『レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり』『ハチはなぜ大量死したのか』『機械仕掛けの神―ヘリコプター全史』

本日の読みたい本・おすすめ版(2009年1月あたり)。

レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり

レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり

★『レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり』(ブレジンスキー,マシュー/日本放送出版協会/2,500円)【→amazon
一九五七年―アポロ11号が月面着陸に成功する一二年前、人類と宇宙の関係を変えた世界初の人工衛星スプートニク1号」が打ち上げられた。スペースシャトルや宇宙ステーションにいたる、宇宙時代の幕開けである。アメリカとソ連、それぞれの国家の威信や権力闘争に巻きこまれながら宇宙をめざす科学者たちの挑戦、フルシチョフアイゼンハワーたち政治家の思惑、軍部に渦巻く対抗心。人類最後の未踏地「宇宙」を征する栄誉は、どちらの手に…?冷戦下、米ソ宇宙開発競争の裏側で繰りひろげられた熱い人間ドラマが、当時の関係者たちの新たな証言を交えて、いきいきとよみがえる。息もつかせぬおもしろさのエンターテインメント・ノンフィクション。
ハチはなぜ大量死したのか

ハチはなぜ大量死したのか

★『ハチはなぜ大量死したのか』(ジェイコブセン,ローワン/文藝春秋/1,905円)【→amazon
2007年春までに北半球から四分の一のハチが消えた。巣箱という巣箱を開けても働きバチはいない。残されたのは女王バチとそして大量のハチミツ。その謎の集団死は、やがて果実の受粉を移動養蜂にたよる農業に大打撃をあたえていく。携帯電話の電磁波?謎のウイルス?農薬?科学者たちの必死の原因追及のはてにみえてきたのは。
機械仕掛けの神―ヘリコプター全史

機械仕掛けの神―ヘリコプター全史

★『機械仕掛けの神―ヘリコプター全史』(チャイルズ,ジェイムズ・R./早川書房/2,300円)【→amazon
古くは万能の天才ダ・ヴィンチのスケッチにも登場する、回転する「翼」で浮かび飛翔する機械。それがヘリコプターだ。しかし、基本原理が完成し、最初の模型が飛んでからも、実用に耐えるものができるまでには、飛行機にくらべても長い時間がかかった。それだけ数多い難問をのりこえていかねばならなかった、シコルスキーを初めとする天才技師らの格闘にまつわる歴史的エピソードや、試作機の奇想天外なデザインの数々、意外にも戦場で大々的に生かされることになったその機動性の目覚ましさなどを、豊富な資料を駆使し、図版を満載して物語る。科学史としても軍事テクノロジー解説としても面白い、夢のテクノロジー読本。

