「世の中の人間は、売れているものしか買わない」なんて、ただの見出しの演出です

 見出しは演出です。
 
 以下のコメント欄に関しては、もう少し誠意を持って応えないといけないと思うので、メモ。
音楽・インディーズ業界を中心に売れる・売れないについて(コメント欄)

山下 『インディーズの売り上げに関してご存知烏賀陽弘道氏のテキストがありました(http://www.ohmynews.co.jp/news/20070911/14986)。この「エス・アイ・ピー」のデータそのものはぼくにはちょっと探せませんでしたが、複数の場所で2001年の記述は見つかります(たとえばhttp://pro.tok2.com/~ohho/nikki/oh0202-2.html#020226)。これらを鵜呑みにすれば、インディーズ売り上げは2000年→2002年で約147億→約185億→264億と推移したわけですが、愛蔵太さんが色々言っているもとの「初回のオーダー数が激減」というのはこの2000年→2002年間の上昇を超えた現象なのでしょうか。
無論、これらのテキストを読んでわかるのは「これだけではなんとも言えない」ということだけです。インディーズとメジャーの細かい売り上げ分布やタイトル(?)数の推移、景気や他の商品流行との関連を見なければなにも判らないのですが、わざわざ愛蔵太さんが調査して得た、「世の中の人間は売れてるものしか買わない」とか「なんか選ぶ基準が選択肢多すぎて選べなくなっているかも」と分析するだけの根拠は何でしたか。面白そうなので教えてほしいところです。まさか調べてないわけではないですよね? 万一そうなら「知りもしないことを知ったと思って、知ってもいないもの(わら人形)を分析して憂えている」ことになってしまいますが。愛蔵太さんがわら人形分析者とすればバカに見えるなあ、とぼくには思えたのでした。』
lovelovedog 『なるほど、なかなか興味深いデータですね。「市場調査会社「エス・アイ・ピー」のデータ」を直接に見てみないと何とも言えませんが、あれこれ見て違うことをまた言うかもしれません』
山下 『「インディーズ市場は伸びているのでは」という「コメント欄の指摘」ってどれですか。 まさかぼくのじゃないですよね? ぼくは(上記テキストを信じた場合)少なくとも2003〜7年で売り上げがどうなったか判らない限り「伸びた」とも「落ちた」とも言えないと思う立場です、念のため。
それと、愛蔵太さんはコメント者に質問することも多かった気がしますが、質問される立場は拒絶するんでしょうか。』

 ということで、以下のテキストなど。
「100年に一度の革命」〜烏賀陽弘道コラム(9) - OhmyNews:オーマイニュース “市民みんなが記者だ”

 そしてもうひとつ、インディーズである。これもデータを探すのに非常に苦労した。インディーズとは、つまり、「日本レコード協会には加盟していないが、 CDを流通に乗せて販売している人、あるいは企業すべて」であり、その数は刻一刻、増減し、しかもゲリラ的に神出鬼没なので、全貌(ぜんぼう)をとらえるのは容易ではないのだ。
 私がたどり着いたのは、市場調査会社「エス・アイ・ピー」のデータだった。それによると、2002年のインディーズの市場規模は約264億円。しかも前年比35%増と、メジャー会社の退潮とはまったく逆の躍進を遂げていた。
 「インディーズ」と言うと、どこか脆弱(ぜいじゃく)な印象があるが、同年の日本レコード協会加盟者が出したオーディオレコード総生産金額は4438億円なので、その5.9%、「邦楽」だけに限定すれば、約8%にも該当する。

OHHO日記 2002年2月16日(土)〜2月28日(木)

●インディーズ系CD販売、25%増。
 これまた『日本経済新聞』さんの情報だけど(2月25日付朝刊)、インディーズのレコード会社のCD売上が対前年比25%も伸びたという。
 〈インディーズ(独立系)のレコード会社のCD販売金額が二〇〇一年に前年比二五・八%増の百八十四億七千四百万円に達したことが、日本ビクター系の市場調査会社エス・アイ・ピー(東京・港)の調べで分かった。
 でも、これってすごいことなのだろうか?
 〈一方、日本レコード協会に加盟する大手レコード会社の販売金額は同三・七%減の四千九百四十六億八千二百万円で三年連続のマイナスとなった。消費者の好みが多様化し、インディーズのシェアが高まっているもようだ。〉
 と結論づけているが、計算するとインディーズの割合って、大手レコードの3%しかないのね。
 うーん、あれだけ、FM802さんでバンバンインディーズの曲をかけてくれているのに、「これだけなのか」と空を仰ぎたくなる
 そして、このインディーズの中には、去年『天体観測』でブレイクしたバンプ・オブ・チキンさんのアルバムをインディーズに含まれているのではないの? この前発売された『ジュピター』がインディーズの売上で上がらなくなると、果たして来年も25%の伸びを示せるのだろうか。

