医療問題研究会・林敬次さんの流す、歪んだ情報について
どうも、このあたりが「劣化ウラン弾危ない」って言っている人の科学的根拠の大もとみたいな気がするので、これを紹介しておきます。
まぁ、掲載誌が医学専門誌ではなく「週刊MDS」という、かなり赤いところだったりするのがまず問題だとは思いますが
→週刊MDS新聞ホームページ
→Web版「正論」・Seiron
この「MDS」(民主主義的社会主義運動)とは何者なのか。「MDS」は平成十二年八月までは「現代政治研究会」を名乗っていた。その前身は「民主主義学生同盟」(民学同)である。「MDS」綱領(平成十二年八月)は次のように述べている。
「我々の変革の目標は民主主義的社会主義である」。「民主主義的社会主義とは生産手段の真の意味での社会的所有を実現することである」。「マルクスのいう『各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような一つの協同社会』を実現することである」
明言されているように、彼らは未だにマルキストであり社会主義者である(どういう訳か、「MDS」ホームページではこの綱領が隠されている)。
実は、「民学同」は昭和三十八年に日本共産党から分派した「日本共産党(日本のこえ)」の学生組織であった。分派の原因は、当時のフルシチョフ・ソ連共産党書記長が日本共産党に「米英ソで締結された部分核停条約」への支持を押しつけことにある。中国共産党と接近していた宮本指導部はこれを拒否したが、日共内部のソ連派(志賀義雄など)は「党にかくれてひそかにソ連大使館などと連絡をとり」「対ソ盲従の裏切り行為をおこない、主人への忠勤ぶりをしめした」(『日本共産党の六十年』上巻、新日本文庫、三三八頁)。このソ連派が「日本のこえ」グループである。
三つ子の魂百まで、というが、「MDS」が何のために「無防備地域宣言」運動をやっているのかを暗示している話ではある。
その後、「民学同」は昭和四十四年に「共労党」を支持する一派と内ゲバを起こし、さらに昭和四十五年には「民主主義の旗派(学生共闘派)」と「デモクラート派(中央委員会派)」に分裂した。そして、多数派の「民主主義の旗派」が「現代政治研究会」を経て「MDS」となったわけである。親組織の「日本のこえ」は昭和五十二年に「平和と社会主義」に改称したが、現在ではほとんど活動していないという。
全共闘運動の最盛期、昭和四十三年九月に発行された「民主主義の旗」第五十三号には次のような一文が掲載されている。
「帝国主義段階後期としての国独資の段階は、広範な大衆が反独占の戦列に加わる客観的必然性をますます明白にしており、そこにこそ戦闘的民主主義者(今日の民主主義は、本来戦闘的である)の結集体としての政治同盟の存在理由があったのである。民学同もまた同じ必然性に導かれた学生同盟であり、それはその前提そのものからしても、共産主義次元の意見の相違を乗り越えた戦闘的民主主義者の単一学生同盟への方向性を当然のこととして有していた」
トロツキズムに流れたその他の極左勢力が自壊していった中で、「民学同」は共産主義の基本をそれなりに守りしぶとく生き残った、と言うべきかもしれない。
トロツキズム(トロツキスト)とはまた懐かしすぎる言葉です。わかりやすく言うと日本共産党とは違う形での共産主義国家・世界を目指す人たち(非代々木系)という感じですか。
まぁとりあえず「ヒューマニズムとは無関係なところで劣化ウラン弾を政治的に利用している(したがっている)組織や人間がある」ということは知識として入れておいたほうがいいかもしれません。ヒューマニズムも「イラクのかわいそうな子どもたち」も、共産主義思想のための道具かな、みたいな感じです。
で、そこに掲載された劣化ウラン弾関係の記事はこちら。
→【劣化ウランの毒性を告発する (1) 認識を変えるために】
→【劣化ウランの毒性を告発する(2) 湾岸戦争症候群にウラン関与】
→【劣化ウランの毒性を告発する(3) 兵士の子どもに現れた健康被害】
→【劣化ウランの毒性を告発する(4) イラクの人々に多くの健康被害】
→【劣化ウランの毒性を告発する(5) イラクの人々襲うガン】
→【劣化ウランの毒性を告発する(6) 毒性示す事実突きつける】
→【劣化ウランの毒性を告発する(7) 永遠につづく環境汚染】
→【劣化ウランの毒性を告発する(8) 同じ調査で異なる結論】
→【劣化ウランの毒性を告発する(9) 放射線障害もたらす劣化ウラン】
→【劣化ウランの毒性を告発する(10) 小児科学会で訴え】
しかしなにぶん雑誌に掲載された「記事」的なものなので、元の論文がどこにあるかは調べてみないとよくわからないのが難儀です。とりあえず→「NO DU 若者ネット」←のテキストを検討してから手をつけてみたいと思います。
とりあえず、以下のテキストの、
→【劣化ウランの毒性を告発する(9) 放射線障害もたらす劣化ウラン】
以下の部分はあまりにもひどい(というより嘘)なのは証拠出しておきましたが。
また、Hahn FFらは、腫瘍を作る放射線物質であるトロトラストと劣化ウラン、それに劣化ウランと同じくらい硬く重い重金属のタングステンをネズミに埋め込んだところ、放射線を出す劣化ウランとトロトラストに肉腫形成が多く、重金属の毒性に加え放射線の障害性があることを示しています。
嘘の証拠。
→「NO DU 若者ネット」の、タチの悪い伝言ゲーム
→劣化ウラン-2:ハーンらの劣化ウランをラットに埋め込んで発がん影響を見た実験
興味深い事実としては、この実験は、
・「タングステン」を使ってはおらず、それより10分の1の致死量でしかない(=毒性の低い)タリウムタンタル・メタルを使っていた(故に、当然のことながら発がん性もはっきり低かった)
・「放射線の障害性がある」なんてことは一言も言っていないし、ましてや「重金属の毒性より放射線の障害性のほうが強い」などということはさらに言っていない。
あと、ツッコミの一例。
→【劣化ウランの毒性を告発する(9) 放射線障害もたらす劣化ウラン】
その文章の前に、「劣化ウランが健康を害する主要原因は化学的毒性ではなく放射能である、という誤解が多く見られる」などと書いているからです。これだけ多くの健康障害が指摘されているので、水俣病の水銀や、イタイイタイ病のカドニウムなど重金属の毒性と同じ程度の毒性は認めざるを得なかったのでしょう。彼らにとって何とか守りたい一線は何かが見えてくる文章です。その一線とは、劣化ウランは放射線障害をもたらさないということです。劣化ウランの放射線障害を認めたら、ひいては今まで必死で否定してきた原発や核処理施設の放射能汚染による障害を認めることにもなるからです。
「劣化ウランは放射線障害をもたらす」というところに、MDSの人が何とか守りたい一線が見えるテキストでしょうか。劣化ウランの放射線障害などというものは存在しない(あるいは少なくとも、たいしたものではない)ということを認めたら、反米・反核のネタとしての反・劣化ウラン弾という主張がなくなってしまうわけで。