『音楽をまとう若者』『チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌』『漢文脈と近代日本 もう一つのことばの世界』

本日の読みたい本・おすすめ版(2007年2月あたり)。

音楽をまとう若者

音楽をまとう若者

★『音楽をまとう若者』(小泉恭子/著/勁草書房/2,625円)【→bk1】【→amazon
高校生が「好きな音楽」について語る時、必ずしも本当に好きな音楽を語っているとは限らない。授業、部活動、コンテストやライブなど、場所や状況に応じて「好み」を使い分けている。三層構造をなすその使い分けを著者は、ホンネに近い順から「パーソナル・ミュージック」「コモン・ミュージック」「スタンダード」と名づけた。「パーソナル・ミュージック」の開陳に比較的抵抗感のない男子に比べ、女子は個人的嗜好をなかなか明かさないといった、ジェンダーによる相違も存在する。本書は、日本の高校生九六名を対象に、教室からコスプレ集会までさまざまな場における音楽行動を追ったフィールドワークをとおし、こうした使い分けの方法や理由を体系化したものである。
チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌

チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌

★『チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌』(メアリー・マイシオ/著 中尾ゆかり/訳/日本放送出版協会/2,310円)【→bk1】【→amazon
放射能に汚染されて巨大化したゴキブリやネズミが、荒廃した土地をはいずり回る―それはSFの中だけの話だ。チェルノブイリ原子力発電所事故から20年、人体には危険すぎる周辺地域は、動物が棲息する森に変わっていた。しかしその土地は、いまなお汚染されているのだ。ウクライナアメリカ人ジャーナリストが、汚染におびえつつも立ち入り制限区域に入り取材を重ねた、決死のルポルタージュ★『漢文脈と近代日本 もう一つのことばの世界』(斎藤希史/著/日本放送出版協会/1,019円)【→bk1】【→amazon
漢文は、言文一致以降すたれてしまったのか、それとも日本文化の基盤として生き続けているのか?本書は漢文の文体にのみ着目した従来の議論を退け、思考様式や感覚を含めた知的世界の全体像を描き出す。学問と治世を志向する漢文特有の思考の型は、幕末の志士や近代知識人の自意識を育んだ。一方、文明開花の実用主義により漢文は機能的な訓読文に姿を変え、「政治=公」から切り離された「文学=私」を形成する。近代にドラスティックに再編された漢文脈を辿る意欲作。