歌って女性にモテモテのプレスリーが若大将みたいな『監獄ロック』

監獄ロック - goo 映画

"I guess they figure we got color."
"I considered. I'm on. ...What do you think's prettier? Red or blue?"
"Red or blue what?"
"Color for a convertible."
(「カラー放送だ」
「じゃ、やろう。赤と青のどっちが?」
「何の話だ?」
「オープンカーの色さ」)

 『お楽しみはこれからだ』(和田誠文藝春秋)を読みながら、映画についてこの本のような語りかたをするのもいいなと思ったので、少しだけ真似してやってみることにした。
 元のテキストは、本になった状態で「40字×20行」なんですが、それでは今の時代では足りないかもしれない。というのは、映画に関する情報量の問題があって、和田さんが最初に書いていた時はまだビデオも出はじめの時代で、DVDもグーグル先生もなかった環境の中、映画の「名セリフ」を記憶を元に書いてるんですね。今だと脚注部分はウィキペディアにおまかせするにしても、「洋画のセリフ」ということになると、誰でも原典チェックができる(しかも英語で)環境では、少しだけ慎重にならざるを得ない*1。当然字数(行数)も多くなるので、一応40字×30行ぐらいをめやすにしてみます。
 ということで、今回は『監獄ロック』というプレスリーの映画から。人を殴り殺して刑務所に入ったビンス・エバレット(プレスリー)は、同室の元フォーク・シンガー(ミッキー・ショーネシーという役者なんだけど、あまりくわしく知らない)の指導でギターを習う。彼の誘いを受けてテレビに出ることにしたエルヴィスが言うセリフが冒頭のもの。獄中からの放送なんて、今ではちょっと信じられないんですが、まぁそういうことのあった時代だったんでしょうな。こういうのにはもう、嘘とか本当とかの判断がつかない。
 結局プレスリーはステキボイスでまず音楽業界で人気者になり、白いオープンカーを買うことになります。次には映画スターになって、犬の散歩役にまで落ちぶれる監獄の相棒。ところが、悲劇(事故)が主人公に突然襲いかかり…。
 今の目で見て驚くと同時に気になることの一つは、エルヴィスの音楽の背後に感じられる黒っぽさと、映画にほぼまったく出てこない黒い人の存在で、TVのショーのための演出、という形で紹介される「監獄ロック」のダンス・シーンは、ちょっとテンポをのろくしたマイケル・ジャクソンという風情ですが、その群舞に、アングロサクソンやラテンっぽい人はいても、東洋の人やアフリカの人はうまく見つけられませんでした。忘れていたけど、確かに昔の映画ってそんな感じだったなぁ。ぼくはチャック・ベリーの音楽を聴いて、実際の彼の顔をあとで見て、チャック・ベリーがアフリカ系の人だったというのにびっくりした記憶があります。ロックは白人がやるもので、黒人はリズム&ブルースとかジャズとかをやるもんだと思っていたよ。
 まぁこの映画の中の話は割と英雄伝説に近いものがあるので、21世紀風のリメイクも可能でしょうが、その場合はプレスリーにちょっと賭けてみる顧問弁護士あたりアフリカン・アメリカンな人になるんじゃないかと思いました。
 

*1:間違っても、コメント欄をオープンにしておくと、誰かが指摘してくれる、という安易な考え。