ネットで事件報道について何か素人が言いたいなら「後出し」ぐらいでちょうどいい
一応見出しは演出です。
こんなニュースがまずありまして、
→電車内でマナー悪い高校生たたく、神奈川県警巡査長を逮捕(読売新聞)
電車内でマナー悪い高校生たたく、神奈川県警巡査長を逮捕
電車マナーの悪い高校生をたたいてけがをさせたとして、神奈川県警旭署は4日、同県警大和署刑事1課の巡査長小磯慶洋容疑者(33)を傷害の現行犯で逮捕した。
県警は5日朝、逃亡の恐れがないなどとして、小磯容疑者を釈放した。今後、在宅で調べる。
調べによると、小磯容疑者は4日午後10時50分ごろ、横浜市旭区鶴ヶ峰の相鉄線鶴ヶ峰駅の改札口を出たところで、定時制高校2年の男子生徒(16)の顔を平手でたたいて軽いけがをさせた。男子生徒は電車内で、拳銃型ライター(全長36センチ)を乗客に向けるなどしており、小磯容疑者は一緒に下車後、「あんなものでいたずらしてはだめだ」と言ってライターを取り上げてたたいた。
通りかかった人が110番通報し、旭署員が取り押さえた。小磯容疑者は同僚と飲酒して帰宅途中で、「いたずらを注意しようと思った。申し訳ないことをした」と供述している。
増子吉勇・県警監察官室長は「事実関係を厳正に捜査したい」と話している。(2007年9月5日13時14分 読売新聞)
こんなところで取り上げられて、
→痛いニュース(ノ∀`):高校生、電車内で拳銃型ライターを乗客に向けて遊ぶ→注意した巡査長、高校生を平手打ちし逮捕される…横浜
ブックマークはこんな感じで、
→はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):高校生、電車内で拳銃型ライターを乗客に向けて遊ぶ→注意した巡査長、高校生を平手打ちし逮捕される…横浜(→魚拓)
2007年09月05日 cazmori 2ch, news 平手はだめだけどそれにしたって逮捕はないだろう。青字がDQNすぎる。 16
それでこんなことにもなっていたところが、
→時事ドットコム:平手打ち警官に支持多数=電話、メール2千件超す−神奈川県警
時事ドットコム:平手打ち警官に支持多数=電話、メール2千件超す−神奈川県警
電車内で騒いでいた男子高校生(16)を平手打ちした神奈川県警の巡査長(33)が傷害の現行犯で逮捕された事件で、県警本部などに巡査長の行為を「よくやった」などと支持する電話やメールが6日午後4時現在、2000件以上寄せられた。県警監察官室は「巡査長は明らかにやり過ぎだった」として、思わぬ反響に困惑している。
監察官室によると、電話やメールは「よくやったというべきだ」「警官の行動を支持する」「注意できる大人がいない中、警察官の行動は安心できる」「寛大な処置をお願いします」など、ほとんどが巡査長の行為を肯定する内容だった。
これに対し、「厳しく処分しろ」など批判的な内容は4件しかなかったという。
監察官室は「普段、電車内のマナーの悪さに不快感を抱いている人が敏感に反応したようだ」と分析した上で、「警察官として殴る行為は肯定できない。詳しい経緯も捜査中で、巡査長を一方的に英雄視する声には戸惑いを感じる」としている。
こんな記事が出て、
→「注意でなく因縁つけ」高校生殴打、神奈川県警が追加会見(読売新聞)
「注意でなく因縁つけ」高校生殴打、神奈川県警が追加会見
電車マナーの悪い男子高校生(16)を殴ったとして現行犯逮捕された神奈川県警大和署の巡査長(33)(釈放)を擁護する意見が、県内外から県警に約1000件寄せられ、県警は6日、事件についての説明が足りなかったと異例の追加の記者会見を行った。
県警は「寄せられた意見は、『高校生が言うことを聞かないから殴った』という誤解に基づいている」と困惑している。
意見のほとんどは「殴ったのは悪いが逮捕する必要はない」「マナーの悪い若者を注意できなくなる」「厳しい処分をしないで」などと巡査長を擁護する内容。数件だけ「暴力は絶対にいけない」と非難する意見があった。
再会見は、巡査長が逮捕された翌日の5日に続くもので、西村昇監察官室長が行った。西村室長は「高校生は駅員らに注意を受けて素直に従っていた。巡査長はいきなり高校生の髪の毛をつかんで殴った」と説明。高校生の母親からも「事実関係が間違って伝えられている」と苦情が寄せられているとした。
