「○○氏だって××と言っているからこれはひどい」という未確認情報に「これはひどい」禁止

見出しは例によって演出です。
批判系テキストによくある手法なんですが、こんなのとか。
古川 享 ブログ: 大浦博久氏のマイクロソフト退社と昨今のマイクロソフト事情

そして最後にさらに絶句したのは、「古川さん、そんなことを問題にしないでくださいよ..Windows Vistaの品質なんてRC1(出荷予定版の第1版)がレリースされたのに、もっとヒドイんですから...多分過去出荷したWindowsの各バージョンに比べて最低の品質だと思います。だって、出荷版のビルドエラーを起こして、マスターソースがコンパイル・リンクができなくなっちゃたけど、まぁ、良いかってノリでレリースしてしまってるんですから」なんて話を聞くにつけ、さらに寒いっ...

で、ブックマークはこんなことになっているわけですが、
はてなブックマーク - 古川 享 ブログ: 大浦博久氏のマイクロソフト退社と昨今のマイクロソフト事情
「Windows Vistaの品質」については、「ヒドイ」ものかも知れませんが、ここで語られていることは、「古川享」さんが、名前を出せない「Windows Live Spaceの担当者」に「月曜日のパーティ」で聞いた、という、三者には確認不可能な、「証言の伝聞情報」
もちろん、古川享さんがWindows Vistaについて否定的な考えを持ち、その意見をネットで言うのはなんら問題はありませんが、「○○氏もそれについてはひどいと言っている」と言う場合は、三者にも確認できる(ネットや書籍で、その発言の事実が確認できる)テキストその他にもとづき言及するべきでしょう。
同じような例では、たとえばこのようなのもあります。
民主代表選:小沢氏再選 「打倒安倍」に照準−政党:MSN毎日インタラクティブ

12日の民主党代表選で、無投票再選が決まり、党内に「敵なし」となった小沢一郎氏は、再選を機に政権交代への本格的な戦いをスタートさせる。狙いは次期首相就任が確実視される安倍晋三官房長官だ。安倍氏の政権構想の分析や党首討論対策、10月の衆院統一補選の準備など、党を挙げての「打倒安倍」戦略が動き出した。「郵政選挙」の惨敗から1年。党の再生と政権奪取が「剛腕・小沢」の双肩にかかる。【須藤孝、山田夢留】
 
 ◇「公正な国」で対抗
 
国家主義的、復古主義的な『思い』ばかりが先行し、深みのある政治思想・理念もない」「格差を是正するための実効ある対策は盛り込まれていない」
民主党幹部に先週初め、こんな分析結果を明記したA4判7枚の文書が配られた。タイトルは「安倍晋三氏の『政権構想』について」。安倍氏が1日に発表した政権構想に対し、党事務局が項目ごとに民主党との違いや論戦のポイントをまとめた「安倍対策マニュアル」だ。小沢氏は11日発表した基本政策でも、安倍氏の「美しい国」に対抗し「公正な国」を掲げた。
安倍氏が主張する憲法改正に関しては、「政権与党単独で進めるというのであれば、審議中の国民投票法案を含め、断固戦うことにならざるを得ない」と対決姿勢を強調。アジア外交の項では「小泉内閣によってとん挫したアジア外交をどう立て直すのか、処方せんが示されていない。安倍氏の一方的、楽観的な希望を述べたに過ぎない」と酷評している。
文書策定は、安倍氏が出馬表明する前の8月29日の役員会で議論された。松本剛明政調会長は「『安倍・麻生・谷垣』ではなく、安倍氏に集中して作る」と発言。菅直人代表代行も「これから安倍氏の考えについて『民主はどうか』とどんどん聞かれる。急げ」とハッパをかけた。同党は、今回の政権構想分析にとどまらず、安倍氏の過去の発言や著書の内容の点検作業も急いでいる。
一方、鳩山由紀夫幹事長は党広報戦略本部に対し、安倍氏の祖父・岸信介元首相の研究を指示した。幹部の一人は「安倍氏は岸氏のやったことをすべて肯定したいだけ」と指摘。別の幹部も「岸氏の業績をすべて否定はしないが、A級戦犯容疑者であり、危険な側面もある。安倍氏が政治的に岸氏のDNAを継いでいるのか、検証する必要はある」と述べた。
安倍氏の主張について菅氏は「歴史認識を含め、従来の自民党からずっと右に寄った『保守亜流』。『保守本流』は民主党だ」と語る。同党は「安倍政権」が伝統的な自民支持層でさえついていけない「右寄り」とアピールすることで、穏健な保守層を取り込む狙い。「岸信介研究」もその延長線上にあるようだ。
 
