福田首相発言の「誤訳」について
産経でこんな報道が出たわけですが、
→日中首脳会談 「誤訳」で福田首相の顔色一変 - MSN産経ニュース
日中首脳会談 「誤訳」で福田首相の顔色一変
2007.12.29 11:08
北京の人民大会堂で28日行われた福田康夫首相と温家宝中国首相の首脳会談。直後の共同記者会見で「台湾独立」に対する表現をめぐり、福田首相が顔色を変える一幕があった。「(独立を)支持しない」という福田首相の発言を温首相が説明。これを会場で日本語に訳した通訳が「独立反対を表明した」と強い表現に「誤訳」したためだ。会見中に、すぐ資料を取り寄せた福田首相は自らの発言が「支持しない」だったと改めて説明するはめに。台湾問題の微妙さが改めて浮き彫りになった瞬間だった。(北京 酒井充)
日中首脳による初の共同記者会見は予定の20分間を25分もオーバーする熱の入ったものになった。両国友好の大切さを訴える温首相。だが、それまでの温和な笑顔を引き締め、台湾問題を切り出した。そして会場に通訳の日本語が響いた。
「福田首相は台湾独立に反対するとの立場を順守、厳守していくことを表明した」
その声に、温首相の右隣に座っていた福田首相が凍り付いた。温首相に気付かれないように右手の人さし指で、目の前の記者席にいた外務省の藪中三十二外務審議官に「資料をよこして」とサイン。福田首相の手元に資料が滑り込んだ。
中国側メディアの質問に一通り応えた福田首相は、最後に「台湾についても、私から日本の立場を申す」と切り出した。受け取った資料に目を落としながら、慎重に「2つの中国という立場はとっていないし、台湾の独立も支持していない」と語り、「独立反対」という表現を「支持しない」に修正してみせた。
台湾独立への日本の姿勢は「反対」なのか「支持しない」なのか−。この2つは外交上、大きな違いがある。
「親中派」と言われる福田首相だが、言葉の使い分けにはこだわってみせた。親日感情が比較的強い台湾と日本は長く良好な関係にあり、欧米諸国とは事情が違う。日本は昭和47年の日中共同声明以来、「台湾が中国の領土の不可分の一部であるとの中国の立場を十分理解し、尊重する」と表現するにとどまり、「独立反対」の言葉は慎重に避けてきたからだ。
首脳会談後、外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長は記者団に「『支持しない』と『反対』とはニュアンスが異なる。強度に違いがあることは日本人なら理解できるだろう」と話した。
台湾の陳水扁総統は来年3月の総統選と同時に「台湾の名義での国連加盟」の是非を問う住民投票を計画している。米仏は「反対」の立場を鮮明にしているが、福田首相は「反対」とは口にしなかった。ただ、中国外務省の劉建超報道官は会談後の会見で「日本が台湾問題で行った立場を評価する」と述べた。
「質問を受けた以上のことを申し上げたかもしれないが…」。福田首相は会見の最後にこうとおどけてみせたが、日本の首相として最低限のラインは守った
別の報道ではこんな感じの情報も。以下のサイトから。
→また産経新聞が捏造?福田首相の台湾発言について - 解決不能
→福田康夫首相 台湾問題での日本側の立場を表明 -- pekinshuho
福田康夫首相 台湾問題での日本側の立場を表明
日本の福田康夫首相は28日、温家宝総理と会談した際、日本側は「二つの中国」或いは「一つの中国に一つの台湾」を支持せず、台湾の独立を支持せず、国連加盟および国連加盟の是非を問う住民投票をも支持しない、との立場を表明した。
温家宝総理は、「歴史問題と台湾問題に正しく対応し、これを処理するのは中日関係を改善、強化するための政治的基礎である。中国側は台湾問題で一つの中国を堅持し、“台湾独立”に反対する日本側の立場表明を重視する。福田首相が国連加盟の是非を問う住民投票を支持しないと厳正に表明したことに対し、われわれは賞賛の意を表明する」と述べた。
福田康夫首相は、日本側は台湾問題では、日中共同声明の中で表明した明確な立場を堅持する、と語り、「周知のように、台湾問題は中国の核心的な利益に関わっており、日本側は一貫してわれわれ両国間の約束を守っており、台湾問題への立場は日中共同声明の中で述べたのと同じで、いかなる変化もない」と述べた。
「北京週報日本語版」2007年12月29日
これの元記事は以下のところにあった。
→福田康夫?明日方在台湾??上的立?
福田康夫?明日方在台湾??上的立?