読みたい本・次点。
『スペインの黄金時代』(ケイメン,ヘンリー/岩波書店/2,100円)
  「日の出から日の入りまで、その領土で太陽が輝かないときはないのだ」―一世紀余りにわたって強大な一大帝国を誇ったスペインは、一七世紀後半に入ると一転して大きく凋落する。「スペイン帝国」とは何であったのか。王権の性格、軍事力、帝国経済、衰退をもたらした要因、異端審問制度の果たした役割、「血の純潔」問題、スペインの社会的・文化的異質性など、つねに論争を呼んできた「黄金時代」をめぐるスペイン史学の主要な議論を、歴史に対するステレオタイプ的理解をきびしく批判しながら紹介する。
『ジャーナリズムの可能性』(原寿雄/岩波書店/700円)
  権力との癒着、過熱する事件報道、強まる自己検閲…。マスコミへの不信・批判が叫ばれて久しい。しかし有効な解決策を見出せぬまま法規制の動きも強まっている。いま原点に戻って、ジャーナリズム本来の力、役割を問い直す必要があるのではないか。長年の現場体験を踏まえ、放送、新聞の現状を検証し、再生の道を構想する。
『ネイティブ・アメリカン―先住民社会の現在』(鎌田遵/岩波書店/780円)
  土地を奪われ、排除と同化を強いられてきたアメリカ先住民たちは、今もなお社会の最底辺で困難な生活を送っている。彼らは何を求めているのか。苦境を乗り越えるために始めた廃棄物処理場の誘致やカジノ経営は、部族社会に何をもたらしているか。先住民の歴史・文化・社会を見ることで、アメリカ社会が内包する闇を浮かび上がらせる。
『西洋哲学の10冊』(左近司祥子編/岩波書店/780円)
  ギリシアから現代まで、西洋哲学の名著の入り口に立ってみよう。もっと読んでみたくなる1冊がきっと見つかる哲学読書案内。
『日本サケ・マス増殖史』(小林哲夫/(札幌)北海道大学出版会/7,000円)
  わが国のサケ・マス生産量の主体を占めるサケ資源培養の歩みを重点に、その歴史的経緯を取りまとめたもの。
『私の音楽談義』(柴田隆弘/第一書林/2,300円)
  戦後の神戸音楽界で、音楽が世の中を平和にすると信じ東西を駆け抜けた音楽プロデューサーの音楽談義。なにげない文章の中に、当時の日本の音楽界の様子がうかがえる。
『思想学の現在と未来』(田中浩編/未来社/2,400円)
  新しい社会科学の構築へ。来たるべき社会の基礎となる社会科学的方法論の課題を、第一線で活躍する十二名が「思想学」の観点から論じる。自由思想、啓蒙思想から神学、経済学まで多彩な視座より先哲の歩みを分析し、思想研究の未来を探る充実の書。
『紅茶レジェンド―磯淵猛が歩いた「イギリスが見つけた紅茶の国」』(磯淵猛/土屋書店/1,900円)
  なぜ紅茶は誕生し、世界中で愛飲されるようになったのか?その謎を探究する紅茶の旅。紅茶の歴史はイギリスなくして語れない。だがイギリスだけでも語れない。ロンドン、福建、雲南ミャンマー、アッサム、セイロン島…。人気の紅茶研究家が、約30年間にわたって“伝説の地"を訪ね歩き、その謎を探究した書き下ろし紅茶史ロマン。
『椅子の文化図鑑』(ダンピエール,フローレンス・ド/東洋書林/12,000円)
  本書は、古代エジプトメソポタミアから、ギリシア・ローマ、中世期、ルネサンス、ルイ王朝時代、19世紀、20世紀初頭のモダニズムを経て、現代アートにいたる長大な椅子の歴史をたどった労作である。素材やデザインの変遷を丹念に追いながら、椅子が担った役割を数多くのエピソードにより詳説している。また、バチカンおよび30数か所の国際的なミュージアムの協力を得て撮影・提供された写真をはじめ、500点以上におよぶ貴重な図版資料を収めた。
『無頼の画家 曾我蕭白』(狩野博幸;横尾忠則/新潮社/1,400円)
  悪夢のような凄まじい画から、軽妙洒脱な水墨画やドラマチックな山水画まで―めくるめく“水墨サイケデリック"の世界へようこそ。江戸中期の京都、伊勢、播磨を舞台に筆一本でどん底から這い上がった叩き上げ画家の尋常ならざる作品世界を、とくとご覧あれ。
『フランスの庭 奇想のパラダイス』(横田克己著;松永学ほか写真/新潮社/1,400円)
  ミステリアスでストレンジ、そしてどこにも似ていない―フランス人ならではの“独創"が生み出した不思議な空間は、辛辣で容赦ない美意識が凝縮された世界。身分に関係なく素人や王様が追い求めたその世界は、時代をこえて残された夢の痕。60の“奇庭"の物語が、旅にいざなう。
『撲殺!青春レコード』(石原まこちん/TOKYO FM出版/1,000円)
  田園調布生まれのへそ曲がり少年、石原まこちんの冴えない青春時代。すべてのロスジェネ世代に捧げる自伝的音楽エッセイ。憧れの大槻ケンヂ師匠との対談収録。
