『クライマーズ・ハイ』----新聞・報道が元気だったころのノスタルジー映画

 正月映画で特に見たいようなものもなかったので、こんなのをDVDで借りて見てみました。
クライマーズ・ハイ - goo 映画
 実際に起きた日航機墜落事故(→日本航空123便墜落事故 - Wikipedia)を物語の軸に、北関東新聞(実際には上毛新聞ですね)の全権デスクとなった新聞記者・悠木和雅(堤真一)が、報道の現場で活躍・苦悩する物語。物語(フィクション)なので、どこまで本当なのかわからないのですが、ぼくの感覚としてはこんな会社(新聞社)はない、という時点で、ノンフィクションとして楽しむものではない(フィクションとしてはまっとう)、というような話でした。
 マジで現在、マスコミ・報道(新聞・雑誌・TV)に関わっている人はちょっと見ておくといいと思います。
 これもぼくの感覚なんですが、現在大事件が起こったとして、新聞の広告面を削ってまで記事を載せるか、あるいは輪転機を止めてまで現場取材の記事を待つか、というと、なさそうな気がします。特に地方紙はなおさら。広告・販売に逆らえるほど、新聞の記事(報道)が大事だ、なんて、現場はともかく上の人間は思っていないだろうな、みたいな。特に日航機墜落事故の場合は、自分の県で起きたにしても、関係者・被害者は日本全国(情報発信元は東京)になってしまうわけで、現場のレポートをある程度の分量入れたにしても、たいていは共同通信の配信記事の丸写し掲載するのでは。取材に25人を導入するほど、人もいなければ元気もないだろう。パソコンや携帯その他今では普通となっている道具が存在しない時代の取材の大変さと、その大変さを上回る熱意・元気が、ものすごくノスタルジックでした。今の現役の記者の人(それも地方紙の人)の感想を聞きたいものです。それから、1980年代に現役の記者だった人にも。当時は、あんな風にみんな、体育会系的(あるいは中国的←偏見)に怒鳴りあっていたものなんでしょうか。
 あと、ちょっとネタバレ的になりますが、悠木たちが追っていたスクープ(航空機の事故原因)を抜いて、最初に記事にしたのが毎日新聞だった、というのは、2009年はじめの時点では高度なギャグに思えてしまいます。また、じゃなくて、当時も毎日新聞か!
痛いニュース(ノ∀`):【元次官襲撃事件】 毎日新聞、「Wikipediaに犯行予告」と誤報→各テレビ局も釣られて報道
 おまけに、ウィキペディアにはこう書かれてるし、映画のラストの字幕でも似たようなことが写って、ちょっとびっくりだ。
日本航空123便墜落事故 - Wikipedia

事故調査は、「同機がしりもち着陸事故を起こした後のボーイング社の修理が不適切だったことによる圧力隔壁の破損が原因」とする航空事故調査報告書が1987年6月19日に公表され終了している。一部に再調査を求める声があるが、航空事故調査報告書を決定的に否定するような新たな証拠は発見されておらず、再調査は行われていない。

 映画の字幕では、こんな感じ。太字は引用者。

航空史上未曾有の犠牲者を出した日航123便の事故原因には、諸説がある
 
事故調は隔壁破壊と関連して事故機に急減圧があったとしている。しかし、運航関係者の間には急減圧はなかったという意見もある。
 
再調査を望む声は、いまだ止まない。

 それは知らなかった。
 さらに豆知識ですが、悠木が子供の頃見た、と映画の中で言っている、カーク・ダグラスが新聞記者をやる映画(原題The Big Carnival、別タイトルAce in the hole)は、これですね。
地獄の英雄 - goo 映画
あらすじ 地獄の英雄 - goo 映画(ネタバラあり注意)

敏腕の新聞記者チャールズ・タタム(カーク・ダグラス)は、勤務中に大酒を飲むという悪癖で東部の大新聞社から追われ、アルビュカークの小新聞社にしけ込んでいた。しかし、なにか特ダネをつかんで一流新聞に戻ろうと、タタムは常に機会を狙っていた。そこへ、レオ・ミノザ(リチャード・ベネディクト)という男がインディアンの住居だった崖の洞穴に探検に出かけ、生き埋めになる事件が起きる。
(後略)

 映画の感想は、こちらとか。
地獄の英雄(1951) - みんなのシネマレビュー
地獄の英雄 - Google 検索
 なんか、めちゃくちゃ面白そうな映画です。次はこれ見よう。