田村隆一と北村太郎

@nifty Books〜アット・ニフティブックス:ロアルド・ダールコレクション 2 チョコレート工場の秘密「チョコレートも、ほどほどが良い」

 さて『チョコレート工場の秘密』だが、本書を手に取ったきっかけは映画公開ではなくて、柳瀬尚紀氏による新訳の出版と、それが引き起こした新旧それぞれの翻訳を支持する読者たちの熱きバトルに興味を抱いたからだ。早速、田村隆一氏版と柳瀬尚紀氏版を並べ、読み比べてみる。
 日本語で物語を語ることに心を砕いた田村氏と、翻訳と言葉遊びに力を込めた柳瀬氏という感じで、どちらを好むかは読み手によると思う。敬体と常体が与える印象の違いもあるし、同じ東京でも早稲田界隈の雰囲気が好きな人も六本木ヒルズ辺りを好きな人もいる。それくらい印象が違う二冊だった。翻訳って、本当に面白い。けれど本書の「訳者から」は、やはりいただけない。品がなく、醜く、ダールの作品まで急に色褪せてしまう。

 え〜!? 『チョコレート工場の秘密』が田村隆一訳じゃなくなってるなんて知らなかったよ。
田村隆一 - Wikipedia

生涯で五度結婚をした。最初の妻は鮎川信夫の妹。二度目の妻は福島正実のいとこ。岸田衿子は三度目か四度目の妻。最後の妻は田村悦子

 まぁこのあたりは基礎知識っぽい。でも田村隆一早川書房に勤めていたことがある、というのはどの程度まで知られている基礎知識なんだろうか。
北村太郎 - Wikipedia

北村太郎(きたむら たろう、1922年11月17日 − 1992年10月26日)は、詩人。

 こちらにはあまり面白いテキストは載ってないです。
 で、こちら。
かわうそ亭: 北村太郎と田村隆一

北村太郎を探して』(北冬舎)という本を読んでいたら(なかなかいい本でした)、この北村太郎田村隆一の関係について、「え!」というような話があって絶句した。もちろん、これはわたしが無知なだけで、現代詩の世界ではよく知られたことだったのだろう。
上記のように、このふたりは十代の頃から因縁があったわけだが、五十代になってからその因縁がさらに縺れたものになった。
田村の妻、和子と北村が恋愛関係となったのでありますね。
このあたりのことは、さいわい当事者の田村和子さんが書いた文章がネットにあるので、そちらを読んでもらった方がいいだろう。(「タローさんとサブロー」)
(中略)
晩年の北村は悪性の血液病で死期が迫っていたが、1988年、田村隆一と和子の離婚が成立すると、鎌倉市稲村ケ崎の和子の家に転居した。死んだのは4年後の1992年。享年六十九歳。
田村隆一が死んだのは、さらにそれから6年後の1998年のことでありました。

 へぇ。
 ということで、以下のテキストなど。
タローさんとサブロー

太郎さんが我が家に最晩年住むようになるまでには約八年にも及びすさまじい嵐が吹き荒れた。今から二十五年も昔のことだから詳細は忘れたが、田村隆一と太郎さんに共訳の仕事が舞い込んだ。太郎さんと田村は府立三商時代の同級生で詩の仲間としてその交際は終生にも及んだ。田村は生涯に亘って膨大な翻訳を生きるためにせざるを得なかったが、そのほとんどは下訳者に依存していた。それが太郎さんとの共訳であれば田村は安心してまかせていられるわけだ。その原稿の受け渡しの役が私であった。田村はほとんど酒場にいて我が家の夕食はしばしば空振りが多かったから月に何回かの原稿のやりとりの時、お茶から夕食を御馳走になるなんてこともあった。小さな誤解から小さなさざ波になり、やがてそのうねりが大波そして嵐に変化していったのだ。

 実は、以下の本が課題図書になっております。読んで面白かったら感想書こう。

荒地の恋

荒地の恋

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53歳の男が親友の妻と恋に落ちた時、彼らの地獄は始まった…。詩神と酒神に愛された男・田村隆一。感受性の強いその妻・明子。そして、明子と恋に落ちる北村太郎。荒地派の詩人たちの軌跡を描く力作長篇小説。