教科書の記述訂正については、自民党はあきらめたようです

 以下のニュースから。
「記述修正に一定成果」/自民「検定撤回」実行委解散提起沖縄タイムス2008年1月20日

「記述修正に一定成果」/自民「検定撤回」実行委解散提起
 
 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、自民党県連(外間盛善会長代行)は十八日、教科書検定意見撤回を求める県民大会実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)に解散を提起する方針を決めた。「記述が修正されて一定の成果を得た。実行委の役割は終え、活動に区切りをつけるべきだ」というのがその理由。同党県連の国会議員や県議は、記述の訂正を事実上の検定意見撤回だと受け止め、県民大会の目的はほぼ実現した―との認識だ。存続を求める実行委は強く反発しているが、同県連が幕引きの意向を明確にしたことで、教科書検定をめぐる超党派の活動は極めて困難な状況に追い込まれた。(政経部・与那原良彦)
 十八日の議員総会では「自民党も一丸となった要請で記述が訂正され、検定意見は事実上撤回された」「実行委は県民大会開催とその後の要請行動が目的だ。県民大会で求めたことは一定の成果を得た」などの意見が相次いだ。実行委の役割は終わっており、活動に区切りをつけるべきだという見解でまとまった。
 実行委幹事の伊波常洋政調会長は「訂正を拒んでいた文部科学省が訂正に応じ、制度の中でギリギリまで踏み込んだ対応をした。軍が主語になり、関与を認めた。事実上の検定撤回だ」と指摘。沖縄条項の設置などは県民大会決議を超えた要請だとして、「仕切り直して、今後の問題についてはあらためて、組織的対応を検討すべきだ」と述べた。
 議員総会では、「自民党が主導して解散を求めれば、『実行委つぶし』と批判されかねない」という慎重意見もあった。しかし、県議の間には「超党派要請だが、結局は政府与党への批判を招き、野党が得をするだけだ」と不満が渦巻く。
 六月に県議選を控え、衆院の解散・総選挙がいつあっても不思議ではない状況だけに、選挙戦への影響を懸念。事態の早期収拾が必要だという判断も働いた。
 また、一部の実行委員が、要請行動への協力に慎重になった自民党の県選出・出身国会議員を批判したことも、県連の態度を硬化させる要因になっている。
 自民党県連と実行委の方針の対立につながった根本にあるのは、記述の訂正に関する評価の違いだ。
 次回の実行委は二十三日にも開かれる予定だ。県民大会で結集した県民の思いは何か、原点に立ち返った議論が求められる。

 2007年1月23日の実行委の情報はまだ入手してませんが、「要請行動への協力に慎重になった自民党の県選出・出身国会議員」への批判はこんな感じらしいです。
要請行動に協力を 教科書問題・県民大会呼び掛け団体琉球新報・2008年1月11日)

要請行動に協力を 教科書問題・県民大会呼び掛け団体
 
 高校歴史教科書の「集団自決」検定問題で、教科書検定意見撤回を求める県民大会実行委員会(仲里利信実行委員長)のさらなる東京要請行動について、県選出・出身自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)が協力しないことを決めたことを受け、実行委員会呼び掛け団体が10日、県庁で記者会見を開いた。呼び掛け団体として五ノ日の会に、あらためて要請行動への協力などを求めることを明らかにした。仲里実行委員長ら代表は14日に上京し、15日に政府へ4度目の要請を行う。
 会見には、実行委員会呼び掛け団体のうち、県子ども会育成連絡協議会(沖子連)、県婦人連合会(県婦連)、県老人クラブ連合会、沖縄の未来を語る会(全沖縄旧制中等学校師範学校同窓会連絡協議会)、県PTA連合会、県青年団協議会の6団体の代表が参加した。
 玉寄哲永沖子連会長は県選出・出身国会議員との意思疎通を図る考えを示し「検定意見撤回と記述の回復を共通理解としてやっており、それを基に実行委員長を支えていきたい」と述べた。呼び掛け団体は五ノ日の会に政府要請への後押しのほか、実行委が進める検定意見撤回と教科書への「日本軍強制」記述明記の要請を超党派で展開するよう求めていく。
 この日、呼び掛け団体代表からは、要請に協力しないことを決めた五ノ日の会への不満の声も相次いだ。小渡ハル子県婦連会長は「わたしたちの目的は記述の回復と検定意見撤回だ。一つもちゃんとこなせていないのに五ノ日の会は静観すると言っている。腹が立つし、あきれる」と批判。諸見里宏美県PTA連合会会長は「五ノ日の会にはもう少しわたしたちの方に目、耳、心を傾けてほしいと要望する。仲里議長を支えていく」と話した。

