そもそも民間人に降伏勧告させる軍隊がどこの国にあったかという話
以下のテキストから。
→沖縄戦集団自決 - くわばら手帖
集団自決が起きなかったシムクガマの例はリンクだけですが、
→シムクガマ
シムクガマ
このガマには、たまたまハワイ移民帰りの二人の男性がおり、この人たちがいたことでチビチリガマと全く正反対の結果をもたらすことになった。英語が話せたため、ガマが米軍に包囲されたとき、彼らがガマを出ていき米軍司令官に「中には民間人しかいない」と交渉、また住民に対しても米軍は捕虜に対してひどいことはしないと説得した結果であった。そのガマでどのような交渉があったかは知ることはできないが、米軍上陸一日目に1000人全員が生還したという事実だけは残っている。
以下のテキストについて少し触れておきます。
現に投降を呼びかけた住民をスパイ扱いで切りつけたのは、当の軍上官だったではないか。
これに関しては、ぼくの以下のエントリーでも語ったことですが、
→沖縄の人は「降伏勧告状」を持たせたアメリカ軍のことを何も言わないんだろうか - 愛・蔵太のすこししらべて書く日記
住民が「投降(降伏勧告)」を呼びかけても無駄なんじゃないかと。
というか、そもそも住民(非戦闘員)にそんなことはできないし、させちゃいけません。
ハーグ陸戦条約にもこう書いているみたいです。
→ハーグ陸戦条約 - Wikipedia
第三章 軍使
第32条:交戦者の一方が他方との交渉を行うため、白旗を掲げて来た者を軍使と規定する。軍使、及び、それに随従する喇叭手、鼓手、旗手、通訳は不可侵権を有す。
第33条:軍使を差し向けられた部隊長は必ずしもこれを受ける義務は無い。また、軍使が自軍情報を探知する為にその不可侵権の使用を防ぐ一切の手段を取れる。不可侵権を濫用された場合は、軍使を一時抑留することも許される。
第34条:軍使が背信を教唆し、自らがそれを行いうる特権ある地位を利用した事が明白であるときは、不可侵権を失う。
(以下過去のテキストを少しだけ直して掲載)
例によってあまり法律にはくわしくないのですが、「民間人」は非戦闘員なので、「交戦者の一方」ではないですね。特定の要件を満たせばなりうるのかな。
で、やはり気になるのは「民間人、それも敵国の民間人を「軍使」として降伏・投降勧告にやらせた(行ってもらった)」という例が、沖縄戦以外にもあるのか、ということなんですが、軍事とか法律にくわしい人は、そういう例を他にはご存知でしょうか。何となく、ナチスドイツが崩壊した後のドイツ部隊に対して、そういうことがありそうななさそうな気もしますが、ぼくにはドイツ語はわからない。
「まだまだやるぞ!」と思っている軍人の人たちに戦う気をなくさせるのは難儀だと思うので、一番簡単そうなのは上官もしくはそれに類する者の「武装解除命令」みたいなものかなぁ、と素人判断をしておきます。ていうか、上官に当たるものが「やめた」と宣言するとか、「やめるように」と命令する以外に、現場で戦っている軍が武器を捨てるのは難しそうです。
まぁぼくも、アメリカ軍のほどほどにえらい人で、軍使を送っても殺されてしまう状況だったら(実際にそうなのかどうかは不明ですが)、どうしたらいいだろう、と悩んで、「相手の国の民間人なら殺さないだろう」という判断をするかもしれませんが。
もっとも、「だからって(非戦闘員を)殺してしまうのはあんまりだ、ってのは同意します」というのは強調しておきます(←ここ大事)。
ちなみに、日本の正式な軍使がバリバリ殺されている例もあるみたいです。
→「樺太裁判(1)」
八月十五日以降、停戦の交渉に出向いた日本の軍使が何度もソ連軍に殺されながら、八月二二日、ソ連軍はようやく停戦におうじ、日本側参謀長とソ連側アリモフ将軍との間で停戦協定が調印され、日本軍は全面降伏した。
→関西共同行動ホームページ
それから、
また、赤松元隊長は降伏勧告の使者に来た伊江島出身の女性を斬首処刑し、同様に計6人を処刑し、うち少年2人は隊長自身が惨殺した。一方、米兵が降伏勧告に来たら素直に応じ、部下より先に降伏したと太田氏は憤慨する。
ちゃんと赤松隊長も、米兵による降伏勧告には応じているみたいです。
あと、上官より先に部下のほうが降伏してしまう軍隊組織も、組織としてはどうかと。普通の会社組織でも、あるプロジェクトに関して中止するのは、末端の人間ではなかなか難しいと思うのですが。
ということで、毎度ながら反・歴史修正主義者の人は大変でしょうが、「「民間人、それも敵国の民間人を「軍使」として降伏・投降勧告にやらせた(行ってもらった)」という例が、沖縄戦以外にもあるのか」というぼくの興味が満たされるような、できたら中身がイデオロギー臭くないテキストのトラックバックをお待ちしています。
昔少し調べて、ちょっとリンクの場所が明示できないんですが、民間人だけではなく、「軍人と民間人」が一緒になって、降伏に関係した、というテキストはあった記憶があるので、その記憶を補完するようなものも希望します。
(追記)
その後いろいろなことがわかりました。
→ハーグ陸戦協定
第三章 軍使
第三二條交戰者ノ一方ノ命ヲ帯ヒ、他ノ一方ト交渉スル爲、白旗ヲ掲ケテ来ル者ハ、之ヲ軍使トス。軍使並之ニ随従スル喇叭手、鼓手、旗手及通訳ハ、不可侵權ヲ有ス。
→The Avalon Prject - Laws of War : Laws and Customs of War on Land (Hague IV); October 18, 1907
A person is regarded as a parlementaire who has been authorized by one of the belligerents to enter into communication with the other, and who advances bearing a white flag. He has a right to inviolability, as well as the trumpeter, bugler or drummer, the flag-bearer and interpreter who may accompany him.
「一方ノ命ヲ帯ヒ、他ノ一方ト交渉スル爲、白旗ヲ掲ケテ来ル者」は、民間人(非戦闘員)でも軍使にして問題がない、というテキスト(テキスト解釈)。
→香港の戦い - Wikipedia
13日、九龍半島の貯水池から香港島への給水が断たれた。同日、日本軍は軍参謀の多田督知中佐と道案内のイギリス婦人を降伏勧告の軍使として派遣した。ヤング総督は降伏勧告を一蹴したが、日本軍では、会話の中でのやりとりから、香港島の一角に上陸しさえすればこれを契機としてイギリス軍は降伏するのではないかという希望的観測が広まった。
軍人と民間人が軍使になった例。
こちらももう少し頑張ってみますが、「民間人を軍使にした国の例」は、ひょっとしたらけっこう見つかるかも。で、その軍使がどう扱われたかわかるかも。