「2008年のはじめに読みたい本(私家版)」を作って思ったこと(新聞の書評担当者について)
これは以下の日記の続きです。
→2008年のはじめに読みたい本(私家版・その1)
作ってて思ったのは、ちょっとレベル高すぎ、ということでした。自分の専門分野の本に関しては、その分野を商売にしている人ならレベル高くなっても仕方ない、というか、そうじゃないとダメだとは思うんですが、学術的な人が多すぎるのかな。特に朝日新聞の書評担当者にはそれを感じました。大学の教授レベルだと、読む本が専門的かつ党派的になりすぎるのでは、みたいな。「名古屋大学出版会」の出版物が少し多すぎるかも、とか、ワイン関係の本ばかり選ぶ大学の先生ってどうよ、とか。
ただそれが顕著に感じられたのは毎日新聞の書評担当者のほうで、具体的には『きみのためのバラ』(池澤夏樹)『円朝芝居噺 夫婦幽霊』(辻原登)は、毎日新聞の票があって「3名推薦」という結果になっているうえ、辻原登は「選ばれた人」であると同時に毎日新聞「今週の本棚:2007年「この3冊」」を選ぶ人でもある。多分池澤夏樹も「2006年」のそれをネットで確認した限りでは2007年も「選ぶ人」だった可能性があります(これは休みが終わったら図書館で調べてみよう)。
割とまとも、というか自分の好みに合ったのは産経新聞の推薦本で、ネットウヨクが喜びそうな本を選んでいる人は櫻井よしこぐらいか。朝日新聞の、少し左寄りのニオイがする本の選択と比べると*1、産経新聞の場合は北上次郎、イッセー尾形、南果歩、いしいしんじ、石原千秋といったかたがたが、おおこれは、と思うような本を選んでいてちょっと面白かった。
最後に読売新聞になりますが、これはどうも一般性を意識していながら個性をあまり感じず、中途半端な印象でした。読売推薦によって複数推薦になった本を挙げると、『川の光』松浦寿輝(河合祥一郎・小泉今日子推薦)、『土星の環』W・G・ゼーバルト(川村二郎・松永美穂推薦)ですか。
結局、自分の専門分野でお勧め本を出して来る書評担当者と、幅広く本を読んで、これは、と思う本を拾ってくるただの本好きな書評担当者のバランスが難しいところです。学閥、というか、学術系の人脈を考えると、専門家とはいえ大学教授あたりに本を選ばせると「この本の著者が属する学派に対して俺は否定的だから、面白い本としては扱わない」なんて選択が出てきそうな気がして*2、そこらへんを少し調べてみたくなるところが難点でしょうか。
ミステリーとかSF関係のベストも、誰がどの本を面白いと言ったか、単純に「票の数」だけではなくて、推薦している人の顔が見られる形で集計してみると面白いですよ(ぼくは昔そうやってました)。毎年、同じ作家に必ず投票する人とかいたりして。