『湖底のまつり』----これはひどい
推理小説作家・折原一さんの日記から。2009年2月5日。
頭蓋骨の裏側
●2月5日(木) 泡坂妻夫さん
泡坂妻夫さんに初めてお会いしたのは、『旅』の編集部にいた頃である。
(中略)
ええと、泡坂妻夫作品、私は絶対に『湖底のまつり』をベスト1に選ぶ。作家になったら、こんなものを書きたいなとマジで思いましたよ。推理作家の創作意欲をかきたてる技巧的な作品。バリンジャーの味があるといえば、わかってもらえるかしら。ミステリ作家志望者必読ですね。
ということで、読んでみましたよ。
- 作者: 泡坂妻夫
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旅先で突然増水した川に流された若い女性紀子は、投げられたロープに縋り救助された。その夜助けてくれた若者晃二に身をまかせるが、翌朝彼の姿は消えていた。祭で賑わう神社で晃二の消息を問うと、ひと月前に毒殺されたのだと告げられる。では昨日の人物は何者なのか。文学的香気を漂わす描写のうちに著者の仕掛けた謎があなたを惑わす。
…これはひどい。
犯人と謎の人物トリックがあるので、無駄にエロい官能部分を我慢しながら読み通したわけですが、官能部分もトリックだったとは(あまりくわしくは語れない)。いやそれは、たしかにびっくりはしますけどね。あまりヒントを出すのは無理なんですが、我孫子武丸『殺戮にいたる病』と並んでバカミスの座にあることは、ぼくの中では確実。大学時代に読んでたら、叩きつけていたと思うよ。叙述系トリックを、それだけで否定するってことはないんですが、ちょっとこれは…女性のかたのご意見を聞きたいところです。
泡坂妻夫の作品をそんなに知っているわけではない、ミステリ低級者としては、『乱れからくり』の人造的幻想性が忘れがたいものになっていたので、なんかマーケット(市場)的にエロ・官能ミステリが当時望まれていたのか、普通のミステリを読んで確認してみたくなった(いわゆる「新本格」で綾辻・有栖川とかが出はじめる前の時代)。
で、たまたま手に取った赤川次郎のものすごい復刻(的)本、『ぼくのミステリ作法』も、掲載されている短編4つのうち3つがエロ、というか情痴絡みだったのには驚いた。これの初版は1983年ですか。
- 作者: 赤川次郎
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- 作者: 泡坂妻夫
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