なんで漫画の編集者は自分の担当漫画を公に知らせないのか

 以下のテキストから。
ラノ漫―ラノベのマンガを本気で作る編集者の雑記― - 奥付に載らない仕事・マンガ編集者の世界

現在、小学館エンターブレインの発行するマンガ単行本の奥付には、担当編集者の名前が記載されるようになっています。これが一般化して編集者の名前が見えるようになれば「あの人が立ち上げた作品なら、ちょっと読んでみようか」という流れも出てくるかと思うのですが、今のところはそのような兆しはありません。
編集者は作家に負けず劣らずユニークな方が多いので、もっと表に出て話をしてくれたら面白いのになあと思う今日このごろです。

 まぁ、歴史的な伝統、みたいなものもあるんでしょうが、会社組織というチームプレイの中で埋没して「いい仕事」をする、というのがサラリーマンの基本体質なわけで。別に、いい仕事をしてると、まず社内の人間に知られ、同業者に知られ、漫画家には知られますが、たいていは読者には知られないですな。作家・作品と編集者というのは、時の運というかめぐり合わせというものもあるので、ある漫画家と組んで大ヒット作を出した編集者が、別の漫画家と組んで同じようなものが出せるとも限らない。逆に、今までそこそこのアンケート・レベルが取れていた作家が、編集者によって大化けすることもある。こればかりは計算でできるものではありません。要するに「あの作品は俺のヒット作だ」って、編集者は言ってはいけないものだ、みたいな考えでしょうか。ただ、最近は「雑誌」ではなく「コミックス(単行本)」による売上げの影響力が大きくなってくると、チームより個人の力量が目立ったほうが、社内的・部署的に活気が出るのかもしれません。しかし、編集者個人と特定の漫画との関係が密接になりすぎると、どうも日本的「和」の美しい人間関係がくずれるような気もします。
 たいていの編集者を怒らせる、というか不愉快にさせるある方法を教えましょうか。その編集者が担当していない漫画家の原画を「ファンなので一度見せてください」と言うことです。俺が担当している漫画家以外は、お前はファンじゃなくたっていいの! …いやまぁこれは極端ですが。