『八日目の蝉』----男の子宮が痛くなる(ないけど)

 これはなかなか面白かった。

八日目の蝉

八日目の蝉

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逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか−−理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。

 不倫相手の子供(赤ん坊)を誘拐して3年半の間育てるという奇想な話。舞台の一部メインが小豆島で、ああ、『二十四の瞳』の映画を地図見ながら楽しんだ(胃を痛くしながら)ということもあって、懐かしく感じながらも、やはり胃が痛くなった。犯罪とかサスペンスとか謎(誘拐した子供に対して、逮捕される女性は最後に何と言ったのか、その他)もあって、どこをどう取ってもミステリー枠なんですが、多分ミステリー作家という認識はされていないので、たとえば歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』みたいな感じには読まれていないと思う。推定読者層は圧倒的に女性ですか。しかし不倫相手の子供を産むとか産まないとか、そういう設定って若い本好きの女性には基本パターンなのかとんと見当がつかない。何となく基本パターンのような気がする。子供の話は少し泣かせとしては卑怯っぽいのですが、ラストの小豆島行きフェリー乗り場でのシーンは、これはもう、ここで泣け、というフラグが立っているような感じ。前半が逃亡の話で、後半がその子供が大きくなってからの話という二部構成ではありますが、小豆島のお祭りとかのシーンでまだ半分残ってるわけで、いったいそれからどう話の展開をつけるのか、みたいに思ってしまったらこんな展開だったのかという。4歳ぐらいまでの子供というのは本当にかわいいので、懲役8年というのはちょっと、本当の母親の気持ちを考えると許せない気持ちになったり。
 この本に関しては普通の女性の人の感想をちょっと聞いて回りたいところ。ネットで検索してみるといいのか。しかし角田光代も初体験というのは、読書を趣味としている人間(=ぼく)としてはどうかと思われてもしかたない。