 ◇国会論戦に活路
 
小沢氏は12日夜のTBS番組で、政権交代へのシナリオを描いてみせた。「(参院選は)自公の過半数割れの可能性が高い。衆院で3分の2を取っていても政権運営ができず、大きな(政界)再編含みの話にならざるを得ない。それが民主党政権の第一歩だ」。来夏の参院選で自公両党を過半数割れに追い込み、政界再編を誘発して民主党中心の政権を樹立するという意味だ。
政権交代への最初の関門は、10月22日投開票の衆院神奈川16区、大阪9区補選。「安倍政権」発足後初の国政選挙であり、「新政権に打撃を与える」(鳩山氏)ためにも負けられない。
同党は所属国会議員をどちらかの選挙区に振り分け、全員に選挙区入りを義務づけた。総裁選に追われる自民党を尻目に、議員自身がポスター張りに路地を歩く「超・どぶ板選挙」を展開する。ただ、両選挙区とも自民党前職の死去に伴う「弔い選挙」。「安倍氏へのご祝儀相場」(幹部)も見込まれ、情勢は厳しい。
小沢氏は8日、党本部で菅、鳩山両氏とともに、党が実施した補選の世論調査結果を険しい表情で見つめた。神奈川では自民候補の先行を許し、前職を擁立した大阪でもリードはわずか。小沢氏は「(大阪の候補は)知名度が高い割に浸透していない。逃げ切れる数字ではない。もっと頑張れ」とカツを入れた。
同党が、そんな劣勢ばん回の活路と期待するのが、26日召集の臨時国会での「安倍VS小沢」対決。安倍氏に対する小沢氏の「格上感」を演出できれば、補選にも好影響が出るとの読みだ。小沢氏は12日のテレビ朝日の番組で「党首討論はできるだけ多くやりたい」と強調。安倍氏の父・晋太郎元外相との関係の深さを誇示する余裕も見せた。
逆に小沢氏を「古い永田町の代表選手」と呼ぶ安倍氏は、小沢氏との対決を「新しい自民VS古い自民」と位置づけ攻撃を強める構え。「安倍VS小沢」の戦いは有権者の目にどうに映るのか。それが、補選の行方を大きく左右しそうだ。
 
毎日新聞 2006年9月13日 3時00分

(太字は引用者=ぼく)
この「岸氏のDNA」発言は、だいぶ「これはひどい」ということになっているみたいですが、
はてなブックマーク - 民主代表選:小沢氏再選 「打倒安倍」に照準 - 政党:MSN毎日インタラクティブ
はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):民主党「安倍氏の祖父はA級戦犯容疑者。危険なので検証する必要がある」
まぁ落ち着け、と。
この発言は、どこの誰だかわからない「民主党の幹部」が言った、と、毎日新聞の「須藤孝、山田夢留」二記者が情報を流しているだけ
記者の目的は不明ですが、結果的に「民主党が愚劣な党であるというイメージ操作」になっているところを感じます。
もちろん、最初に例を挙げた古川享さんの話も、毎日新聞の記者による「民主党の幹部」の話も、多分実際に話されたことと同じか、もしくはそれに近いことだと思うので、関係者に裏取りをすれば「言った」という客観的な証拠がみつかるかも知れません。ていうか、みつかる可能性のほうが高いと思います。
ただ、マイクロソフト民主党の「ひどさ」を問題にするのに「こういうデータ(客観的な資料)があるからひどい」というのならともかく、「○○さんもこんなことを言っている(確認できない伝聞情報)からひどい」と言ってしまっては、インターネット時代の情報流通のしかたとしては、後者のような形で情報を流している人間の、情報流布における誠実さのほうが疑われてしまうわけです。
ぼくの日記の中でも、少し古いテキストですがこんなのがあります。
『機会不平等』(斎藤貴男)というノンフィクション的悪書について

世の中には俺ほど懐疑的な人間はあまり多くないとは思いますが、何かに対して否定的な人間が何かについて語る場合は、特定の思想的ベクトルを持たない第三者にも客観的・公的に確認可能な、誰がみても「それはひどい」と思われるような言動その他の何かを挙げて語るべきでしょう。特に江崎玲於奈氏・三浦朱門氏などは、公職の要職として、公教育に対して公の場で積極的に発言している人間なわけで、その中から斎藤貴男氏にとって否定的に扱える材料などはいくらでも得られると思うのですが。

ネットは噂話を広げるメディアとしてはとても便利ですが、「これは噂話なのでそのつもりで」という注釈を入れないで情報を流布しようとしている人に対して、ブックマークで「これはひどい」タグを入れる場合は「そんなことを言う○○はひどい」ではなく「そんなことを言っている○○、という伝聞情報を流す××(ブログ主)はひどい」という感じのコメントをつけることをおすすめしてみたいと思います。
ちなみに、今回の古川享さんの話(エントリー)は、ぼくには「確認できるひどい例」(本当にエラーが発生してしまったよ、とほほ)があったので、それに関してはやはり「これはひどい」なのです。