サヴァンでアスペルガーでゲイな人(『ぼくには数字が風景に見える』)

ぼくには数字が風景に見える

ぼくには数字が風景に見える

★『ぼくには数字が風景に見える』(D.タメット 著 古屋 美登里 訳/講談社/1,785円)【→amazon

円周率22,500桁を暗唱、10ヵ国語を話す天才の「頭と心の中」をサヴァン症候群アスペルガー症候群の青年が語る感動の手記。全米大ベストセラー!『博士の愛した数式』の小川洋子さん絶賛──「思慮深く、優しい声で、ダニエルは私たちにそっと教えてくれる。この世界は、生きるに値する場所である、と」

世界が違った風景で見える人の、ちょっと不思議な自伝。サヴァン症候群アスペルガー症候群なのは書かれている通りで、語学・数学の方面で天才的な能力を発揮するのも事実なんだけど、実はゲイで、恋愛・対人関係において、精神的疾患と同じように悩んでいることもあからさまに記述されていたりする。数字に色を見たり、素数はツルツルした感じがするという共感覚や、円周率が筆者にはこのように見える、と図入りで書かれていたりする部分がリアルにSF的。ベスターというかヴォネガットというか。しかし生活もこのテキストも、異常なくらい正常である(異常に書かれていない)のがいい味を出しています。この手の病気に悩んでいる人や、悩みを持っている人は、興味を持っている人と同じように必読かもしれず。ただ、こういう病気ってレベルの違いも大きいと思うので、この本で得られる知識は極めて限定的なものだよ、という判断コミで読む必要はあるとぼくは判断した。