誰も取っておこうとは思わない「フリーペーパー」が招きそうな文化の断絶

CD店に置いてある音楽情報誌とか、「R25」あたりがきっかけだったと思う「フリーペーパー」、要するに無料のパンフレットとか雑誌みたいな奴ですが、そういう、誰も取っておこうとは思わない、公共の施設として取っておく場が存在しない情報誌・情報紙の普及が、ひょっとしたら数十年後には「その時代の人々はどういう生活をしていたのか、よくわからない」という状況を作りかねない、という危機感があるのです。
フリーペーパーに関しては、たとえばこんなところがあるぐらいで、
FREEPAPER NAVI :: フリーペーパーナビ
ネット内も含めると日本全国津々浦々、様々なジャンルのものが存在するわけですが、基本的にそういう情報というのは、情報を得たあとの人は使い捨てだし(新しい住居や職が決まったあとも、それが決めるまで利用したフリーペーパーをとっておく人は珍しいと思います)、趣味の映画・音楽・演劇のチラシとかならともかく、スーパーのチラシなどは誰も取っておかないですね。
ところが、ある時代における衣食住の値段とか、どういう職業の募集があって、どのくらいの賃金をもらっていたのか、みたいな「文化史」的なことを、歴史となった時代を対象にして調べるには、「チラシ」のようなものはとても意味があります。たとえば、戦前とか戦後の「女性店員」の給与とか、首都圏沿線の土地・建売の値段、なんてのは、それらを「研究」することによって見えてくる庶民の生活があるわけで、今の時代と比べてどうだったのか、歴史研究者に限らず普通の人間にも興味が持てることなのではないでしょうか。要するに、古新聞は記事よりもその中の広告のほうが面白い、というのと同じです。
新聞の場合などは、縮小版も含めて多くの図書館が保存しているわけですが、かつて「タウン誌」と呼ばれて、今はフリーペーパーと呼ばれているような、地方やジャンルごとの「情報」を、後で見られるような形で保存しているのは、その雑誌・ペーパーを作っている編集部以外にはほとんど存在しないんですね。
もし今年の春から、市役所などの地方公務員になったかたがいたら、地域の新聞の広告チラシを、全部とまでは言いませんが、新装開店・新規オープン(あるいは閉店ありがとうセール)の際の奴だけでも取っておいてみたらいかがでしょうか。30年後ぐらいに、ものすごく役に立ってくるかもです(30年もチラシを溜める人間は存在しないと思いますが、今どきならスキャンしてデジタル・アーカイブ化しといてもいいのかな)。
イオン・グループの新規開店でもこんなにあるわけで。
新規店舗案内 | ショッピングおすすめ情報 | AEON
あー、ちなみに「R25」や「週刊住宅情報」は、国立国会図書館では取ってあるので、他の公共施設でも、ひょっとしたら「フリーペーパー専門保存施設」というのが存在するのかもしれません。その場合は俺の無知を笑いながらコメント欄でコメントしてみてください。
以下のところの「和雑誌新聞」にチェックを入れ、「出版者」に「リクルート」って入れて検索するとわかります。
国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 一般検索)