・ ??: 2007-12-28 ・ 来源:新?网
新?网北京12月28日?(?者?晶晶 ??)日本首相福田康夫28日在与国?院?理温家宝会??表示,日方不?“?个中国”或“一中一台”,不支持“台独”,不支持台湾“加入”?合国,不支持“入?公投”。
温家宝表示,正??待和?理?史和台湾??是改善和加?中日?系的政治基?。双方表示要?持恪守中日?三个政治文件。中方重?日方在台湾??上表示的?持一个中国,反?“台独”的立?。?于福田首相今天?正表示不支持台湾“入?公投”,我?表示??。
福田康夫?,日本在台湾??上?持在日中?合声明中表?的明?立?。“我?知道,台湾???系中国的核心利益,日方一直遵循我?之?的承?,?台湾??的立?与日中?合声明中的一?,没有任何改?。”
コピペすると文字バケしまくりですが、「反対“台独”的立場」と温家宝が言った、という情報は、伝聞情報(新聞の記事)としては、とりあえずあるみたいです。
結局、「温家宝総理」が日本の立場を勘違いしており、それを日本語翻訳者がそのまま翻訳した、というのが真相のような気がしますが、みなさんはいかがですか。
どうも中国の政治家は自国に対する公式の場でのパフォーマンス(政治的アピール)が過ぎるのでは、というのがぼくの感想です。さらに、日本語のニュースを読める人が、英語のニュースを読める人と比べて遥かに少ない*1、というのが、日中相互の理解のさまたげになっていそうな感じです。
こういう誤訳ネタは、2008年も引き続き続けてみたいのですが、やはり英語以外の言語がもう少し読めたら*2、と改めて感じてみたのでした。
日中首脳会談後の共同記者会見に関する、朝日新聞の報道は以下の通り。
→asahi.com:来年は「関係飛躍」 日中首脳会談 ガス田は協議継続 - 政治
来年は「関係飛躍」 日中首脳会談 ガス田は協議継続
2007年12月28日13時28分
福田首相は28日午前、北京の人民大会堂で中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相と会談した。福田首相は日中両国がアジアや世界の発展に「大きな責任を持っている」との認識を表明。両首脳は日中平和友好条約締結30周年にあたる来年を「日中関係飛躍元年」と位置づけ、関係強化を進めることを確認した。両首脳は来年春の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席の訪日でも合意。懸案の東シナ海のガス田問題では「早期決着に断固たる決意」を共有し、一刻も早い解決を目指すことで一致した。
福田首相の中国訪問は就任後初めて。日本の首相の訪中は06年10月の安倍前首相以来、1年2カ月ぶりだ。
両首脳は会談後、共同記者会見に臨んだ。日中両首脳の共同会見は極めて異例で、初めてとみられる。温首相は「会談で中日関係の春が来たと実感している」と述べ、両国の友好関係が深まったとの認識を示した。そのうえで、胡主席の訪日をはじめとする政府高官レベルの交流や経済・貿易関係の強化を進めることで一致したことを明らかにした。
福田首相も胡主席の訪日や北京五輪、北海道洞爺湖サミットのある来年を「日中関係飛躍の年」にすることで一致したと強調。両国間で協議が続いている東シナ海のガス田の共同開発問題については、「具体的な解決策を巡り積極的な進展が得られた」との認識を示したうえで、協議を継続し早期解決を目指すとした。ただ、解決の時期には言及しなかった。
この問題では、中国側が最近になって、これまで存在を認めてこなかった中間線にまたがる地域での共同開発を日本側に打診、両首脳による政治決断が焦点だったが、結論は先送りされた形だ。
このほか、来年3月に台湾名義での国連加盟の是非を問う住民投票を予定している台湾の問題も取り上げられ、温首相によると、福田首相は住民投票を支持しない立場を示したという。
一方、福田首相は、中国を含むすべての温暖化ガスの主要排出国が実効的な気候変動の枠組みづくりに参加すべきだとの認識を表明。中国側もこの問題を重視、両国が積極的に協力することに合意した。
「戦略的互恵関係」の具体策として中国国内の施設で環境・省エネ分野の「1万人研修」を実施することで合意した。さらに「日中環境情報プラザ」を設置して日本の持つ情報を提供するほか、今後3年間に計1万人の研修生を受け入れ、この分野での人材育成を図ることを提案する。
北朝鮮の核問題では、6者協議を通じた核放棄に向けて引き続き連携を強化することで一致。拉致問題については、温首相が「日朝双方の対話を通じた解決」に支持を表明した。
ロイターの報道は以下の通り。
→ガス田問題の早期決着に向けた決意を共有、台湾独立は支持しない=日中首脳会談で福田首相 | マネーニュース | 金融・経済政策 | Reuters
ガス田問題の早期決着に向けた決意を共有、台湾独立は支持しない=日中首脳会談で福田首相
[北京 28日 ロイター] 福田康夫首相は28日、温家宝・中国首相との日中首脳会談後の共同記者会見で、首脳会談において東シナ海のガス田開発問題の早期決着に向けた「断固たる決意」を共有したことを明らかにした。また、共同会見では、胡錦濤・中国国家主席の来春の訪日が発表され、台湾問題について福田首相からあらためて台湾独立は支持しないとの方針が表明された。
福田首相は、首脳会談における東シナ海のガス田開発問題に関する議論について「具体的解決策について進展が得られたことを確認した。問題を早期に決着させる断固たる決意を温首相と共有した。今後も協議を継続し、一刻も早い解決をめざしたい」と早期解決に意欲を示した。
これに対して温首相も、1)日中双方とも共同開発を実現する意欲がある、2)協議は進展し、これまでの合意の上で一歩前進した、3)早期に成果をあげるため、福田首相と共に努力する決心を共有した──点をあげ、「最終的に両国の利益に合致し、両国民が受け入れられる案をめざして努力することで(福田首相と)一致した」と語った。
会見では、台湾問題についても言及があり、福田首相は「台湾問題を従来から重く受けとめている。日本の台湾に関する立場は日中共同声明にある通りであり、何ら変更はしていない」と発言。その上で「2つの中国、1つの中国・1つの台湾という立場はとっていない。台湾の独立も支持していない。心から平和的な解決を望んでいる」とし、台湾の陳水扁総統が進める国連加盟の是非を問う住民投票についても「緊張が高まることは望んでいない。一方的な現状変更につながっていくのならば支持できない」との方針を表明。温首相は、こうした日本の姿勢を「評価したい」と語った。
やはり公式のテキストが存在しないものに関する報道は、言及が難しいです。