ひさびさに劣化ウラン弾調査団の話題

 googleアラートで毎日1回「劣化ウラン」に関するニュースがあったかどうかのメールが来るようにしてあるんですが、最近は特に言及するほどのことのないような記事が多かったので、これはちょっと珍しかった。
信濃毎日新聞[信毎web] 劣化ウラン弾と白血病 因果関係を本格調査へ

劣化ウラン弾白血病 因果関係を本格調査へ
 
6月13日(水)

 旧ソ連チェルノブイリ原発事故被災地ベラルーシで医療支援の実績を重ねてきたNPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF・松本市)と信大医学部(同市)の小児科医らが、イラク南部で米英軍が使用した劣化ウラン弾と、白血病の因果関係について本格的な調査に乗り出すことになった。早ければ19日にイラクの隣国クウェートを訪ね、イラク南部バスラにある病院の医師から白血病の診断や治療、国内の状況などを聞く会合を持つ予定だ。
 1991年の湾岸戦争後、現地では白血病の増加と劣化ウラン弾の影響が指摘されているが、因果関係は明らかになっていない。ただ、イラク南部では湾岸戦争に続き、2003年に始まったイラク戦争でも米英軍が大量の劣化ウラン弾を使用。バスラ母子病院の医師の調査によると、白血病など小児悪性疾患の子ども(15歳未満)は、90年の19人から03年に183人へと急増した。先天性の障害(奇形)が増加しているとの調査結果もある。
 JCFは、2004年に白血病やがんのイラクの子どもたちへの支援を開始。当初から劣化ウラン弾白血病の因果関係の調査も計画していた。今回、チェルノブイリ支援にも一緒に当たった信大医学部の小池健一教授(56)ら小児白血病治療専門の医療関係者の協力を得て実現の見通しが立った。
 調査の第一歩となるクウェートでの会合は、JCF事務局長の神谷さだ子さん(54)や小池教授ら信大の医師2人、バスラにある2病院の医師たちが出席する予定。だが、イラクの医師たちが出国できるかは不透明な部分があり、延期になる可能性もあるという。
 劣化ウラン弾白血病の因果関係は、新生児の遺伝子異常を解析することで調べる計画。調査の前提として欠かせない正確な診断や、治療技術の向上にも現地の状況に合わせて取り組む。
 「まずは劣化ウラン弾との関係を指摘する医師たちにその根拠や、診断や治療の現状などを聞きたい。診断など可能な部分から改善し、子どもたちに役立てたい」と小池教授。バスラの医師を留学生として信大に迎え、ともに調査を進める計画もある。
 神谷さんは「科学的な証明を行うとともに効果的な支援につなげたい。信大の医師たちとの会合が、イラクの医師に刺激となればいい」と話している。

 「白血病など小児悪性疾患の子ども」の増加に関するぼくの意見は、以下の通りです。
愛・蔵太の少し調べて書く日記 - イラクの子どもたちの白血病(小児白血病)の増加について

バスラの「15歳未満人口総数」の増加は、とても自然増とは思えないぐらいの増えかたなので、小児白血病の子供の増加は、「劣化ウラン弾」の影響だけではなく、「ウィルス」や「化学物質」の影響も同程度に考慮に入れないといけないでしょう。俺個人は、ウィルス・化学物質の影響が主だと思いますが。
 
いずれにしてもともかく、充分な治療が受けられないという、これはイラクの子供たちに限らない、全ての難病な子供たちに対して想像力を働かせなくては、です。

 今回の「NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金」による調査は、「新生児の遺伝子異常を解析することで調べる」ということなので、ものすごく興味があります。放射線による遺伝子破壊というのは、ウィルス・化学物質とは異なるものがあるわけで。
近藤宗平:微量放射線被ばくに対する生体防衛機能の働き

自然リスクの主役は活性酸素,太陽紫外線,熱エネルギーである。化学物質も多様なDNA損傷を誘発する。しかし,DNAの2本鎖切断(図7)は活性酸素や化学物質では誘発されない。DNA2本鎖切断は電離放射線特有の損傷であり,電離放射線を特別に怖がるべき科学的根拠にされ,2本鎖切断を高密度で誘発するα線のリスクをX線やγ線より20倍怖がりすぎてもよいという考えの根拠にされてきた。しかし,次節に述べる証拠によって,DNA2本鎖切断が増殖中の細胞に自然に多発することが最近発見された。

近藤宗平:放射線は少し浴びたほうが健康によい」というお題も気になりますが。
 とはいえ、重金属としての劣化ウランの特性も、遺伝子に損傷を与える、ということがあるのは、以下のところを御覧ください。
劣化ウラン弾の話その2

ヒトの肝癌細胞系培養細胞であるHepG2を用いて、軍で使用される代表的な重金属である劣化ウランタングステン合金の、遺伝子発現に関する影響を調べたものです。要旨のみです。内容は以下の通り。
(中略)
注目すべきは、タングステン合金でも遺伝子の発現に影響があるという点です。

 調査結果が発表されたらまた言及してみたいことのメモとしておきます。
日本チェルノブイリ連帯基金-Japan Chernobyl Foundation-