「藁人形」をとりあえず作ってみて、フクロにしてみて勝ったつもりになっている人について

 見出しは演出です。
 ここは割と興味深く読めました。
歴史修正主義の手法 - 歴史学者の議論をその裏付けが自分の調べた範囲で見つけられなかったことを根拠に勘違いだろうと判断する人物 - Close to the Wall
 関連テキストとして読まなければいけない本があるので、ちょっと時間が欲しいところ。『証言沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書 新赤版 1114)』は読むけど(読まないと否定的であれ肯定的であれ、言及は難しいです)、『銃後の風景―ある兵事主任の回想』はさらに時間があった時にでも。
 まぁ後者の本はぼくも一応紹介はしているのですが、まるでぼくがその本の存在を知らないかのような書かれぶりは困った。
相変わらず疑問が解決していない「兵事主任」「兵器軍曹」について - 愛・蔵太のすこししらべて書く日記

以下の本などはちょっと興味を持ったので読んでみたいと思いました。
→ホワイトクレイ・ジャパン:銃後の風景 ある兵事主任の回想 長岡健一郎著

 しかし、

1・この言葉を使っているのはどうも沖縄戦史家の安仁屋氏とその弟子・関係者でしかないこと
(通常は「兵事係」という言葉を使っているようです
2・兵事主任が「軍隊の命令を住民に知らせた例」が見当たらないこと

 元はhttp://norevisionism.g.hatena.ne.jp/bbs/2/6なんですが、正確にはそのあとに、

たとえば、この2つについて言及することは「歴史修正主義者」ということになりますか

 という一文も入っています。まぁどうでもいいことですが。
「1」に関しては「でしかない」というのは言いすぎでしたね。反省します。ただ、「兵事主任」という言葉は安仁屋政昭氏が使いはじめる前から存在していたのか、それ以前にもその言葉は使われていたのか(存在していたのか)に関しては、何かもう少し調べるための材料が欲しい、と思いました。
「2」に関してはまた別エントリーで、もう少しくわしく語ろうとは思います。
歴史修正主義の手法 - 歴史学者の議論をその裏付けが自分の調べた範囲で見つけられなかったことを根拠に勘違いだろうと判断する人物 - Close to the Wall

一応の疑問として、そうした徴兵に関わる業務と戦地での命令とは違うと言うことも出来るかも知れない

 そうそう。

しかし、沖縄は唯一本土決戦が行われた場所である以上、本土の兵事係と、軍が駐屯した沖縄での兵事係の任務を同一視することはおかしい。

 その「おかしい」部分がもう少し知りたいわけですが、「非常呼集」以外にはうまく見つからなかったのでした。

単に、兵事係は普段おもに軍事関係の事務仕事をしているが、軍隊が来たときは軍隊と住民との折衝役として動いていた、というだけのことではないか。前者の事例をいくら挙げても、後者の否定にはならない。

 だんだん推論が多くなって来ている感じ。
 まず、「軍隊」が「住民」に命令できるのか、という、命令系統がちゃんと存在しているのかは未確認でした。「住民」に命令できるのは「村長」もしくはそれに準じる者です。命令系統が違ってるんだから。で、その「連絡係(折衝係)」として、たとえば兵事主任が存在する、というのもありうることかもしれません(推論)。ただ、「折衝係」はどう判断しても「村民に命令する人」ではないのでは。
 ぼくは基本的に「お前らの間違った歴史観を修正してやるぜ」「これが若さか」なガチの人歴史修正主義者じゃなくて「なんか歴史について言っている人にもう少しくわしく聞きたいこととか知りたいことがある」という程度の、疑問を持つ人なので、沖縄戦に関してはまだまだ知識不足があることは否定できないのですが、まぁこのくらいは読んでおけ、という程度のものには目を通してみたつもりなのでした。
 
(追記)
 トラックバックから。
主語をあいまいにした読売新聞社説の欺瞞 - Apes! Not Monkeys! はてな別館

そして、その気になって調べればネット上でも「兵事主任」が戦前・戦中において用いられていたことを「調べるための材料」はちゃんと存在しています。国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」を「兵事主任」で検索すると長尾耕作編の『海軍出身案内』(博文館、明治34年)という文献がヒットし、その目次には「兵事主任必携帝国海軍法規」という一項があります。なお、「近代デジタルライブラリー」で公開されているのは画像データであり、検索でヒットするのは目次など電子化されている部分が含む(あるいはそれに加えて検索語としてライブラリに登録されている)語句だけですので、単純な検索だけではヒットしない用例がさらにあることでしょう。例えば「兵事」や「徴兵」で検索すると膨大な数の文献がヒットしますから。

 こういう頑張りをしていただけるところに、いつも感心してしまいます。
 ということで、以後は「兵事主任」という言葉が、「長尾耕作編の『海軍出身案内』(博文館、明治34年)」で使われており、ほかにも使われた可能性がある、と追記しておきます。(2008年4月4日追記:この件に関してはコメント欄参照)