お前らどうせ米下院議会の「慰安婦決議案」なんて見てないだろうから見せてやるぜ

見出しは演出です(いつもながらすみません)。
 
こんな報道があったり、
米下院委、「慰安婦」で対日決議採択 責任認知など要求

米下院委、「慰安婦」で対日決議採択 責任認知など要求

米下院国際関係委員会(ハイド委員長)は13日、第2次世界大戦中のいわゆる慰安婦問題に関する対日決議を採択した。法的な拘束力を伴わない決議形式だが、この問題について日本政府に対し、(1)歴史責任の認知(2)学校教育での指導(3)慰安婦問題はなかったとする議論への公式反論−などを求めている。
決議は民主党エバンス下院議員らが提出し、表現を一部修正のうえ採択された。慰安婦については「若い女性を性的苦役に就かせる目的で誘拐した」などと認定している。(ワシントン=山本秀也


【2006/09/14 大阪夕刊から】

(09/14 16:34)

こんな社説があったり、で、
10月16日付・読売社説(2) :[『慰安婦』決議案]「日本政府はきちんと反論せよ」

こんな問題の多い決議案を放置すれば、日米関係に禍根が残る。日本政府はきちんと反論すべきである。
米下院の国際関係委員会が、いわゆる従軍慰安婦問題で日本非難決議案を議決した。
決議案は、「20万人もの女性が性奴隷にされた」「家から拉致され……性的な強制労働につかされた」などと、裏付けのない記述が数多く含まれている。
慰安婦問題は1990年代初頭、一部全国紙が、戦時勤労動員制度の「女子挺身(ていしん)隊」を“慰安婦狩り”だったと、歴史を捏造(ねつぞう)して報道したことから、日韓間の外交問題に発展した。
当時、「慰安婦狩りに従事した」と名乗り出た日本人もいて、これも「強制連行」の根拠とされた。だが、この証言は作り話だった。90年代半ばには、学術レベルでは「強制連行」はなかったことで決着がついた問題だ。
にもかかわらず、96年の国連人権小委員会報告書や今回の決議案のように、事実誤認や悪意に満ちた日本批判が繰り返されるのは、日本政府が毅然(きぜん)と反論してこなかったためである。
米下院委員会で議決されたのは初めてだ。外務省は何をしていたのか。本会議上程阻止が最優先だが、二度と失態を繰り返さぬようにすべきだ。
決議案には、「慰安婦の悲劇は20世紀で最大の人身売買」など、歴史認識へのバランス感覚を欠いた表現も目立つ。
第2次大戦中、ドイツは占領地域で組織的な“女性狩り”をしていた。にもかかわらず、米議会がこれを一度も問題にしていないのは、なぜか。
占領下の日本には、占領軍将兵専用の慰安婦施設があった。もとは占領軍将兵の性暴力を恐れた日本側の主導でできたものだが、占領軍の命令で設置された施設もあった。決議案に賛成した議員たちは、こうした事例も精査したのか。
慰安婦問題が混乱する原因は、93年の河野洋平官房長官談話にある。
河野談話は、確かな1次資料もないまま、官憲による慰安婦の「強制連行」を認めたかのような叙述を含む内容になっている。以後、「日本が強制連行を認めた」と喧伝(けんでん)される材料に利用された。
河野談話について、安倍首相は国会答弁で、継承する意向を表明した。同時に、「狭義の意味での強制性は事実を裏付けるものはない」とも指摘した。
狭義の強制性、つまり、官憲による「強制連行」がなかったことは確かではないか。首相はこう言いたいのだろう。
事実誤認や歴史の“捏造”まで、「継承」する必要がないのは当然である。


(2006年10月16日1時39分 読売新聞)

なんで半年も前に議案になり、ひと月も前に決議されたものの話が今ごろ社説になるか疑問ですが、それよりもっと疑問なのは、どちらの記事にもその「決議案」へのリンクが貼ってないことでした。
ウィキペディアでは「関連テキストへのリンク」って当たり前なので、なかなか新聞記事のそういったスタイルには慣れません(匿名なのには慣れました)。
これでは、本当にそのようなことがあったのかどうかよくわかりません。
ちなみにぼくは、「ハイド氏が靖国に関して下院議長に出した書簡」も公式には見つかったり公開されたりしていないので、一部新聞のガセネタ「書簡の存在」は朝日新聞のガセネタかも、と思っていますが、みなさんはどうですか。(追記:「コメント」欄にもあるとおり、別の情報源も存在する、ということなので、「書簡の存在」については、その書簡のテキストが見当たらない限り、あったかなかったかわからない=ある可能性もそれなりに高い、という感じです。もう少しこの件に関しては発言を慎重にしたいと思います)
ということで、お待たせしました、以下のところにその「『慰安婦』決議案」というか、決議はあります。
United States House of Representatives, 109th Congress, 2nd Session: Homepage(米下院)
Committee on International Relations :: U.S. House of Representatives(国際関係委員会)
Committee on International Relations :: U.S. House of Representatives

