『偉大な記憶力の物語−ある記憶術者の精神生活−』ほか

今日の読みたい本・おすすめ版。
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偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)

偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)

★『偉大な記憶力の物語−ある記憶術者の精神生活−』(A.R.ルリヤ/岩波書店/1008円)【→amazon
人並みはずれた鮮明な直観像と、特有の共感覚をもつその男は、忘却を知らなかった。電話番号を舌で感じ、コトバの音から対象の意味を理解する。想像によって手の温度を変える。直観像を利用して課題を鮮やかに解決する一方で、抽象的な文や詩の理解はひどく困難。特異に発達した記憶力は、男の内面世界や他者との関わりに何をもたらしたのか。
 
限りある思考 (叢書・ウニベルシタス)

限りある思考 (叢書・ウニベルシタス)

★『限りある思考』(ジャン=リュック・ナンシー/法政大学出版局/5250円)【→amazon
存在という出来事の限界で、有限な世界の終末で、ひとはまだ何を思考し、意味することができるのか。ハイデガーデリダの問いを受け継ぐ哲学者が、バタイユニーチェランボーらとともに、西洋、エクリチュール、犠牲、崇高、ミメーシス、愛や共同体について繰り広げる戦慄的な思索。『無為の共同体』から『キリスト教脱構築』へ向かうナンシーの、デリダ論を含むもう一つの主著、待望の完訳。
 
語学者の散歩道 (岩波現代文庫)

語学者の散歩道 (岩波現代文庫)

★『語学者の散歩道』(柳沼重剛/岩波書店/1050円)【→amazon
西洋古典学を研究する著者が、ことばに関する豊富な話題の中から、古典と英語・英文学との接点をとりあげた、ことばの旅を楽しむエッセイ集。語学の森で出会った〈こぼれ話〉の泉に心がうるおう。
 
語学と文学の間 (岩波現代文庫)

語学と文学の間 (岩波現代文庫)

★『語学と文学の間』(大野晋/岩波書店/1050円)【→amazon
日本語の起源を求める長い歩みの中で、著者がぶつかった疑問の数々と、まるで謎解きのような論証過程。これら論文にやさしい導入を付してまとめる。本居宣長のモノノアハレ論とその恋愛体験、藤原定家の仮名遣いの原則、言語構造に表われた日本人の思考法など、文字の背後にある人間的営みを解き明かした古典語研究の精華。
 
新版 ディコンストラクション〈1〉 (岩波現代文庫)

新版 ディコンストラクション〈1〉 (岩波現代文庫)

★『ディコンストラクション 1 新版』(J.カラー/岩波書店/1155円)【→amazon
構造主義から記号論、そしてディコンストラクション(脱構築)へと現代思想はめまぐるしく展開してきた。しかし、いったい何をディコンストラクト(解体)するのか。本書では米国の代表的文学理論家が、ニーチェハイデッガーデリダという系譜から問題を捉えなおし、その主題へと迫っていく。テクストの理論、読書行為論、フェミニズム論等を縦横に駆使することによって、難解といわれる思想・哲学の明快な配置図を描き出した名著。
 
新版 ディコンストラクション〈2〉 (岩波現代文庫)

新版 ディコンストラクション〈2〉 (岩波現代文庫)

★『ディコンストラクション 2 新版』(J.カラー/岩波書店/1155円)【→amazon
脱構築の思想とは何か。それが文学批評にとって持つ意味は何か。本書1で脱構築の思想を検討したのに続き、本書2では脱構築的な批評の一例として、メルヴィル、イエーツ、ルソーなど英米仏の文学作品やフロイトの読み方を提示する。それは哲学的手法の文学研究への応用ということにとどまらず、テクストの独自な論理を発掘する作業でもある。ポスト構造主義を学ぶための必読書。