福島瑞穂さんだろうと誰だろうと、右も左も関係ない、ネットで流れている情報を信じるな。ぼくの言うことも信じるな(あれ?)

ということで、このエントリーが今人気あるみたいですが、
成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN― - 「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)
これは面白かったなぁ。
要するに、福島瑞穂さんが「朝まで生テレビ」でこんなバカなことを言ったことがある、という2ちゃんねるの書き込みに対して、それは本当なのか、ということを、過去の「朝まで生テレビ」での福島さんの出演記録と照らし合わせて、さらに2ちゃんねる「実況」板の記録を見て、なおかつ福島みずほ事務所とテレビ朝日に問い合わせた結果として、
そのような発言はしていない
ということがわかった、という、「成城トランスカレッジ!」の人の、とても頑張った報告です。
成城トランスカレッジ! ―人文系NEWS & COLUMN― - 「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)

まず気になるのは、コピペを元に「これだから○○は」みたいな大雑把なラベリングに基づく中傷ネタとして盛り上がるだけでなく、このようなコピペを取り上げて国のあり方を憂うというようなポーズ、あるいは「真実」を知らない人を嘲笑するというポーズをとる人が非常に多いこと。
(中略)
それから、「デマではないか」という懐疑が示されたときによくあるパターンとして、「福島ならありうる」「たとえそれがデマがあってもイメージによってそれが真実と思えるから社民党のせい」という発言や「いちいち調べないと自由に文章を書いてはいけないのか」という反応も結構多く見受けられます(こちらのブログとか)。もちろん私は、前者はスケープゴートを正当化してしまうロジックなのでまずいと思うし、後者は根拠なき中傷や差別を拡大再生産するくらいなら黙ってもらったほうがよいと思っています。

まったく同感で、ぼくも「○○ならありそうなこと」という形での、事実の確認が取れていない情報を流布している人たちに懸念を持っているし、しばしばそれをネタにしています。もっとはっきり言うなら「今度大地震があったら、朝鮮人を虐殺しそうな人たち」に対する懸念、です。
で、「成城トランスカレッジ!」の人はいいんですが、以下のブックマークのコメントを見てて思ったのは、
はてなブックマーク - 成城トランスカレッジ! ?人文系NEWS & COLUMN? - 「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)
なんか怪しい、ということでした。コメントを見る限りでは、誰も怪しんでいないのが、よけい怪しいのです。
お前ら「おれおれ保険」に入りすぎ、という感じです。(「おれおれ保険」に関してはこちら→http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20060605#p1
だいたい、「成城トランスカレッジ!」の人が嘘を言っていない、という保証はどこにあるんですか。福島さんの事務所とかに本当に問い合わせたという証拠は。メールアドレスもない、ただの「手紙文みたいなテキスト」が掲載されているだけで、それを信用してしまいますか。みなさんは偽メールでだまされた永田議員よりバカですか。
まぁぼくも、「成城トランスカレッジ!」の人が嘘を言っている可能性は、十中八九、九分九厘ないとは思ってます。しかし彼(chikiさん)が、「これは実は皆さんがどれだけだまされやすいかの実験だったのです」なんてことをいきなり言い始めるとか、とんでもない展開になるかもしれないですよ。
で、ぼくみたいな人を信じさせる方法は、やはりブックマークの中にあるわけで、
はてなブックマーク - 成城トランスカレッジ! ?人文系NEWS & COLUMN? - 「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)

2006年06月06日 gyogyo6 「浅田彰が『他国が攻めてきたら日本人は素手で応戦せよ』と言った」という「浅田彰インタビューの一部をコピペしました!」というのもあったね

この、浅田彰のテキストに関しては、このような処理がされているわけです。
週刊ダイヤモンド|ビジネスチャンスのあるビジネス誌ー続・憂国呆談

現に、僕の緊急発言の最初の部分が配信されてすぐに「2ちゃんねる」で話題になったんだけど、途中でだれかが浅田彰がかつてインタヴューに答えたっていうインチキな記録を捏造して流したんで、それに対する批判と嘲笑に流れが変わっちゃったのには苦笑したな。その部分を引用すると;

浅田彰インタビューの一部をコピペしました!

