『時計じかけのオレンジ』完全版に驚愕する

 なかなか平日に書けない(驚愕できない)日が続いてるんですが、早川書房の復刊、今年の秋の一番の目玉はこれかも。

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)

 この本に関しては、ぼくの過去のエントリーをご覧ください。
『時計じかけのオレンジ』幻の最終章
 で、今度の文庫には「最終章」が収録されている、という話。
 文庫版あとがき(解説)より。p316-317(柳下毅一郎

(前略)一九六二年に英国ハイネマン社より出版された『時計じかけのオレンジ』初版は第7章も含まれた完全版だった。だが同年に米国で出版された版からは最終章が省かれていた。バージェスが八六年の米国版に寄せた序文によれば、米国の出版社が最終章のカットを求めたのだという。その後の版もこれを踏襲し、八六年に「『時計じかけのオレンジ』はこれまでアメリカでは完全な形で出版されたことがなかった」とする序文(A Clockwork Orange Resucked)つきで再刊されるとき、はじめて第7章が復活した。バージェスがそれまで第7章の復活を求めなかった理由はよくわからない。おそらく本人にもどうすべきか迷いがあったのではなかろうか。
 日本で本書がはじめて翻訳されたのは一九七一年だが、この当時は最終章のない版しか流通していなかった。そのためハヤカワ文庫旧版には最終章のないバージョンが収録されていた。一方で一九八〇年に刊行された〈アントニイ・バージェス選集〉版では、バージェスの当初の意図を汲んで最終章が収録されている。はたしてどちらが真のバージョンなのか不明確だったため、多くの読者を混乱させることになったのは知ってのとおりである。

 ということで、今まで『時計じかけのオレンジ』を読んだことのある人のうちの大半が、もう一度手に取ってもいいような翻訳テキストなんじゃないかと思いました。