『アトムの命題 手塚治虫と戦後まんがの主題』

★『アトムの命題 手塚治虫と戦後まんがの主題』(大塚英志/徳間書店/1900円)【→bk1】【→amazon
傷つく心と、傷つかない身体。なぜ手塚治虫はアトムを成長させなかったのか。
【感想】デビュー以前に描かれた手塚治虫の漫画を、記号的あるいはそのテーマ的な部分から考察して、『アトム大使』が生まれるまでについてを語る、まぁ大塚本としか言いようがない手塚治虫論。評論する人の自分語り(俺はこの本についてこう思った)は、どんな本でもあるので仕方ないんですが、これは割とそれは少ないようにもむしろ思えたぐらい。アトムは別に公民権運動(人種差別反対運動)と関連して語られる必要は特にないとか、デビュー以前に描かれた長編のうちの一つ『勝利の日まで』に見られる手塚的記号の進歩についてとか、いろいろ刺激的ステキテキストではありました。大塚英志サブカル系テキストは、ただボーッと読んでいると主題が分からなくなってしまうのが難儀と言えば難儀です。分析力は充分以上にあると思うので、あとは説得力が欲しいな、と思う。多分それだけ自分自身に真摯なんだろうなぁ。自分を大きく見せるハッタリ的説得力ですよ、必要なのはやはり。