現在進行形で「安い娯楽」を求めようという人には、本当に安い娯楽しか提供できない。だからロングテールが重要なんだ

いろいろなところを見ていてちょっと気になったので。
こんなところから。ネットゲームがどのようにダメになっていったのかについて。
島国大和のド畜生 俺の中の去年の10大ゲーム関係話 その2

(前略)
・ネットゲームがそろそろ勝負時
ネットゲームの市場争奪戦の、最初の幕は下りたかな、という印象。
ウルティマONLINE(UO)から始まる、ワールドシミュレーター系(月額課金システムの)は、ビジネスモデルとして破綻したと思ってる人が多いと思う。自分もある意味そう思ってる。
 
これはUOの最初の料金設定が間違っていた為(手塚治虫のアニメのダンピングに近いか?)必然的に発生した破綻。かつてコアゲーマーは月に数本(3万円前後)のゲームを買っていたのに、ネットゲームでは2千円前後でそれ以上の時間を拘束される。
そんな長時間遊ばれても、新鮮味を失わないゲームなど有り得はしないから、運営会社は常に不満をぶつけられつつ新たなクエストを作成しつづける事になる。はした金で。
結果、少しの改変で長時間持つゲームバランスにする為に、ありえぬ難易度のクエスト、超低確率のドロップアイテムが、日常となり、楽しむ為のゲームが苦役となっていく。
 
結局、単純なパラメータアップ&レアアイテム争奪+コミュニケーションシステムのゲームが、解り易さと保守の安さから生き残ってきた。
ユーザーにも開発者にも、全くメリットの無い状況が続いている。メーカーの一部は幸せそうだけどね。
 
そして第ニ幕開演。
(後略)

中古販売とかダンピングとかされるソフト=モノ販売に比べると、オンラインゲームのネット課金というのは定期的に金が入ってくるという意味でメーカーにとって悪くないシステムだと思ってたんですが、入ってくる金が減ってきたために、コストをかけないで長時間楽しめる(というより、苦しめる)ようなシステムの方向に走ってしまった、という話。ゲーム業界にはあまりくわしくないんですが、たとえば映画・漫画のような古典的名作をより安い価格で出す、という「低価格化」とは別の、システムとしての劣化がオンラインゲームに顕著になってきた、という感じなんでしょうか。月額○千円とかで映像を売っている商売があったとして、そこが「過去の蓄積物(すでに制作費の回収はほぼ終わっており、流通経費プラスアルファで利益が出るようなもの)」ではなく新作で営業しなければならないとしたら、多分ぼくの考えることは「1時間でできる話を2時間にして売る」というような方法ですかね(音楽だったら、無駄にリフが多いリミックス・ヴァージョン? 小説の場合は、ちょっとどんな方法をしたらいいかは不明です)。つまり、「安い娯楽をハイ・レベルで提供するためには、『過去の蓄積』に興味を持たせる、ロングテール商法を意識しないと首が絞まってくる(貧すりゃ鈍する、になってくる)」と。
で、別の業界ですが、こんな話もあったり。
POLAR BEAR BLOG: デジタルコンテンツは「売れる」のか?

今朝の日経新聞に、もう1つ面白い記事が掲載されていました。先日からスタートした「ねだんの力学」という特集の第3回目で、今日の記事では映像・音楽配信がテーマになっています:
ねだんの力学③ 映像・音楽配信 手ごわい無料の「常識」(日本経済新聞2006年1月12日朝刊、第11面)
記事の中にこんな一文があります:

「いくらなら映像配信サービスを利用しますか」。東映などが昨年9月設立した映像配信会社、シネマプラス(東京・中央)がサービス開始前に実施した調査結果を見て折坂哲郎社長は「軽い目まいを覚えた」。回答の大半は「0円」。経費が見えにくいネット流通の難しさを痛感した。

映像・音楽配信は市場の立ち上げ期ということに加え、業者間の競合もあり、各社はユーザーへの浸透を意識した価格(=低価格)を設定することを余儀なくされています。それに加えて、ユーザーの間に「デジタルコンテンツは無料であるべき」という意識があるのならば、業者はさらに価格を引き下げることを迫られるでしょう。どんどん下がる価格が、さらにユーザーの「デジタルコンテンツ=無料」という意識を煽るという悪循環に陥ることも考えられます。
(後略)

結局ユーザーが「安い娯楽」というか、「娯楽というのは無料で手に入るものだ」という考えがもう定着しているので、デジタル・コンテンツを提供している(しようとしている)側は、どうやったらビジネス・モデルを確立できるのかわからないのが問題です。本や映画は基本的に「無料」ということはないんですが、ネットで見られるテキストや映像に、利用者が金を払う、という商慣習はないわけですね(回線使用料、という概念はあったとしても)。
今までの莫大なコンテンツの蓄積を元に、それにぶらさがるような形で「既得権益」を維持しようとしてても、新しいコンテンツを作り、提供し、それによって金を得るシステムが早いところ確立されないと、もう、幹の部分で切り落とされてる葡萄棚のような感じというか、氷山にぶつかったタイタニックというか。
(2006年5月16日)
 
(追記)
再言及いただきました。
http://dochikushow.blog3.fc2.com/blog-entry-369.html

娯楽の提供方法としては、連載漫画が近いかと思っています。

なるほど、なのです。
(2006年5月18日)