「天声人語」の人と芥川龍之介は「桃太郎」について何と言っていたか

あんまり時事性に縛られることのないぼくの日記なので、どなたかにブックマークをつけていただいたのを機会に、昔のネタを紹介してみます。
以下の順にお読みください。
今日の「天声人語」(朝日新聞)・2003年7月24日づけ
朝日新聞の天声人語における「桃太郎」ネタに関する、ある種批判
芥川龍之介「桃太郎」に関する話の続き
芥川龍之介による「桃太郎」は、日本の軍国主義とかの批判なのかどうか
芥川龍之介「桃太郎」と天声人語の引用について
まぁこんなことが書いてあります。
芥川龍之介「桃太郎」に関する話の続き

(前略)
さて、ここで俺の考えを述べますと、芥川龍之介は多分「最も嫌悪する日本人は桃太郎だ」という章炳麟(章太炎先生)の言葉に「虚をつかれた」というのは多分本当だと思います。しかしそれは、侵略者・桃太郎という章炳麟の視点のユニークさではなく、虚構の人物である桃太郎が、章炳麟にとって「嫌悪の対象になっている」という、虚構(物語)の力に対してだ、というのは、前後の文脈からも、また芥川龍之介の文学に対する思想・姿勢からも明白でしょう。少なくとも、芥川龍之介がどんな作家であるか理解している、まぁそうだな、普通の文系大学生の教養過程レベル以上の教育を受けている人間なら。
そこらへんを少しサポートしますと、まず芥川の文学的基盤を支える二本の足は、「芸術至上主義(虚構は現実より価値がある、という姿勢)」と「諧謔趣味(ニヒリズムに通じる「世俗的なもの」の滑稽化)」です。それにさらに彼を大地に立たせるもうひとつの支点として、古今東西の「物語」に対する愛と蘊蓄と教養が、ゴジラのような巨大な尻尾のように存在しているわけですね。
彼が「軍国主義」や「ブルジョア的思想」のようなものを小説の中で取り扱う場合、その方法はたとえばプロレタリア文学のように、対象物に対する率直な「批判」ではありません。芥川龍之介はそれを揶揄し、風刺し、矮小化します(ネット的にいうと「ネタ化」する、という感じでしょうか)。
(後略)

ぼくももっといろいろなことをネタ化したいんだけれど、なかなか時間がない。腕も芥川龍之介にははるかに及ばない。