 この「エス・アイ・ピー」の元データがちょっとネットでは見当たらないので、二次情報でしかないのですが、2001・2002年と、インディーズ業界の「CD販売金額」は伸びている様子(具体的には184.74億円→264億円)。数字的にはともかくとして、約4500億円の市場の中での伸びとして考えると、「世の中の人間は、売れているものしか買わない」というのは間違った情報だということになります。
 ただし、現在(2006・2007年)はどうなっているか、というデータが見当たらないので、インディーズの現在の販売状況については、うまく語ることができません。
 音楽業界に関してはさっぱりなんですが、出版業界の「書籍」に限定すると、
1・書籍の刊行点数は毎年増えている(http://www.1book.co.jp/000737.htmlとか)
2・売上げ額は頭打ち(http://www.ajpea.or.jp/statistics/statistics.htmlとか)
3・売上げにおける「ベストセラー」の占める比率が大きくなっている
 ちょっと「3」に関しては、くわしいデータがあるかないか、またあったとして真相がどうなのかは不明なことは不明なんですが、最近はある程度の大きさ(広さ)の書店以外では、店に並んでいる本がどこも似たようなものになっている気がする、という、個人的な気分は、単なる「気分」なのかそれ以上のものなのか気になるところでした。
 「人力検索はてな」ではこんなのもありましたが、
書籍の売り上げについて教えてください。 最近の統計で、ある一定期間における本全体の売り上げにおけるベストセラーの売り上げの割合を知りたいと思っています。 たとえば.. - 人力検索はてな

書籍の売り上げについて教えてください。
最近の統計で、ある一定期間における本全体の売り上げにおけるベストセラーの売り上げの割合を知りたいと思っています。
たとえば、2000年において書籍全体の売り上げは何億円で、そのうちベストセラーは何億円である、というような統計です。割合を知りたいので、順位だけしかわからないランキングの類は必要ありません。「ベストセラー」の定義は難しいですが、なんらかの客観的な基準があれば特にこだわりません。単位は売上高、あるいは売り上げ冊数のどちらでもかまいません。数字は、特定の一般書店(オンライン書店・専門書店は除く)における数字、書店業界全体の数字、出版・取次ぎ業界全体における数字のいずれかであるとよいです。特定の出版社だけの数字にもとづくものは偏りがありそうですので、対象外です。
よろしくおねがいします。

 どうもちゃんとしたデータは見当たらない様子。

ベストセラーに関しては、2003年にミリオンセラーが2点だったのに対し、2004年は、7点に増えました。書籍の販売額は、前年比4.1%ということですので、ミリオンセラー1冊に1%弱の寄与率があると考えられます。

 一応、「2006年のベストセラー」が何だったのか、ということは、リストはあちこちにあるんですが、たとえば以下のところなど。
2006年 年間ベストセラー発表(TOHAN Web Site)
 「比率」を出すのは難しいみたいであります。
 あとは、「本の平均単価」の推移とかをどこかで見られれば、「全体の部数が落ちている(売れない本は売れない)→しょうがないので本の値段を上げる」みたいな流れも見えて来そうなんですが、それはまだ未調査。ぼくの買っている本がもっぱらSF・ミステリーという趣味の、「本の値段なんかあんまり考えないで買う」という類の本なので何とも言えないんですが、文庫本で1000円で買えない本がぼちぼちある(そんなに毎度あるわけではない)という状況には危機感を覚えます。まぁ国産ミステリーはともかく、翻訳ミステリー・SFでベストセラーになった本があるかどうかと聞かれると具体的に思いつかないので、こういう状況も仕方ないんだろうな、とも思いますが。