劣化ウラン弾に抗議している人は、一般的な「がん発生・死亡率」「奇形の割合」について知っているのかという疑問など

これは以下の日記とコメントの続きです。
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20050702#p1
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/comment?date=20050702#c
 

# 悔悟福士 『はじめまして。
以下長文です。どうかお許しを。

新生児の3%が先天的な奇形児です。13%の子供が5歳までに死亡します。

医学統計による、毎年の出生新生児の先天性疾患発生率は約2〜3%

先天的な奇形 ⊂ 先天性疾患
であることはご紹介のサイトからも明かですよね。比較としては不適当ではありませんか?

先天異常モニタリングセンター

最大でも 1.8[%] の見積もりです。更に、その基本的な見方

▼「ヒトの先天異常(尿道下裂と停留睾丸)」 ―先天異常モニタリングによる最近の動向―
を併せて考えるとさらに小さい数字になるのではないかと思われます。少なくとも、イラクと日本との単純比較はできないのではないでしょうか。
さらに、胎児に放射線が及ぼす影響について。

  胎児期被爆
  http://www.remnet.jp/lecture/words2003/04006.html
  放射線被爆と先天異常
  http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/SENTEN/hibaku.htm
  妊娠初期に薬を飲んだ・X線を浴びたけれど大丈夫?
  ○レントゲンの影響(胎児の医療被曝と影響・安全値について)
  http://www.ladys-home.ne.jp/faqsite/ans-files/FAQ-I/FAQ-I9.html#xrey
  葉酸摂取による胎児異常発生予防(←エントリを支持する記事です)
  http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/SENTEN/yousan2.htm

かの地での具体的な放射線被爆量データの蓄積は見つけられませんでした。
一番大事なところなのでもうちょっと調べたいと思います。

食品などへの照射結果を参考に。ビタミン不足は放射線被爆に由来する部分があるのでは?と想像しまして・・・
でもなんだか人体への照射とは一緒にできなさそうです。人体内の条件は「酸素あり・水あり・高温」になるのでしょうか。
被爆により活性酸素が増加する」(資料省略)ならさらに違う話になるかな〜、とか。
ビタミンAはちょっと不安定な模様。B1以外のB系は「比較的安定」とのこと。

  放射線照射は食品の栄養価に悪い影響を及ぼしませんか?
  http://takafoir.taka.jaeri.go.jp/text/text06.html
  食品に対する放射線照射(食品照射)
  http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/08030201_1.html
  動物用飼料の放射線滅菌
  http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/010094.html
  ビタミンB6欠乏の兆候と欠乏症
  http://www2.health.ne.jp/library/0300/w0306021.html

最後に。傾向は多分極端に「リベラル」側ですが、一見の価値ありと思います。
いかなる事実もイデオロギーにより配列されている、という基本事項を示唆しています。

  DU 分っていること,分っていないこと,そして明らかなウソ
  http://www10.plala.or.jp/shosuzki/edit/ippnw/controv.htm

本エントリにもありましたが、私も、我が国にある先天性障害への不幸観を基調にした(とも言える)過度なアピールには、首をひねらざるを得ません。
これは場合によってはノーマライゼーション実現の障害ともなる考え方だからです。
しかし、こちらのエントリも劣化ウラン弾被害を訴える人々(とか、或いは『リベラルな人』とか)の活動を批判するにはまだまだ資料も考察も不足しているという気がします。
愛さんの
「グロ画像(と一般的には言われているようなもの)を見たり見せたりしながら『うわー、いやー、劣化ウラン弾こわいー、こんな子供持った人かわいそー、こんな子供持ちたくないー』『アメリカ許すまじ』とか言ってるだろう人たち」に対する視線・文言は全く公平ではないですし、また残念ながら「素朴」なものとも思えません。』

すみません、実は一番肝心なことなんですが、以下のところに載っていた
DUによる重篤な先天性の奇形

新生児の3%が先天的な奇形児です。13%の子供が5歳までに死亡します。

これの元ネタ(ソース)になるテキストが、あれこれ探してみても見当たらなかったのでした。このサイトにだけしか見ることのできないテキストだったので、ひょっとしたらこの情報の信頼度は低いかもです。
もう少し信頼度が高そうなものだと、こんなのもありますが、
イラク医師が記者会見

ハッサンさんによると、奇形による出産率は、湾岸戦争前が0.304%だったのが、1.61%になっていることなどを実際のなくなったこども、治療中のこどもなどの写真を用いて説明しました。

「1.61%」なら、いろいろな意味で許容範囲内な気もしますが…。というか、湾岸戦争前の「0.304%」という数字がそもそも異常に少ないのでは。
ここにこのような資料もありますが、
出生1,000当りの主な先天奇形の頻度
それによると「出生直後の観察例」で12.22(1.2%)、「生後9か月の再観察」で24.54(2.5%)と、再観察によって「奇形の割合」が上昇する、というのが「先天異常モニタリングセンター」の数値が低い理由みたいな気がします。
しかし、つくづく疑問なんですが、「イラク劣化ウラン弾が使用されたため、がん死亡率がこんなに上昇した」「奇形の発生率がこんなに増えた」と言っている人は、そもそも世界水準(グローバル・スタンダード)としての「がん死亡率」「奇形発生率」を知っているのでしょうか。
先天奇形の頻度は、→「出生1,000当りの主な先天奇形の頻度」←でもわかるとおり、1.2〜2.5%ぐらいまでは許容です。
がんによる死亡率は、→「悪性新生物死亡率の国際比較 」←でもわかるとおり、10万人につき100人以下の国は存在しません。
先天奇形が「0.304%」しかない国があったとしたら、それはその統計データをまず疑うべきでしょう。
また、「ガンの発生率」(死亡率じゃないですよ)が「1988年」で「10万人あたり11人」だったという国は、その国の誰かが嘘を言っているのです。
最後に、
DU 分っていること,分っていないこと,そして明らかなウソ

ああ、このサイトの人には疑問点があったのでメールを出したこともあったのでした。誠実な対応をいただいて、人格的に好感が持てました。ただ、このサイトはもう少し、具体的にテキストを作るにあたってどの資料を参考にしたのか、というデータが欲しいところですね。