県警によると、高校生は4日夜、横浜市旭区の相鉄線二俣川駅で、普通電車の中からホームに向けて拳銃型のライターを撃つまねをした。車掌らが注意し、高校生は「分かりました」と従い、ライターをカバンにしまった。隣の車両からその様子を見ていた巡査長は、高校生が友人と談笑しているのを「反省していない」と思い込み、次の駅で降りた高校生を呼び止め、髪の毛とカバンをいきなりつかみ、「カバンの中のものを出せ」と顔を殴った。この間、高校生は反論しないで黙っていた。
県警は「巡査長の行為は警察官として許されない行為。注意したというより、因縁をつけて殴った状況で、巡査長の行動を正当化する見方に戸惑いを感じる」としている。(2007年9月6日23時33分 読売新聞)
また「痛いニュース(ノ∀`)」で話題になって、
→痛いニュース(ノ∀`):「拳銃型ライター、高校生は駅員の注意で素直にしまっていた。巡査長はいきなり殴った」…神奈川県警が会見で訂正
ブックマークはこんな感じ。
→はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):「拳銃型ライター、高校生は駅員の注意で素直にしまっていた。巡査長はいきなり殴った」…神奈川県警が会見で訂正
2007年09月07日 KJ-monasouken 後の報道でも逮捕はちょっと大げさかも、と思ったが、高校生と警察官のどちらが社会的に重い責任を背負わされる立場かと言うと答えは明らかなわけで。/最初の報道見れば釣られるよな、誰でも。
2007年09月07日 gigeki 痛いニュース, これはひどい 最初とまったく別の話になっているのだが。どっちがホントか分からんってのがたまらん。
2007年09月07日 hidematu 2ch, literacy, media メディアリテラシーを教えてくれる、ある意味良い事件。
2007年09月07日 adoratio 説明不足どころか元ニュースに嘘が含まれてたことになるな
ちょっと「メディアリテラシー」について考える人が増えた気がするのがうれしいところ。
ただ、「新聞やマスコミ報道(だけ)を情報源に、ネットで何かを言う」という人の数が減るようには思えない(同じような人間が、また別の事件でも同じように言うと思う)のが残念なところ。
ぼくのところでは、基本的に「警察の発表」だけで、当事者の直接の主張が述べられていないものは、原則的に扱わないことにしています(複数の新聞が違ったことを言っている場合は扱う場合があります)。
あと、英語・日本語テキストで一次情報に当たれないような報道(中国・韓国その他の国のニュースとか)も、扱わないようにしています。
さらに、報道があってからある程度の時間をおいて、何かを言うことにしています。
今回の「神奈川県警が会見で訂正」という報道も、高校生・巡査長の直接の主張が伝わって来ないと、実はあまり言及したくないのですが、まぁとりあえず。
で、こんな意見もあるわけですが、
→ゲームの為なら女房も泣かす - 拳銃型ライターと高校生と酔っ払い警察官
ブクマコメントではおおむね今回の発表が真実であるかのように受け取られているけど、ダンボールの時もこんな感じだったっけ?なんで常に後に発表された方を鵜呑みにできるんだろう。しかもなんか「俺はわかってた。釣られた奴ら乙」って感じだし。
後出しが強いのはじゃんけんだけでいいよ。
「ダンボール肉まん」の場合と今回が似ているのは、「中国ならあり得ること」「高校生ならあり得ること」という既成概念が成り立っていて、初期報道に対する判断が鈍った人が多い、という点でしょうか。
しかしこのあとさらに「当事者による別の証言」が出て来るかもしれないのが、非・当事者である人間にとっては面白いところでもあります。出て来るかなぁ。
ちなみにぼくは、第一報道の「男子生徒は電車内で、拳銃型ライター(全長36センチ)を乗客に向けるなどしており」と、その次の「普通電車の中からホームに向けて拳銃型のライターを撃つまねをした」という報道の違いが気になります。拳銃型ライターが向けられたのは「乗客」なのか「ホーム」なのか。これはその場に居合わせた人じゃないと多分わからない事実だと思う(ぼくは、ホームと乗客の両方に向けたんじゃないかと思っています)。
(追記)
報道記事の「後出し」は困りものですが、誤報を完全に回避する、ということは不可能なので、意図してやったものでない限りはそんなに厳しく見たり考えたりしないことにしています。
(追記)
関係者の証言を集めたと思われる、以下のような記事も。
→J-CAST ニュース : 「拳銃」向けられた人いない! 高校生ビンタ事件の真相
「拳銃」向けられた人いない! 高校生ビンタ事件の真相
2007/9/ 7