Committee on International Relations :: U.S. House of Representatives
H. Res. 759, Expressing the sense of the House of Representatives that the Government of Japan should formally acknowledge and accept responsibility for its sexual enslavement of young women, known to the world as "comfort women", during its colonial occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II, and for other purposes

えー…まだない? そうですか、まぁ上の奴はぼくがまた資料を探すときのメモリンクなので。
さらにお待たせしました、ズバリ、ここにあります。
H. RES. 759 (Introduced-in-House)

H. RES. 759

Expressing the sense of the House of Representatives that the Government of Japan should formally acknowledge and accept responsibility for its sexual enslavement of young women, known to the world as “comfort women”, during its colonial occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II, and for other purposes.

あちらにはしばらく残っていると思うので、全文引用はしないことにします。
ただこれ、2006年の4月に提出された決議案のほう(だと思う)ので、実際に決議されたのはちょっと違うかも知れません。

Whereas historians conclude that as many as 200,000 women were enslaved, but very few of them survive today;
歴史学者は20万にも及ぶ女性が奴隷化され、今日でもそのほとんどが救済されてはそのほとんどが生存していない、と結論づけている)

とか、あまりよく分かっていない(慰安婦と挺身隊との区別がついていない)人がいるみたいです。
で、これは米政府の関係機関(議会)による、公式な決議なので、日本政府による正式な「間違い訂正」要求をすべきである、と、ぼく個人は考えています(人をぶん殴って大怪我させたが、殺しはしなかった、みたいなものであっても)。
日本が、というより現日本政府が嫌いな人たちは、こんな紹介をして、
アクティブミュージアム 女たちの戦争と平和資料館 - ニュース

米国の下院、国際関係委員会で「慰安婦」関連決議が採択されました。

この日採択された慰安婦決議案は、今年4月民主党レーン・エバンズ(イリノイ州)、共和党クリストファー・スミス(ニュージャジー州)議員が超党で共同提出したものです。委員会での決議案通過なので、これから審議が行われる本会議で通過するかの見通しはまだ不透明ですが、第1関門を通過したことは本当に喜ばしいことです!

こんなことも言ってますが、

米下院国際関係委員会は、明日小泉総理の靖国神社参拝など日本の過去事問題で造成された韓国、中国との関係悪化問題などを扱う聴聞会を開く予定であり、日本軍慰安婦問題も扱われると見られます。

まぁこの「聴聞会」については、以下のところの、
Past Hearings and Meetings (Full Committee)
「9/14/2006」を開いていくと、pdfファイルがいろいろ見られると思います。
この人とかかな。
Ms. Mindy Kotler(pdfファイル)

Legislation similar to that in Germany that restricts hate speech, denial of wartime misdeeds, and protects those who try to educate about the war are important. For example, ensuring police protection of the comfort women museum in Tokyo would be a powerful symbol. This museum, the Woman’s Active Museum on War and Peace (http://www.wam-peace.org/), receives daily threats. Also, removing the uyoku trucks and people from the grounds and vicinity of the Yasukuni Shrine would be another major step.

まぁあんまりよく見てません。
the Woman’s Active Museum on War and Peace(アクティブミュージアム 女たちの戦争と平和資料館)」と深い関係の人なのかな。日本語が読める人なのかどうかも分からないです。
日本人はこの人が出ているみたいですが、
Ms. Yuki Tatsumi(pdfファイル)
靖国」のことに言及しているとはいえ、さほど左右イデオロギーに偏った印象も受けず。
この人と同じ人なのかなぁ。
ポリシープロフェッショナル・メンバー紹介

辰巳 由紀 Tatsumi, Yuki
(ヘンリー・L・スティムソン・センター リサーチ・フェロー)
国際基督教大学教養学部社会科学科卒。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)において修士号取得(国際関係論)後、在米国日本大使館専門調査員(政務班)、CSIS戦略国際問題研究所・国際安全保障部・研究員を経て、2004年7月より現職。専門は、日本の外交・安全保障政策、北東アジア安全保障、日米安保、米国の北東アジア政策。

また例によって、自分の意図したより長いテキストになってしまいましたが、とりあえず、
H. RES. 759 (Introduced-in-House)(『慰安婦』決議案)」読んどけ。
ということで。