浅田:こういう時代だからこそ、憲法9条というのは、グローバルな価値を持つわけです
記者:自衛隊はいらないということですね
浅田:その通りです。暴力で物事を解決するというのは時代遅れです
記者:他国が攻めてきたらどうするんだ、という声もあります
浅田:万が一他国が攻めてきたら、日本人みんなが素手で応戦すればいいんです
記者:素手ですか
浅田:それで日本人が全滅したっていい。崇高な理想のために民族が滅びたと思えばいいんです

週刊ダイヤモンド』のウェッブ・サイトの語り口と比べればすぐわかるように、僕みたいなひねくれ者がこんな単純な話し方をするはずがないし、よりにもよって「素手で応戦」なんて言うわけもない。「インタビュー」の出典がどこか、「記者」とは誰かも書いてない。「2ちゃんねる」に書き込もうっていうくらいのやつならすぐインチキとわかるくらいのメディア・リテラシーはもっててほしいとこだけど、みんな素直なのかまんまと騙されて「ニセ浅田」叩きに狂奔してるわけ。矮小な例ではあるものの、現在メディアを通じての情報操作がいかに容易になってるかがよくわかるね。ネット時代だからこそ、それにふさわしいリテラシーとモラル──というか、こんな汚いことを言っちゃカッコ悪いっていうスタイル感覚がますます大切になってきてるってことは、あらためて強調しときたい。

福島瑞穂さんの例とどこが違うかというと、当人が自らその「流布しているテキスト」を、当人と確認ができる場所で否定していることです。
福島さんには、自分のオフィシャルなサイトでこの件に関して、否定と憤りのコメントをして欲しいと思いました*1
もうひとつ。
成城トランスカレッジ!」の人の調査は、調査としてはレベルの高いものだと思いますが、まだまだこのようなものでは法廷での資料としては実は弱いのです。
ほら、引用されているテキストがあるじゃないですか。

514 名前: 名無しさん@6周年 2005/10/19(水) 20:49:53 id:UTVEH2aE0
コイツの拳銃非使用の発言はリアルタイムで見たっけなあ。
もう8〜9年近く前の話じゃないか?
マジで抹殺してくれんかね

たとえ「2ちゃんねるの話」とはいえ、これはもう少し掘ってみてもいいかも、と思いました。
2005年の「8〜9年近く前」というと、1996〜1997年。
この間の「朝生」というと、
1996年7月12日放送「激論!日本異常事態宣言・若者編」
1998年2月「激論!少年達はなぜキレるのか?!」
の2つあたりが該当します。
前者に関しては、

この回の司会は田原ではなく梶原しげるなので除外。

と切り捨てていますが、人間の記憶はそんなにはっきりしたものとも思えません。「朝生」と言えば田原、という固定概念ができているため、違う人間の司会がそのまま勘違いされている、という可能性も考慮しないといけないでしょう。
また、「過去の「朝まで生テレビ」の実況スレ」で確認できるのは、「99/10/23」以降のものなので、1996年・98年のものは確認できません。
ただ、この「コピペ」が流布しはじめるのは「03/07/19 10:25」以降だ、ということと、テレビ朝日も「調査したが見当たらない」と言っている(と、福島さんの事務所が言っている、とchikiさんが言っている)ことから、「言っている」という側が言っているビデオを出してこない限りは、言っていない可能性が極めて高いと思います*2
ということで、ぼくのまとめは、
1・「言っていない」ということなら、福島さんは自分の公式サイトでこのことに関する言及をすべきである
2・「言った」ということなら、そう言っている人は言った証拠の映像を出すべきである(1996・98年が怪しい)
ということになります。
(2006年6月6日)
 

*1:そんな根も葉もない噂なんて、黙殺することが否定だ、なんて言ってちゃだめですよ、日本の外交はそれで失敗しつつあるんですから!

*2:まぁテレビ朝日の「調査」も、別に裁判の証拠となるようなものを探すつもりの勢いでおこなった「調査」とは思えないので、見落としていそうな気はします