電車内で悪ふざけした高校生を平手打ちして逮捕された神奈川県警大和署の巡査長について、同県警は2007年9月6日夜、担当記者を集めて当初の説明を変える異例の釈明を行った。巡査長は、高校生に注意せず、いきなり捕まえて行為に及んだというのだ。さらに、その後のJ-CASTニュースの取材で、車内はガラガラで、「拳銃」を向けられた人はいなかったことが判明した。
巡査長は注意せずいきなり捕まえた
停車していた電車は、こんな乗客の多い状況ではなかったようだ(写真はイメージ) 小磯慶洋巡査長(33)支持の声が上がる中で、県警が説明を変えたという突然の各紙報道は、ネット上の世論を混乱させた。ヤフーの意識調査でも、「回答なし」とする人が多くなっており、ミクシィの日記では、「『正義感』からじゃなく、『酔った勢い』だったんだね」「口論あろうがなかろうが、しばいて正解ですよ」と意見が分かれるようになっている。
各紙によると、相鉄本線二俣川駅で停車中の普通電車内で拳銃型ライターを持って悪ふざけをしていた男子高校2年生(16)は、小磯巡査長ではなく、車掌から注意された。すると、高校生は、「分かりました」と従い、ライターをカバンにしまったという。小磯巡査長は、隣の車両からこの様子を見ていたが、車掌が去った後に高校生が友人と談笑しているのをみて、「反省していない」と思い込んだ。
高校生が次の鶴ヶ峰駅で降り、改札を出て階段を下ると、小磯巡査長は、高校生の髪の毛とカバンをいきなりつかみながら路上に連れ出し、「カバンの中のものを出せ」と言って顔を3回平手打ちにした。高校生は、「怖かったので口答えもしなかった」という。神奈川県警では、小磯巡査長は「注意したというより、因縁をつけて殴った状況」としている。
県警による当初の説明では、小磯巡査長は高校生を注意した、としていた。しかし、その後の9月6日、高校生の母親(36)から、「事実関係が間違って伝えられている」と苦情が寄せられていたという。
県警は、なぜ説明を変えたのか。J-CASTニュースの取材に対し、広報県民課の報道係は9月7日、「(事実関係を)訂正したということではありません。『口論した』と報道する社があるなど、事実がきちんと伝わっていない部分がありました。また、関係者に話を聞くなど捜査をしていく中で、事実関係が分かってきたということです。(当初の説明で)誤解があるといけないので、再度説明しました」と話した。
車内には友人のほかだれもいなかった
高校生に注意したのと、最初から暴力を振るったのではまるで違う。ところで、本当に、暴力を振るうほどの迷惑行為が電車内であったのだろうか。
この点に関して、J-CASTニュースでは、相鉄本社に取材して、注意した車掌の証言を求めた。すると、高校生が車内にいた当時の意外な状況が分かってきた。同社の広報担当者によると、概略は次の通りだ。
高校生は、友人と2人で二俣川駅に停車中の電車に駆け込んできた。そして、友人が座席に寝転がり、高校生は扉付近でホームに向けて例の拳銃型ライターを構えていた。そこに、たまたま、車内巡回中の車掌が通りがかり、「止めて下さい」と声をかけた。高校生は、「すいませんでした」と車掌に謝り、ライターをバックにしまい、友人も起き上がった。特に口論などはなかったという。
火曜日の午後10時半ごろだったが、横浜駅方向に向かう上り線であったため、乗客は少なく、車掌の証言によると、高校生がいた車両は誰もいなかった。電車は急行待ちをしていたが、ホームにもほとんど人がいなかったという。
相鉄の広報担当者は、J-CASTニュースに対し、「拳銃型ライターを向けられて困った人がホームにいたわけでもないようです。しかし、拳銃のようなものを持っていたので、当然車掌は注意しました」と話す。隣の車両にいたという小磯巡査長については、車掌は知らないという。
小磯巡査長は、乗客に迷惑をかけたことに憤ったというよりも、高校生が反省していないように見え、その後を追って短絡的につかみかかったらしい。
このような点は、高校生が乗客に拳銃型ライターを向けていたという報道とも違う。前出の広報県民課報道係は、J-CASTニュースに対し、「『身内をかばっている』との声もあるようだが、当初の説明でも巡査長に甘いことは話していない。巡査長がウソをついていたという話でもない」と釈明している。
どうも「男子生徒は電車内で、拳銃型ライター(全長36センチ)を乗客に向けるなどしており」とはまったく異なる状況の証言が出てきた様子。
これは以下の日記に続きます。
→二俣川駅で拳銃型ライターを持っていた高校生の乗っていた車両は本当に「誰もいなかった」のか