 どうもこの「小渡ハル子」さんと「仲村正治衆院議員」が不仲の様子。
 あと「沖縄条項」についてももう少しくわしいことが知りたくなった。
教科書検定:集団自決問題 仲井真知事、文科省に沖縄条項の新設要求へ - 毎日jp(毎日新聞)

教科書検定:集団自決問題 仲井真知事、文科省に沖縄条項の新設要求へ
 
 沖縄戦の住民集団自決で日本軍が強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、沖縄県仲井真弘多知事は3日、国会内で記者会見し、教科書検定基準にアジア諸国に配慮する近隣諸国条項と同じような「沖縄条項」を新設するよう、文部科学省に要求する考えを明らかにした
 仲井真知事は、渡海紀三朗文科相らと会談した後、先月29日に約11万人(主催者発表)が集まった県民大会で実行委員会委員長を務めた仲里利信・県議会議長らと会見した。仲里県議会議長は「今後も同じ問題が出ないとも限らない。10年後に出たら、(戦争体験の)証言者もいなくなり、そのまま検定が通ってしまう」と述べ、今回の問題が解決した後に「沖縄条項」の新設を文科省に求める考えを示し、仲井真知事も同意した
 同席した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「政権が変わるたびに(検定内容が)揺れるのはおかしい。歴史的事実が動かないよう、沖縄条項を作ってもらいたい」と訴えた。
 近隣諸国条項は82年に教科書検定基準に追加された。「アジア諸国との間に近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」として、配慮が求められている。【高山純二】
毎日新聞 2007年10月4日 東京朝刊

 とりあえず、仲里利信沖縄県議会議長と玉寄哲永沖縄県子ども会育成連絡協議会会長と仲井真弘多沖縄県知事が関係があるようです。知事は県議会議長に同意しただけか。
 朝日新聞の情報。
asahi.com:割れる沖縄/運動継続か収束か-マイタウン沖縄

割れる沖縄/運動継続か収束か
2008年01月16日
 
 沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題で、今後も要請活動を続けるのか、矛を収めるのか、沖縄の足並みが乱れ始めている。県民大会実行委員会委員長の仲里利信・県議会議長(自民)らは15日、文部科学省などを回り、検定意見の撤回などを改めて要請した。しかし、沖縄の自民党国会議員は「検定問題は決着済み」という立場から仲介を拒否した
 教科書検定問題では、文科省は昨年12月、教科書会社6社から出されていた訂正申請を承認。「軍の関与」などは認められたが、沖縄側が求めていた「軍が強制した」という記述は復活せず、検定意見そのものも撤回されなかった。
 実行委には当初「80点」(仲里氏)と評価する声もあったが、県民の反発が予想以上に強かったため、今回再要請することになった。
 しかし、実行委は渡海文科相との面会を求め、沖縄の自民党国会議員に仲介を頼んだが、拒否された。このため公明党の国会議員を通じてようやく池坊保子副大臣(公明)に文科相あての要請書を渡すことができた
 実行委役員5人のうち副委員長の小渡ハル子・県婦人連合会長ら2人は要請活動の合間を縫って、自民党国会議員5人と面会。「検定意見はまだ撤回されていない」として協力を求めたが、仲村正治衆院議員は「検定意見は消えたんです」と声を荒らげた
 小渡氏らは20分間にわたって「超党派で取り組まなければならない」「引き続き県民の先頭に立って取り組んでいただきたい」と訴えたが、国会議員側は「100点満点ではないが、80〜90%は県民の意思が採り入れられた」と繰り返した。
 これまで沖縄の各党は、県議会で全会一致で抗議の決議を可決したり、県民大会を開いたり、超党派での活動を続けてきた。
 しかし、自民党国会議員の一人は「いまさら振り出しに戻すような話には同調できないというのが本音だ」と言う。実行委メンバーからも「一緒に行動できるのは今回が最後では」との声も出始めている。
 自民党国会議員が幕引きを急ごうとしていることについて、同党県連幹部の一人はこういう見方を示した。「6月に県議選、11月に那覇市長選がある。この問題が長引けば、自民党批判の材料に利用されかねないからだ

