『トイレ考・屎尿考』

トイレ考・屎尿考 (はなしシリーズ)

トイレ考・屎尿考 (はなしシリーズ)

★『トイレ考・屎尿考』(NPO日本下水文化研究会屎尿研究分科会編/技報堂出版/2200円)【→bk1】【→amazon
屎尿は、人間の生活に必ずついて回ります。そして、その処分の仕方では、江戸時代のリサイクルシステムは優れていたとの評価は、つとに高いところです。2003年3月に京都で開催されました「世界水フォーラム」では21世紀の水資源が中心課題となっています。生活環境、地球環境を考えますと、屎尿処理を含めた水処理は大きな問題を抱えています。トイレや屎尿、広くいえば下水文化は限りなく生活に密着しすぎているためか、なかなか書き残されることがありません。特に屎尿の行方や処理に世間はますます無関心になっているようです。そこで、本書では、聞き書き、体験記、文学・芸能からの引用、歴史資料の解説および現代語訳、最近の技術動向をわかりやすくまとめました。
【感想】古今東西のトイレ・屎尿に関する研究をまとめた本で、西洋や江戸時代のモノに関する言及もけっこうありますが、メインは昭和のはじめから下水道が普及する昭和50年代ぐらいまでの、「都市問題」としての屎尿処理に関する部分で、当時の関係者の証言や「バキュームカー」という昭和ノスタルジアな車の開発秘話が、あまり体験のない者にも多分面白いんじゃなかろうか、という感じで書かれています。下ネタとか差別とか、あまり世間的にはいいイメージに乏しい屎尿ですが、人間の生活の上では欠かせない存在の、ほどほどに深い入門書として、かなり興味深く読むことができました。