『ものはなぜ見えるのか―マルブランシュの自然的判断理論』(木田直人/中央公論新社/780円)
  たとえば、目の前の湯呑。私たちはこれをどのようにして認識しているのか。一七世紀フランスの哲学者マルブランシュの結論は、驚くべきものである。「われわれはすべてのものを神の内に見る」。この理説によって、非常識陣営の大立て者と目される裏で、彼は自然主義との壮絶な調整を続けていた。古代プラトン主義と近代デカルト主義を併呑した彼の理論が、ついには現代現象学へと肉薄する過程を、明晰・精緻に描き上げる。
『富士山―聖と美の山』(上垣外憲一/中央公論新社/820円)
  頭を雲の上に出し…富士は日本一の山などと歌われる富士山。日本のシンボルとして誰にも馴染みがあり、社名や軍艦の名前にも使われたが、かつては草木も生えぬ不毛の山、火を吹く山として怖れられ、決して愛着を持って語られる存在ではなかった。富士山は、いつから歌に詠まれ、日本一の名山とみなされ、ナショナリズムの象徴とされるようになったのか。時代とともに変遷する富士山と日本人の関係を比較文化の視点で解読。
『ヴェルサイユ条約―マックス・ウェーバーとドイツの講和』(牧野雅彦/中央公論新社/820円)
  第一次世界大戦は、アメリカの参戦とドイツ帝国の崩壊を経て休戦が成立し、パリ講和会議が開かれる。だが、「十四箇条」に基づく「公正な講和」を求めるドイツ、「国際連盟」による世界秩序の再編を目指すアメリカ大統領ウィルソン、そして英仏の連合国首脳の思惑には大きな隔たりがあった。それまでの講和のルールになかった「戦争責任」をドイツに求めるべきなのか。人類初の世界戦争の終結をめぐる息詰まる駆引を描く。
『エトルリア人―ローマの先住民族 起源・文明・言語』(ブリケル,ドミニク/白水社/1,050円)
  紀元前九世紀以降、イタリア中央部で繁栄し、ローマ帝政期に衰退した先住民族エトルリア人については、いまだ謎が多い。本書は、近年着実に発展をとげたエトルリア学の研究成果と現況を解説する。重要な関連事項や、エトルリア語解明に関する、監修者による「解説」も収録。
『想い出のブックカフェ―巽孝之書評集成』(巽孝之/研究社/2,400円)
  『朝日』『読売』『毎日』など有力紙の書評委員および書評寄稿者を10年以上にわたってつとめた著者初の書評集成。学術書評、文芸時評とともに沼野充義四方田犬彦高山宏の諸氏との本をめぐる対談も併録。
『落語の国芸人帖』(吉川潮/河出書房新社/1,600円)
  当代の落語家、落語ファンに向けて。演芸エッセイ集。
『勝てる読書』(豊崎由美/河出書房新社/1,200円)
  理不尽な状況に、くじけそうな自分に…本の中にこそ勝てる言葉と思考がある。「負けたくない」14歳のための史上最凶の読書ガイド。中学生以上。
『ロシア文学の食卓』(沼野恭子/日本放送出版協会/1,160円)
  難解で深遠なイメージがつきまとうロシア文学。だが、実際はけっして暗く重苦しいものではない。即物的な「食」「料理」という観点に注目してみると、さまざまな食事風景が描写されてきたことに気づく。皇帝の豪華な晩餐に、素朴だが家族で囲む食卓…。食卓に現れる料理の数々は、ロシアの多様な地域性、宗教、ときには時代背景や思想をもわれわれの眼前にうつしだす。ロシア文学を、「食」というプリズムをとおして読みなおし、その多彩な世界を浮かびあがらせる、味わい深い一書。
『池波正太郎を歩く』(須藤靖貴/毎日新聞社/1,500円)
  いちばん好きな池波長編は何ですか?『真田太平記』、『人斬り半次郎』、『忍びの風』など長編16作、短編2作を気鋭の小説家がくまなく歩いた意欲作。
『妣の国への旅―私の履歴書』(谷川健一/日本経済新聞出版社/2,600円)
  柳田、折口につらなる独学者の魂と海の彼方の「明るい冥府」への憧憬が、古代史から文学まで自在に越境する在野の“旅する民俗学"を生んだ。待望の自伝的随想・紀行文集。
『世界残酷物語〈上〉古代・中世・近代(新装版)』(ウィルソン,コリン/青土社/2,400円)
  権力誇示の殺戮―皇帝カリギュラ、ネロ、チンギスハン、チェーザレ・ボルジアから、スターリンヒットラーまで、世界の歴史とは「血塗られた」英雄たちの系譜だったのか。人類の狂気の総カタログ。
『帝国というアナーキー―アメリカ文化の起源』(カプラン,エイミー/青土社/2,800円)
  国内矛盾の反映としての海外空間への暴力的介入、植民地支配をめぐる国家間の軋轢・闘争によって生じる矛盾や曖昧さ、そして流動する境界…。このアナーキーな権力状態こそが、帝国アメリカのアイデンティティの核心ではないのか。政治、法制はもとより、女性雑誌・小説・映画など大衆文化に現われた様々な表象を大胆に分析し、20世紀転換期の帝国アメリカの根底的見直しを迫る画期的論考。