外務省の対中国広報活動と、ネット系ニュース記者・ニュースサイトの心構えについて

朝日新聞のこの記事ですが、
反日感情緩和にアニメやヒット曲 外務省が対中広報強化

反日感情緩和にアニメやヒット曲 外務省が対中広報強化
2005年12月21日13時36分
 
中国の人たちに日本に親しみをもってもらおうと、外務省が広報活動を強化する。反日デモが起きたように中国で対日感情が悪化しているためで、中国でも人気の日本アニメやヒット曲を地方テレビ局で放映することなどを目指す。中国でのアニメ放映を対象にした予算措置は初めてで、対中広報費は06年度予算に前年比11.6億円増の31.1億円が盛り込まれる見通しだ。
中国では「一休さん」や「ワンピース」といった日本アニメがよく知られている。日本のヒット曲もJポップと呼ばれ、国営ラジオでも紹介されている。
放送はこうした人気作品を念頭にしているが、具体的には今後検討する。地方のテレビ局との交渉もこれからだ。
一方、中国のテレビ局を招き、日本での特集番組制作を促す。外務省ホームページの中国語版も充実させ、靖国神社参拝について「二度と戦争を起こさないため」としている小泉首相の考え方を広く知ってもらうよう努めるという。

これについては、「ライブドア・ニュース」でこんな記事(テキスト)があったり、
livedoor ニュース - 【ファンキー通信】反日感情には“萌え〜”で勝負!?

ファンキー通信で取り上げたくなるような面白いニュースはないかと、日夜、情報収集に励んでいるのですが、先日こんな記事を発見しました。昨年末の全国紙に掲載された記事です。タイトルは「反日感情緩和にアニメやヒット曲 外務省が対中広報強化」。
記事によると、靖国参拝問題などによって悪化している日中関係を改善するために、外務省が対中広報活動を強化するとか。その方法がユニークで、中国でも人気の日本のアニメやヒット曲を地方テレビ局で放映してもらい、イメージアップを図るとありました。しかも、アニメ放映を対象にした予算まで組まれる見込みだとか。
いわば外務省が日本の誇る“萌え”を中国に輸出し、反日感情を和らげようというわけなのです。う〜ん、これは非常に気になります。というわけで早速、外務省に問い合わせてみることに。
そのような事実はありません。憶測で書かれているのではないでしょうか?
えっ!! でも、新聞にはそう書いてありましたよ!? 06年度予算に、対中広報費が前年比11.6億円増の31.1億円が盛り込まれる見込み、などと具体的な数字まで載っていたので、推測とは思えないんですけど・・・。
「まず予算というのは、地域ごとに組まれているわけではありません。したがって対中広報費というのは存在しないのです。外務省が主体となって、中国で日本のアニメを放映する予定もありません。そのようなことは一般企業がビジネスとしてすべきことなのではないでしょうか?」
確かにアニメを放映したいなら、権利を持っている企業がビジネスとしてすればいいこと。わざわざ外務省が間に立つ意味がないような気がする。う〜ん、やっぱり憶測なんでしょうか?
ただ、外務省が対中政策を重視しているのは、事実のよう。その一例としては、外務省ホームページの中国語版なども充実させていく方針なんだとか。そうすれば小泉首相がなぜ靖国神社に参拝するのか、正確な情報を伝えることができると考えているわけです。記事の真偽はともかく、今年も対中国の外交政策から目が離せないことだけは確かなようですよ。(梅中伸介/verb)

2006年01月11日00時07分

これによって、以下のところとかでリンクが貼ってあったり、
「(朝日新聞は)憶測で書かれているのではないでしょうか?」−外務省 特定アジアニュース・2006年1月12日)
できそこないβ版(2006年1月17日)
その他影響力のあるサイトでも言及していたみたいなので、少し遅くなったけどフォローしておきます。
これについては「朝日の捏造」というより「外務省の電話に出た人が無知あるいは嘘を言っている」あるいは「livedoor ニュースの人が嘘を言っている」という疑惑が、俺のほうではあります。
以下のところなど。
外務省所管平成17年度補正予算・平成18年度当初予算(政府案)(pdf)

対中パブリック・ディプロマシー31.1億円(19.5億円)
中国国民の正しい対日理解を促進するために、積極的な広報・交流の強化を図る。
..中国向け情報発信強化
..ソフトパワーを用いた文化・人的交流

ちゃんと「対中パブリック・ディプロマシー」の予算が組み込んでありますね。
外務省: よくある質問集 広報・文化交流

質問:「パブリック・ディプロマシー」や「ソフトパワー」とは何ですか。
パブリック・ディプロマシー」とは、伝統的な政府対政府の外交とは異なり、広報や文化交流を通じて、民間とも連携しながら、外国の国民や世論に直接働きかける外交活動のことで、日本語では「対市民外交」や「広報外交」と訳されることが多い言葉です。

ということで、対中広報(対中パブリック・ディプロマシー)費というのは存在しており、それの当初予算は31.1億円です。ただし、その「使い道」までは明記してないので、「人気の日本アニメやヒット曲を地方テレビ局で放映する」というような、具体的な使い道までは不明です。
「疑惑」レベルではなくて「ほぼ確信」レベルな俺の判断は、「livedoor ニュース・ファンキー通信」の人(梅中伸介さん)と、その記事「反日感情には“萌え〜”で勝負!?」にリンクを貼っているニュース系サイトのほぼすべてが、外務省の元ソースに目を通していないだろう、ということです。
おまいら誰かが何かを言ったという報道があった場合には元ソースを見ろと何度言ったら(以下略)。
梅中伸介さんの電話突撃も、そこらへんの基礎固めをした上でだったら、外務省の人からもっと面白いコメントが得られたのでは。
(追記)
特定アジアニュース」のエントリーの、コメント欄には外務省へのリンクがありました。