あまり知られていない明治天皇のことなど

lovelovedog2006-01-12

今日はこんな本を読みました。
『明治天皇を語る』ドナルド・キーン新潮新書
公式記録として1万ページのテキストが残っている、生涯で詠んだ和歌は10万首もある、日記や手紙はまったくない、存在している写真は2枚しかない、という明治天皇に関するエピソードを、講演的にまとめたものです。
もっとちゃんと知りたい人には、同じ著者でこんなのもあります。
『明治天皇(上)
『明治天皇(下)
で、その、たった2枚しか撮らなかったという写真は、和装・洋装の20歳前後のときのものです。ネットで見つけたのではこんな感じ。
洋装
和装(横向き)
で、それ以外の肖像は、とりあえず写真ではなくて全部絵だ、ということで。
こんな奴とか。
こんな奴
これは、キョッソーネが描いた絵です。
で、おかしな個性として、ドナルド・キーンは以下のような話を挙げています。p31-35
・刺身が嫌い(海魚は絶対に食べない)
・花見が嫌い
・風呂が嫌い
・蝋燭が好き
・アイスクリームは大好き
・酒が大好き
どうも天皇家というのは、酒が強い遺伝子が含まれているみたいです。
この本の中で語られている明治天皇のエピソードとして、俺が好きなのは、たとえばこんな奴。p90-91

また、明治天皇は内閣の会議には必ず出席していました。議場は夏には耐えがたいほどの暑さになることもありますが、不快を訴えることもなく議事に聞き入りました。とはいえ、一度も言葉を発したことはありません。あとで議長を呼んで質問することはありましたが、議事中はただそこにいただけです。それが自分の義務だと思っていたのです。
もし天皇がそこにいなければ、内閣らしい話はなかったでしょう。長い間、内閣を構成する多くの人たちは、戊辰戦争で業績を上げた軍人たちでした。政治などの複雑かつ高度な問題にあまり興味がない者もいます。もし天皇が出席していなかったら、雑談とか猥談とか、いろいろ楽しい話をしたに違いない。しかし天皇がそこにいたために、そういう話はできなかった。大臣らしい行動をしなければならなかったのです。

なんか、オーナー社長の2代目・3代目という風情です。このような感じで、明治天皇の仕事の大半は「その場にいて、何かを我慢すること」だったみたいで、並の人間にはとてもつとまるような仕事ではないと思いました。
でも、軍事演習は好きだったみたいです。とはいえ、暑くても寒くても、ずーっと最初から最後まで見ているわけで。