『ウィンチェスター銃'73』----呪われた銃とそれをめぐるファンタジー

解説・あらすじ ウィンチェスター銃’73 - goo 映画
 とある町の射撃大会の優勝商品として登場した、千挺に一挺の銃、ウィンチェスター銃'73。これを巡って悪漢代表のヘンリー・ブラウンと、宿命の、というかある種呪われたヒーローであるリン・マカダムが因果な闘争をする。このウィンチェスター銃'73を手にした者(商人・インディアン・弱気な恋愛者)が次々と殺されてしまう展開がものすごい。俺は何という映画を見ているんだろう、という気になる。現代に作られたら、これは絶対ファンタジーになる、というか、ファンタジーにしかならないですな。1時間半の白黒映画で、話がどんどん想定外に進むので(ピアノ弾きで、殺された許婚者からヘンリー・ブラウンに心を変える女性のキャラ立ちが謎とか、いやまぁ伏線はあるんですけどね、ちゃんと作ってあるキャラの商人の、もう使い捨て同然の死とか)、悪夢・白日夢が再現されているような気分になってくる。悪漢とヒーローの関係(過去の因縁)の、最後に明かされる少しこれはないだろう、と思うようなラテンアメリカ小説的結末なんかも、なんかうまいシナリオライターが、自分の見た夢をストーリーに仕上げたという話っぽすぎて。にもかかわらずなんか中毒性があるのは、たとえば映画『アラバマ物語』と同じく、細部におけるありえない奇想の組み込み具合が、今の映画的ストーリーテリングとは違っているからなんだろうな。ルパン3世における次元大介のようなヒーローの相棒である“ハイ・スペード"ジョニー・ウィルスンも、奇妙な存在感を感じさせて心が痺れる。やはり昔の映画は面白いですな。