 こんなテキストもあった。
記憶の隠れ家:「毒おにぎり」「おじや強奪」「メチル禍」、 三人組の悲惨な体験

「仏の顔も三度まで」というが、仲里利信県民大会実行委員長と玉寄哲永、小渡ハル子両副委員長の「三人組は」今度の政府への要請行動は同じ4度目の上京である。
教科書検定意見撤回要請」を同じように四度も突きつけたことになる。
この三人組、断られても断られても繰り返せば目的を達せられる、と勘違いしているようだ。
こちらの誠意を伝える場合は「三顧の礼」もあり得るだろうが、
度を超すと「三個の失礼」、いや「四回の失礼」になるのではないか。
「三人組」の共通項は、三人とも沖縄戦の体験者で地元新聞に夫々衝撃的な沖縄戦の体験記を発表していることである。
だが、もう一つの共通点もある。
それは、三人とも沖縄戦の体験者ではあっても、慶良間島の「集団自決」の体験者ではないということである。

 ということで、三人の戦中・戦後の体験が紹介されています。
 もう一度、沖縄タイムスの記事。
「民意に背向けるな」/実行委員らが反発(2008年1月19日)

「民意に背向けるな」/実行委員らが反発
 
「到底県民には受け入れられない。民意に背を向けるわけには行かない。解散はありえない」。小渡ハル子県婦人連合会長と玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長の実行委両副委員長は強い口調で解散を否定した。
 「昨年末、実行委員会存続を確認したばかり。結果が不十分だったから先日も東京行動した。その直後に、なぜ一定の成果があったと言うのか」と玉寄副委員長。小渡副委員長は「何の権利があって解散を求めるのか」と声を荒らげた。
 青春を語る会の中山きく代表(白梅同窓会長)は「教科書執筆者が今後も訂正申請を出すと聞き、心強く感じていただけに驚いた。ここで解散したら、沖縄の思いはその程度だったのかと言われる」と、声を落とした。
 「教育にかかわる問題なのだから、もっと長い目で見なければならない」と、県PTA連合会の諸見里宏美会長。「私たち大人は、毅然とした態度を示す意味でも、簡単には妥協できない」と決意を新たにした。
 座間味の体験者宮城恒彦さん(74)は「教科書問題は、県民の問題で、自民党の問題ではない。ここで解散してはいけない。教科書執筆者は十一月に、また訂正申請をしようというのに、地元沖縄でこんな足をすくうようなことをしてはいけない」と語気を強めた。
 教科書検定撤回運動に取り組んできた琉球大学の山口剛史准教授(36)は「四月から使う教科書は、県民大会で求めたことが一切認められていない。政党としての判断はあるだろうが、県民の願いや本当の利益を考え、県民の声を正面から受け止めてほしい」と話した。

 どうなるんでしょうね。
 ぼく個人はもう、教科書問題は県民の問題ではなく、県民という集合体名を利用して何かを語ろうと思っている人たちの問題になっていると判断しています。