクス主義に影響されているが、つくる会階級闘争歴史観から離れた教科書をつくりたいと考えた。日本国と日本人の自画像、先祖の活躍などを追体験できる物語を子どもたちに提供して、自信と責任を持たせるのが自分たちの教科書だ。自分たちの活動は日本国民のかなり多くに支持されている」などと自賛して持論を展開した。また藤岡氏は、「どこの国にも固有の歴史がある。過去の歴史を全面的に肯定するとか、戦争を美化する立場では書いていない。その証拠に、つくる会の教科書の中では戦争の悲惨さを特別に説明している」などと説明。さらに、「戦争中も明治憲法大日本帝国憲法)が停止されたことは一度もなく、政府の正統性はずっと継続しているので、日本にはヒトラーのような独裁者も全体主義も存在しなかった」と大日本帝国憲法を賛美する独自の歴史観と政治認識を披露。南京虐殺については、「中国国民党の兵士は15000人くらいが戦闘行為で死んだかもしれないが、中国の一般市民に対する大虐殺や殺害事件はほとんど考えられない」と断言して胸を張った。予想通りの「演説」だったし、両氏の考え方がどういうものであるかはもちろん知っているが、こうした独自の理論を生で聞くのはやはりなかなか興味深い。
欧米系の記者からは、日本の教科書検定制度や教科書採択の仕組み、あるいは歴史教科書をめぐる問題の背景について、ほとんど理解していないとしか思えないピント外れな質問が続出する一方で、日本人やアジア系の記者からは、本質を突いた質問がいくつか出された。「つくる会前副会長の高橋史朗氏が埼玉県教育委員に就任したことについて、(教科書採択の公正さが保てないとして)市民から反対の声が起きている。扶桑社教科書の監修者名簿には高橋氏の名前があった。つくる会と扶桑社は一体不可分ではないのか。扶桑社は検定申請図書(白表紙本)を流出させて、文部科学省から3回にわたって指導されるルール違反を繰り返しているが」との質問に対し、藤岡氏が「もう時間がない。ほかの多くの記者の関心事ではないので個別に…」と応じると、記者席から「ぜひ答えて下さい」「逃げないで下さいよ」などと回答を促す声が次々に上がる一幕もあった。この質問について藤岡氏は、「高橋氏は本人の意思でつくる会の副会長を昨秋に辞任している。監修者も辞任している。教科書の執筆者であることは教育委員になることを何ら妨げるものではない。つくる会と扶桑社が一体であるというのは事実として間違っている。検定申請したのは扶桑社という会社。つくる会の個々人が執筆している。つくる会は執筆者ではない」と弁明したが、いくら何でもこれはかなり苦しい説明だろう。社会常識で通用する理屈とはかなりかけ離れている。
最後に中国人の若手記者が、自分自身の周囲の人々の戦争体験を紹介しながら、「つくる会の教科書は日本の戦争被害を強調して、植民地に幸せをもたらしたことを強調する書き方をしている。加害者の立場を反省していないように思えるが、歴史から教訓を学んでいないことを心配する」と質問した。とても穏やかな口調だった。これに対して藤岡氏は、「質問で出された戦争中の話が事実かどうか、ここで確定することはできないし議論もしない。町村外相は戦争を美化する教科書は一冊もないと話している」などと語って胸を張ったが、これでは中国人記者の質問をはぐらかしただけで、誠実に説明したとはとても言えない。中国人記者は納得できないという表情を見せたが、多くの記者がたぶん同じように感じただろう。会見後、中国人記者の周りには何人もの記者が集まってきた。

で、「つくる会」の公式サイトではどうなっているかというと、

つくる会Webニュース > 平成17年5月12日

主な質疑応答は以下の通りです。
Q.『新しい歴史教科書』のように、従軍慰安婦や強制連行、南京事件を削除し、創氏改名を正当化することが正しい教科書なのか。
A.1996年以前は韓国の教科書にも従軍慰安婦は記述されていなかった。4/6付『朝日新聞』記事によると、全社の教科書が従軍慰安婦を削除している。それは証拠によってサポートされていないから。
Q.扶桑社の教科書はなぜ学校で使われていないのか。
A.日本には2つの大きな教職員組合がある。彼らはマルクス・レーニン主義を信奉し、国民との意識に大きなギャップがあるにもかかわらず、採択に大きな影響力を持っている。
Q.白表紙本の流出について、扶桑社と一体不可分であるつくる会はどう考えているのか。
A.つくる会のメンバーは個々に執筆者となっており、会として執筆しているわけではない。したがってつくる会と扶桑社は一体不可分ではない。
Q.日本軍の虐殺や強制連行や南京事件を書いていない。日本は戦前に戻るのではないかと心配になる。
A.町村外務大臣も検定を合格した教科書の中で、戦争を美化している教科書はないと言っている。歴史の事実が明らかになればそのような誤解もとける。

…こ、これだけですか。
会見そのものを見ていない俺としては、右・左入り交じった会見の紹介がネットで見られる状況の中で、「つくる会」が提示している「会見」の内容は、オフィシャルなものでありながらあまりにも短く、過度の情報操作があるのではないか(充分な情報操作をしていないのではないか)、と判断せざるを得ないのですが…。
つくる会」の関係者は早急に、英語版も含めて(←ここ重要)、「会見」の全文を公開し、正確な情報を提供すべきでしょう。現状では、会見を見てきた人間の、ベクトルが多分に入った情報しか普通の人間には入手できないのです。

今のところ、会見の映像としては以下のところで見ることができます。(有料?)
http://www.videonews.com/asx/fccj/051005_tsukurukai_300.asx

さらに親切な人が、テキスト化を。
新しい歴史教科書をつくる会記者会見 (5月10日・外国特派員協会)テキスト起こし(←ヘッケル博士の電脳庭園)
こちらはリンク集も充実しています。